第十六話 天は魔力の下に闘気を作らず、闘気の下に精霊を作らず。
最近別の話を書いていて大分時間が遅れましたが、最新話の投稿になります。
書きたいものが多すぎて、アイデアを纏める度にどんどん作って放りっぱなしになるのは自分の悪癖ですね。
直したいとは思うんですけど。
『闘気』という謎エネルギーに覚醒したかもしれないと気付いた日から、俺がまず最初にしたことは『闘気』に付いて調べ直すことだった。
正直なところ、『闘気』については実家に参考となる本や書物が少ないということもあったが、それ以上に魔術や法術ほどに比べて、目を引く魅力がなかったのであまり力を入れて調べたことがなかった。
それでも、一度調べ直してみると、些細なところで今まで見落としていた情報を知ることはできた。
まず第一に、『闘気』とは身体を強化するエネルギーである。ということ。
具体的には、『闘気』を鍛えることでめっちゃ長生きした人とか、『闘気』を鍛えることで病弱だった身体が治った。とか、何だか怪しげなネックレスの効果を主張するようなことが多く出てきたが、そんなインチキ健康法みたいな話よりも重要なことが、『闘気』を鍛えすぎたことで不死者化した人間の話だ。
『闘気』を鍛えすぎることで、もしくは間違った『闘気』の鍛え方によってモンスター化する人間がいると言う事である。
そしてこの事実は、家に存在する数少ない武術の本だけでなく、魔術や法術、それに加えて魔物図鑑にまで載っているほど有名な事柄なので、かなり信憑性の高い事実だ。
これはつまり、『闘気』を扱えると言う事は、モンスターに匹敵するほどの力を手に入れることができる。という事である。
これはつまり、俺でもいずれはワン太やニャン太のような強さを手に入れられると言う訳だ。やったね。
第二に、『闘気』とは武器を強化することができるエネルギーである。と言う事。
『闘気』関連の話を集めていくと、共通して必ず聞く話がある。
それが、ただの刀でも『闘気』を使うことで岩すらも切り裂くことのできる名刀に変わる。という話だ。
正直、最初にこの話を知った時は、日本刀とか剣豪伝説によくある胡散臭い伝説だと思ったが、調べていくとどうもそう言う物ではなく、『闘気』というのはそう言う事を目的として鍛える為のエネルギーであるらしい。
つまり、どちらかというと、身体能力を強化するよりも、武器や防具の能力を高め、基本的な攻撃力や防御力を上げることが、『闘気』の最大の使用方法という訳だ。
第三に、『闘気』とは魔力や精霊に匹敵するエネルギーである。という事だ。
この一文だけを聞けば、何を今さら。という人間が多数だろうし、実際に俺もそのうちの一人なわけなのだが、これはつまり、『闘気』でも魔術や法術の様な超常現象を発揮することができるのだ。
具体的には、身体を炎に変えたり、氷を操れるように成ったり、手にした武器を木から鉄に変えたりと言った様な事だ。
つまり、鍛え方次第ではゴムゴムのーとか、メラメラのーとか、そういう悪魔の果物的な能力を使うことができる、ある意味夢の力ではあるわけだ。
正直、これだけの情報を手に入れる為だけに、一日中ずっと家に籠って中に在る本を何度も何度も読み直したのは、中々の苦行だった。
別に読書をすること自体はそんなに大した問題では無いんだが、少しでも関係のある情報を集める為には同じ本の同じ個所を何度も何度も読み返して、別の本に書いている事と矛盾がないか何度も何度も照らし合わせないといけないからな。
この反復作業がつらいのなんの。
だが、俺が漸くの事で手に入れた『闘気』についての情報は、この三つだけだが、そこから派生して考えていくことはできる。
まず、俺の木刀が水に浮いたことについてだが、これは二番目の項目にある『武器の強化』の基本事項に匹敵する事なのだろうと推察できる。
重さを自由に変えられると言う事は、その分攻撃力や速力などのその他の能力を強化することだからだ。
つまり俺は、ある程度の剣士と同程度の『闘気』を使えることができる。という訳だ。
それがどの程度の強さなのかは皆目見当がつかないが、少なくとも魔獣を相手にしていて今まで使った覚えがないし、武器の強化というのが『闘気』の基本であることから鑑みて、そこまで強い物ではないのだろう。と想定は出来る。
ま、仮に強かったとしても、慢心して返り討ちに遭うよりは、弱いという想定で戦った方が遥かに良い。
とにもかくにも、今まで俺が使うことのできなかった新しい力が帰るようになったことは良い事だ。
明日からは、この力の分析の為の修行が基本になるな。
さあ、いよいよ来たぜ。俺の異世界無双ライフ!!!
☆☆★★☆☆★★
さて、齢い四歳にして初めて俺は自分が強く成ることのできる可能性を手に入れたのだが、やっぱり世の中というのは上手くいくものじゃない。
俺が初めて手に入れた『闘気』という力は、俺が思っている以上に扱い辛く、何よりも未知の力過ぎた。
何しろ、手に入れた全ての情報が三つしかない状態だからな。手探りで何が出来るかを試して、考えてみていった結果、今の俺に出来るのは精々が『闘気』を使って木刀を軽くしたり、重くしたりを繰り返すことだけだった。
いや、俺だって頑張ったんだよ?『闘気』で身体能力を上げる方法を探して取り敢えず筋トレしたり、火拳を打てるようになる為に修行したりしたんだ。
だが、検証の結果、今の俺に出来るのはやっぱり、木刀を軽くしたり重くしたりが精一杯で、それ以上のことは何一つとして出来なかった。
そもそもの話、火拳を打てると言ってもその打ち方を書いた本も巻物も無いのだから、俺には何をどう足掻いた所で打てる訳がない。それって要はマンガでかめはめ波を打ってるのを見て、試してみたら打てた。レベルの天才じゃないと出来ない事だったわ。
俺ってバカだなー。そんな単純なことに何で気づかないんだろう。
無双ライフどころか、想像したよりもさらにその上を行く地味な毎日だけが、今の俺の全てである。
とは言え。たったそれだけしかできない修行でも、何度も繰り返していればある程度の事は理解できるようになる。
木刀を重くしたり軽くしたりしていく内に、どうも『闘気』を武器に纏う使い方らしき感覚が俺の身体に染みついて行き、今では呼吸をするように木刀の重さを変えることができるようになった。
正直、これってどうなんだろう?貴方の特技は何ですか?と聞かれて、木刀の重さを変えることですって言われても、あんまり自慢できない様な、そうでもないような……。
とは言え、木刀の重さを自由に変えられることができるようになったのは、実際の生活では割とメリットになった。
具体的には、狩りの時に戦いが有利に運ぶようになった。
何しろ、軽々と振った木刀がいきなり重くなるんだからな。四歳児の腕力とは言え、スピードの乗った刀が重くなれば、その破壊力は相当なものになる。
それだけじゃなく、純粋に身体能力も鍛えあげられた
そしてこの成果か、最近ではあの宝石リスを相手に大部良いところまでいくようになっている。
いまだに狩るには至らないが、少なくともヘッドバッドは食らわ無くなるようになった。
何度か良い感じの攻撃も入るようになったし、そろそろあの糞リスを狩る日も近づいてきたのだろう。
それに、どうも『闘気』をまとって変わるのは重さだけでは無いようで、『闘気』を使って重くした木刀は、明らかにそうでないものよりも頑丈さが増す。
一度、頭の部分が鷲みたいな形をした俺の二倍の大きさの亀に襲われたが、その甲羅に罅を入れたのにはビビった。
魔物の甲羅とか、下手な鉄より遥かに頑丈で、普通だったら攻撃した武器の方がぶっ壊れるぞ。
明らかに木刀どころか、木の枝の強度を越えていた。正直、それで命が助かったのは一度や二度では無い。
ただ、便利な力ではあるが、矢張りその分それなりにリスクやデメリットの有る力ではあるらしく、先ず単純に疲れやすい。
おおよそ予想していた事ではあるが、『闘気』を使用すると体力を使用するらしく、木刀の重さを変えるだけでも、フルマラソン走りきった位に疲れる。
それだけじゃなく、『闘気』を使うと疲労とはまた別の苦痛を味わうのだ。
『苦痛』と敢えて表現したのは、この時に感じる感覚を表現する術が無いからだ。
『闘気』を使って暫くすると、全身からまるで身体を支える力が抜ける様な妙な虚脱感と同時に、筋肉が弛緩した様な麻痺した様な、得体の知れない感覚の遮断が生じ、身体を上手く操れなくなる。
意識して力を入れると、ちゃんと身体は動いてくれるのだが、その際の感覚も、筋肉の一筋一筋をまるで溶かしたゴムで塗装された様に曖昧なものになる。
正直なところ、この時の感覚を上手く表現する言葉が全く見つからない。ただ一つ確定で言えるのは、とにかく身体が動かしづらいと言う一点だけ。
この状態になった俺が今まで魔獣の餌食にならずにすんだのは、はっきりと言えばワン太とニャン太の二匹が居たからだ。もしも此奴らがいなければ、俺は今頃確実にどっかの魔獣の腹の中に入っていた。
それほどのデメリットだ。いやー、持つべき者は有能過ぎるペットだね。
あと、これもデメリットなのかもしれないが、どうも好戦的なキライがあった今世の俺だが、『闘気』を遣うようになってからは、ますますその傾向が増した気がする。
元々、無茶や無謀な作戦や狩りを行うことの多かった俺だが、『闘気』を遣うようになってからはその傾向がより強くなっていくようになった気がする。
何というか、『闘気』を使う前は気合入れて戦うぞー。位に軽い感覚だったものが、『闘気』を使うと、恰も戦いを求める本能見たいなものが覚醒した様に自分が抑えきれずに凶暴化していくのだ。
黒い着物を着た死神が髑髏っぽい仮面を被った感じと言うか、ヒャッハー獲物はどこだー!見たいな感じになる。
以上の事が現在俺が知ることのできる数少ない『闘気』についての情報の限界だった。
分かった今できる事は兎に角、『闘気』の扱いになれる事だけだろう。




