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追憶の天使  作者: 小河 太郎
【二章】『よしと≒死神』
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45.「雲雀の空」


インターホンの音がピンポーンと家に鳴り響いた。


俺の意識はやや朦朧としている。


どうやら、あずみさんが玄関のドアを開けて、インターホンを鳴らした人物と会話をしているようだった。


「んん……、俺の部屋に来る、のか?」


足音がこの部屋へと向かって来るのが段々と近くなる足音から分かった。


そいつはサーッと障子の襖を開け、堂々と俺の部屋へと入ってきた。


「……あずみさんか?」


まだ、寝ぼけながらも俺はその人物に尋ねた。


すると、シャーッという音と共に、大量の光が俺の顔面へと降り注いだ。


「うわ、眩しっ⁈」


「好翔先輩!起きてください。お迎えにあがりしたよ」


その声は、絆愛?


「そうか……、イヴとの約束か。」


ようやく意識が目覚め、状況を把握した。


「意外と嫌な起こし方するんだな、お前……」


「けど、好翔先輩、寝起きは良いのですね」


けどってなんだよ。

寝姿が悪かったって言いたいのか、あん?


「寝癖は相変わらずですが」


「お前のクルクルヘアーよりはマシだ。」


セットしていたアラームが丁度その時、鳴り出した。


時刻は朝の四時。流石にまだ九月なだけあって、日の入りもまだまだ早いようだ。


「グリーグのペール・ギュント 第一組曲、ですか。朝からとんでもなく朝っぽいアラームですね!」


「いちいち、触れるな。」


「やっぱり、まだまだ暑いとは言え、九月ですし、朝方は少しさっぱりとしたような雰囲気で、素敵ですよね」


「まぁ、たしかに、朝の雰囲気は嫌いじゃねぇな。」


「鶏の声が今にも聞こえそうです!」


「鶏よりももう少し良い雰囲気の鳥くらいいるだろ。」


「朝と言えば鶏ではないでしょうか?」


「鶏は別に、朝になったら鳴き始めるだけであって朝を象徴する鳥ってのは雲雀らしいぜ、こっちの方がなんか雰囲気あるだろ?」


個人的に、だが。


「コケコッコーの方が絶対に朝っぽいですよぅ。それに雲雀ってどう鳴くんでしょう?」


知るか。


「ちなみに夜を象徴すんのはフクロウらしいぞ」


「知識をひけらかしてますね」


「豆知識だ。悪かったな」


さて、支度でもするか。


九月の二日、土曜日。天気は晴れ。ここ一週間、(イヴによって発生した雪を除けば)ずーっと晴れだ。


いい加減、水不足になってもおかしくはない。

と、いうかすでに水不足の地域もあるようだし。


「ん?ていうか絆愛、お前、制服なんだな。」


「はい。動きやすい服装をと思ったのですが、どれもしっくり来なくて、無難にですが制服を」


「まぁ、場合によっちゃ、今日の行動次第じゃ、汚れちまうかもしれないから私服よりは確かに良いのかもな」


俺も、制服でいっか。土曜日だけど、別に服装にこだわりはないし。

ま、寝巻き用に今着ているジャージのまんまってのは流石に嫌だけど。


「よ、好翔先輩⁈」


唐突に絆愛があたふたし始める。


「ん?なんだよいきなり」


「そ、その……、急に服を脱ぎ出したので」


あ。

そういや、コイツ、女だった。それも高校生だった。


「お前なんかに着替えを見られるくらい、なんとも思わねぇから大丈夫だよ」


「わ、私が大丈夫じゃないですよ‼︎」


相手が心優莉だったら、逆に俺が気にするが、絆愛とは違い、寧ろ何とも思わないのが心優莉だろうな。


「意外と乙女だな。」


見た目的に女の子としてあまり意識したことなんかなかったし、見た目的に子供っぽいのでそんなの気にもしていなった。


別に、ブサイクではないんだけどな。

どちらかと言えば前にも言ったように美形だし。

単に、俺のタイプではなかった、というだけだろう。

大人の魅力が足りないだな!全体的に。

そう、子供だからだきっと!


「子供じゃないですってば!」


「人の心を読むな。」


「やっぱり、私って子供だな〜と思ってたんじゃないですか!」


「はは」


「ミッキーマ◯スの声マネしても許されません!」


「いや普通に裏声じゃなかったろーが。」


「今回ばかりは、ガツンと言わせて貰います!」


「朝から元気良いな。」


「このタイミングでズボンを脱がないで下さい……!」


「恥ずかしいようなパンツじゃねーから大丈夫だよ」


「だから、私が大丈夫じゃないです!」


「すぐ、履き替えっから。てか、後ろ向いてれば良いだろう。ジロジロ見ちゃって」


「誤解されるような言い方しないで下さい。私が男の人の下着姿に興味があるようじゃないですか!」


「違うのか?」


「ち、違いますよ」


絆愛のやつ、テンパリすぎだろ。相当男に免疫がないんだな。

望夢なんかには結構、人見知りしてたしな。

というか、はっきりと苦手とか豪語しちまってたし。


「ですから、今後は私のことを子供扱いせずに、ちゃんと高校生の一、女の子として——」


「ゴメンね〜、丁度今、お飲み物がコーヒーしかなくてね、でもお砂糖たっぷり入れといたから、大丈夫だよ」


あずみさんから、コーヒー(お砂糖たっぷり)の差し入れだった。


「……どうせ、どうせ私はお子様ですよ」


部屋の隅に背を向けて丸々絆愛。ズーンと言う効果音が今にも聞こえそうでした。


「どの道、お前、ブラック飲めないだろ」


「……そうですけれど」


そうなんじゃねぇかよ。


「まぁ、後はイヴを待つだけだ——」


次の瞬間。ドカーンと、俺の背後から凄まじい爆音が響いた。


「ピンポーン、お邪魔します」


イヴだった。


「……お邪魔すんな。」


六畳一間の俺の部屋は、入り口が二つ出来た。

ちゃんとした、部屋の入り口と、外からの新しい入り口だ。


「誰かの家に上がるときは、ピンポンするんでしょ?」


「口で言ってどうする。そして、人の家の壁をぶち抜く奴が何処にいる。」


「壁だらけだったから。一部だけ透明な壁があったから、除いたら好翔と絆愛がいた。だから入ってみた。」


ドアという概念を知らないのかコイツは。

透明な壁じゃなくて、窓だ、窓。


「まだ、赤ちゃんみたいなものだから、知らなくて当然だよ。バブ」


「開き直るな、ここぞとばかりに赤ん坊ぶるな。」


「どうするんですか? あずみさんに見つかりでもしたら大変なことになります」


「安心して、認識阻害を早速施しておいたから。イヴが解かない限り、この壁は誰が見ても普通の壁よ」


「頼むから一生、解かないでね。」


部屋の壁だった場所には、窓すらなくなり、清々しいほどに、今にも雲雀が飛び立ちそうな、そんな澄んだ朝の空が、顔を覗かせていたのだった。



「それじゃ、死神三番目を連れ戻そうの作戦会議を始めましょう。」


俺と、絆愛、そしてイヴは部屋の真ん中に、其々が向かい合うように座った。


「絆愛と言い、イヴと言い、作戦会議って名付けるの好きだな。」


「雰囲気あって良いじゃないですか!」


ガキだ。ガキ。


「まず、死神三番目の現在の居場所なのだけれど、候補として二つ、沖縄県、又は鹿児島県だとイヴは睨んでいる。」


「相当下の方なんだな。」


「六月八日と七月二十日、そして最近だと八月の二十四日に、大量に人間の魂が霊界へと帰った事件があったらしいの」


「それが死神三番目の仕業、というわけですか?」


「恐らく。一ヶ月以上の間はあるけれど、大体その周期で、沖縄の方辺りで人間が大量に殺されているということ。」


三ヶ月もの間、死神三番目はその辺りから大きくは動いてはいない?


「けど、ニュースなんかには、なってなかった筈だが、」


「それが、決定的な証拠。死神に殺された人間は、俗に言う殺人にあったわけじゃないからね。誰にも気づかれないまま、人口が減って行く」


それが何より

——死神の

——世界の目的なのだから


イヴが唐突に、重苦しい空気で、そう話し出した。


「あ、好翔、ズボンのチャック空いてるよ」


「な⁈」


「な⁈」


何故、絆愛が俺と同じリアクションしてんだよ……


「着替え中にお前が壁ぶち抜いて入ってくったからだぞ、全く。」


「ごめん下さい。」


もう、上がり込んでんだろ。とんでもなく非常識にな!


「ごめんなさいだ、ごめんなさい。」


「ごめんなさいだー?」


どんな、サイダーだよ。


一瞬、空気が重くなったと思ったが、そんなことはなかったようだ。


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