The die is cast.
軽いやり取りを交わした後、小百合と別れた。
大学に行く気分にもなれないし、酒も入っている。今日は悠々と過ごそうと思った。
駅前のプロントでも行こうかな。
少し追い酒して、それからやることを決めよう。
「プレミアムモルツ、パイントで一つ」
電子タバコが吸える席に腰を下ろした。
まあ、ゆっくりしよう。
スマホとタバコを取り出して、何気なく吸う。
グラスの縁についた泡が、ゆっくりと崩れていく。
灰皿のないテーブルに、電子タバコの白い息だけが薄く残った。
タバコって、いつから吸ってたかなぁ。
こんなご時世だから風当たりは厳しいし、タバコを吸う女って目で見られるのも、なんだかなぁとは思う。けれど、お酒もタバコも、良いところは一人を楽しめるところだと思う。
こんな暇な時間も、一人で楽しめる。
時間の流れって不思議だ。
楽しい時間はあっという間に過ぎていくのに、一人で時間を噛み締めている時間は長く、堪らないものに感じる。心地良くも、悪くもある。
感じることも、触れることもできないまま、時間は過ぎていく。
砂を掴んでも、手を広げれば零れ落ちるように。
時間を掴んでいるつもりでも、その瞬間はもう過去になっている。刹那刹那の繰り返しと積み重ねでこの世界は成り立っていて、「今」って本当は無いんだと思う。
今、感じた今は、もう過去なんだから。
だからこそ、時間は大切にしなくてはいけないと思う。
何も、タイトなスケジュールで生きたいとか、一秒一秒に意味を見出したいとか、そういうことじゃない。
ただ、大切な時間を生きていることに感謝したい。
その上で、何気ない日常を大切にしたい。
これは、信条なのかもしれない。
時間に対する考え方は人それぞれだから。
なんてことを、ぼーっと考えていた。
いつの間にかタバコは煙を出さなくなっていて、時間が過ぎたのだな、と感じさせてくれる。
泡が減ったビールに口をつける。
冷たい感覚が、喉から胃へゆっくり落ちていく。
気持ちがいい。
After Hanabi、なんて曲を思い出す。
祭りの後というほど大げさじゃない。
それでも飲み会の後は、いつも少し寂しくなる。
こんな時は、誰かと一緒にいたいなんて思ってしまう。
そんな人はいない。
というより、作っていない。
告白されそうとか、気がありそうとか、そういう雰囲気は分かる。分かると、身を引いてしまう。
苦手なんだ、そういうの。
初心だとか、そういうことではなくて、たぶん苦手なんだと思う。
なんか冷めてるなぁとは思うものの、それも良いかと思った。
ふと、時間が気になった。
チク、タク。
時計の音が聞こえた気がした。
店内を見渡しても、壁に時計はない。
そのことに少しだけ違和感を覚えたけれど、酔いのせいだと思うことにした。
残ったビールを口に流し込む。
温くなった苦味が舌に広がって、少しだけぞわっとした。
もう行こう。
ゆっくりと席を立った。




