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DEAD MAN´S EVOLUTION  作者: 江上 那智
異世界冒険編
9/22

いざ、初めての街へ

ものすごく重たくてページが開けずに困ってました。

ブックマーク、評価してくださった皆様に感謝です。

「盗賊の遺体も処分してきましたけど、よかったんですか?」

この場合、懸賞金みたいなものが出るのでは?と至人は質問する。


「ボスを逃がしちゃったからねー、貰えないよ」

一匹残ってるとそのうちまた湧くしね、と虫を相手にしているような仕草でソニアは言う。


「あのブンドル一味を退けられただけでも凄いですよ、彼らに狙われたところはペペ草一本残らない。出会えば死ぬとまで言われてますからね」

とゴッツが笑顔でイナゴのような扱いをする。


(あいつブンドルって名前だったのか……)


「ブンドル自体は全然強くないんだけど、統率がやたらと上手くてね。手下の連携は嵌ればCランク冒険者のパーティでも苦戦は必至、それでアタシもボロボロに追い込まれたし一緒に依頼を受けた人たちは殺された。おまけに本人は逃げ足も速いときた、仲間をミニリザードの尾みたいに簡単に見捨てる決断の早さが厄介なんだよね、だから捕まえらんないんだよ」

はぁ、と大げさな溜息を吐くソニア


こっちはトカゲじゃないのかと至人はどうでもいいことを考える。

ふと、今まで違和感なく会話していたことに違和感を感じた。


(そういえば俺、この世界の言葉がわかるし話せてるな……まあ、アイツ(アーティス)に頭弄られたときになんかしといてくれたんだろうな)

アートマジックや服の事もあってか、至人の中のアーティス株はうなぎ登りだったためにそういう事にして納得した。


至人がぼーっとそんな事を考えていると、ソニアがずい、と顔を至人に近づけて来た。

ショートボブに整えられたエメラルドグリーンの髪。

まるでクンツァイトのような淡いピンクの瞳。

目の形はほんの少しつり目だがキツい印象はなくむしろ可愛らしいといった感想を与えてくる。

勝手に判定しだした審美眼は美人度+150という驚異の数字を示していた。


「ね、ね、キミの事教えてくんない? まだ名前も聞いてないし」

今馬車が揺れたらキスしてしまうんじゃないかというくらい接近してまくし立てる。


ふわりと感じた女性特有の甘い香りとほんのり混じったの汗の匂いにドキッとする。

至人はなんだか恥ずかしくなり、思わず下を向く。が、俯いた事がさらなる失敗だと気づいた。

先の戦闘で留め金が壊れて使えなくなっていた革鎧のメイル部分は外してあった為に現在ソニアはチュニックのみ。

もちろん下着なんてつけてはおらず、四つん這いの姿勢になっていたもんだから撓んだ襟元からバッチリ胸が見えてしまったのだ。

先端までしっかりと。


「……C……釣り鐘……」

こんな所までしっかり判定してくれた審美眼がうらめしくもありがたく、ついつぶやいてしまった。


「へ? あ!」

至人の視線の先に気づいたソニアは顔を真っ赤に染めてあわてて身体を元の位置に戻し、自分の身体を抱きしめるようにしながらジト目で至人を睨んだ。


「イチャつくんでしたら宿屋に行ってからにしてくださいね」

ゴッツの冷やかしが至人の耳に痛かった。


――――――――――――――――――――――


気を取り直して三人は自己紹介をする。

御者台の商人ゴッツはフルネーム、ゴッツ・シュセンドと言って全王国に支店を持つ世界最大手のシュセンド商会の元トップ

現在は息子にトップの座を渡して、自分は仕入れや近辺の村への行商をやっている。

息子さんは引退したなら隠居しろと煩いらしい。

偏に危険な外に出ていく父の身を案じているのだろうが、言われている本人は気づいてない様子。


女戦士のソニアはただのソニアだと名乗った。

やはりこの世界でもファミリーネームを持てるのは貴族や商人、王族といった身分の者たちなのだろう。もしファミリーネームがあったとして敢えて言わなかったのならば、それはきっと事情があるのだと至人は理解して自分も名前だけ告げることに決めた。

ソニアは現在Dランクの冒険者だ。

扱う武器は身の丈を超える父親の形見の戦斧、少しだけ持たせてもらったが至人のStr値でも両手でギリギリ振り回せるかどうかといった重量だった。

彼女の身長は大体170前後で割と華奢に見えるのに、片手で軽々と戦斧を持ち上げる姿にはいったいどこから自分を超えるパワーが出てくるのだろうと至人は首を傾げた。


出会った時から気になっていた随分親し気に話しをする二人の関係を至人は尋ねる。

二人は嫌な顔一つせず教えてくれた。

ゴッツはソニアに一度命を救われている。今回のように仕入れに外へ出たときに、護衛を頼んだ冒険者が魔物の群れを前に逃げ出してしまったのだ。死を覚悟したゴッツをたまたま通りかかったソニアが救ったのが今の付き合いのきっかけらしい。それ以来必ず護衛依頼の一人はソニアを指名しているという。


「可愛くて腕も立つ、なにより裏切らない。今回は運が悪かったですけど、彼女は最後まで私を護ろうと戦ってくれましたからやはり彼女に頼むのが一番安心です」

商売も冒険者も信頼が一番大事ですからねとゴッツは笑って言う、褒められたソニアは耳まで真っ赤だ。


でも、息子さんの言う通りあんたは外に出ない方がいいんじゃないかな?と言いそうになったが、至人は言葉を飲み込んだ。


そのあと至人は出自とアーティスの事と種族を隠しつつ、なんとかこれまでの経緯を説明。

至人のあまりにもとんでもない経緯(特にダンジョンのくだり)に二人は驚いていた。最終的にソニアは「シビトくん、よく頑張ったね」と涙を浮かべて抱きしめてくれた。

子ども扱いされてることに少しだけ至人は疑問を感じたが、顔に当たる柔らかさの前にそんな些細な事はどうでもよくなった。

他にもソニアにはアートマジックについて色々聞かれたが、至人は「ユニークスキルだから秘密」という事で納得はされなかったが、それ以上聞かれる事はなかった。

いくら一度見せているとはいえ、他人の手の内を聞くような行為はあまり好まれないのだろうと考える。

そうこうしているうちに一行は人族の交易街『ヒュムリス』に到着した。


――――――――――――――――――――――


「そこの馬車止まれ、身分証は持っているか?」

街の入り口で衛兵に止められた、二人はそれぞれ商業カードと冒険者カードを見せる。


「商人のゴッツに護衛の冒険者ソニア……そこの少年は?」

衛兵は至人を見て尋ねる。


(少年? 俺の事か?)

また子ども扱いされたことを訝し気に思い眉を顰める。


「彼は村から出てきたばかりの旅人でしてね、幼く見えますが凄腕の魔術師なんですよ。私たちもブンドル一味に襲われて危ないところを助けてもらいました。身分証はありませんが人柄は保証しますよ」


「ブンドル一味! よく無事だったな……ブンドルは?」


「手下は彼が魔術で倒してくれましたがブンドル本人には逃げられました」


「そうか……いや分かった。仮身分証を発行しよう、500(ギット)だ。街に入ったら冒険者ギルドか商業ギルド、魔術師なら魔術ギルドに登録するといい。どこも登録料は一律500Gだから、この仮身分証と交換になる」

そう言って衛兵が取り出した白いカードをゴッツが支払いを済ませて至人に手渡す。


「え、お金……」


「いいんですよ。命を救われた対価としては安いかもしれませんが、これくらいはさせてください」

500Gが大金なのかもわからないがそう言われてしまっては無下に断ることも出来ない。

至人は好意に甘えることにした。


無事ヒュムリスに入れたあと、搬入のために店に帰るゴッツと別れた。

ソニアは護衛依頼完了報告のために冒険者ギルドに向かうと言うので、至人も登録のために付いて行くことにした。

アーティスに簡単な常識は聞いていたが、通貨の価値については聞くのを忘れていたのでギルドに向かう道すがらソニアに尋ねる。


「シビトくんは偶に常識に疎くなるね」


「俺の村は通貨じゃなくて物々交換が基本だったんで……」

少し苦しいか?と思ったがソニアは信じてくれたようで通貨価値を教えてくれた。


通貨は世界共通で金属を使われる。使用される金属は、白金・金・銀・銅・鉄・鉛の6種類。


 鉛貨1枚=     1G

 鉄貨1枚=    10G

 銅貨1枚=   100G

 銀貨1枚=  1000G

 金貨1枚= 10000G

白金貨1枚=100000G


というように、金属が変われば桁が一つ上がるように計算される。単位も世界共通でギットと呼ぶ。

ちなみに、鉛貨は殆ど流通しておらず大概の物は鉄貨1枚(10G)からなので使うことは稀だそうである。


(500Gは日本円換算で500円ってとこか、この世界の物価が解らないからやはり高いか安いかは判断しにくいな)

通貨について一通りのレクチャーが済んだところでギルドの外観が見えてきた。

いつも読んでくださってありがとうございます。

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