冒険者ギルド
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冒険者ギルドは、街の東側に位置していた。
目の前まで行くとその大きさに圧倒される。
中に入ると1階は受け付け件酒場になっていて、夕暮れにはまだ早い今の時間でもガヤガヤと騒がしい。
受付カウンターは3つあり、一番左が新規登録とF・Eランクの駆け出し用受付。
真ん中がD・Cランクの中堅ベテラン用受付、右が魔石買取と完了報告用の報酬受付となっている。
魔石用受付のさらに右隣には2階に上がる階段があり、ソニアが言うには2階にはB以上の高ランク冒険者専用受付とギルドマスターの部屋に会議室があるそうだ。
まだ登録すらしていない駆け出しの至人には遠い話だが、2階に上がれるというのは一つの区切りでありステータスでありギルド登録者たちの憧れ、まずは皆この2階を目指して実績を積み重ねるのだという。
「シビトくんは左ね、アタシは右の受付だから終わったらこの辺にいてね」
そう言ってソニアは右の受付に並んだ。
他は少ないが右の受付はそこそこに人が並んでいる、2人の受付嬢がテキパキと作業をこなしているのが目に入る。
(右だけ2人体制なのは、どの時間でもそれなりの人が来るからか)
少しだけベテラン受付嬢の仕事っぷりに目を奪われたが、気を取り直して左の受付に向かう。
「こんにちは、ご用件はなんですか?」
赤い髪をポニーテールにまとめた元気のいい受付のお姉さんが、そう声をかけてくる。
「冒険者ギルドに登録をしにきました。はいこれ、仮身分証です」
「はい、新規のご登録ですね。仮身分証をお預かりします」
そういって仮身分証を受け取ったお姉さんがそのまま変な道具の枠に仮身分証をはめ込む。
「お名前を頂いてもよろしいですか?」
「シビトです」
「では、こちらに手をかざしていただけますか?」
促されるまま至人は変な道具に手をかざす。かざしたのを確認するとお姉さんが手元で何かを操作し始める。
すると、真っ白な仮身分証が淡い光を放ち始めた。
光が収まったあとにカードを見ると地球でいう写真つき免許証のようになっていた。
「おお……」と思わず声がでる。
冒険者カードに変わった仮身分証には顔写真に名前、年齢にランク、あとは空欄だが所属パーティと書かれていた。
「はい、登録完了ですね。それでは冒険者ギルドの規約をせつめ……どうされました?」
お姉さんは自分の冒険者カードを見つめて、わなわなと震える至人に心配そうに声をかける。
(この愛らしくも端正な顔立ちは最早地球時代とは別人……記載年齢は16……子供扱い……)
衛兵の言葉、ソニアの至人に対する反応や態度、その疑問となっていた全てがカチリとはまり込んだ
「フハハハハ、我が世の春がきたぁぁぁぁ!」
テンションが上り、思わず大声をあげる。
「きゃあっ!」
唐突に至人が叫んだためお姉さんが驚いて悲鳴を上げた。
それを聞いた至人は、ここがどこかを思い出して一瞬で青ざめる。
「ごごごごごごめんなさい、登録できたのがうれしくて楽しくておまけにソニアさんに匹敵する美人度+130でEカップのお姉さんに対応してもらえるしテンション上がって思わず叫んじゃいましたすみません!」
しどろもどろになり、途中から何を口走っているかも解らないがとにかく謝罪する至人。
「はい! わかりました、わかりましたから落ち着いてください!!」
必至でたしなめるお姉さんと、DO・GE・ZAする勢いの至人。
ギルドは混沌に包まれた。
――――――――――――――――――――――
ひと悶着あったが、一通りの説明を至人はなんとか聞くことが出来た。
大まかに規約は3つ。
一般市民の迷惑になるような事はしない。
罪を犯さない。
基本はすべて自己責任。
冒険者ランクはFが最低でSが最高。カードに期限は無いが、なくすと再発行に手数料5000G。
駆け出し用受付お姉さんの名前はジーナと大体の事は理解した。
それで、現在至人はというと……。
「ふーん、それであんな状況になってたんだ」
腕を組んで仁王立ちしながらジト目で睨んでくるソニアに事情を説明する。
もちろん正座の状態である。
「はぁ、もういいよ。それで、今日はこれからどうするの? もうあまり日はないけど」
「魔石を売却してから簡単な依頼を受けて、宿を探そうと思いますですはい」
至人のアイテムボックスにはゴブリンの魔石が唸りを上げている。
現在は文無しなので少しでも売却しないと宿代がないのである。
「もう怒って無いからその変な敬語はやめて。依頼に関しては薬草採取が常時依頼だから受けてからじゃなくても大丈夫だよ、外に行くには少し時間がないしね。それなら魔石を売却して宿をとるのがいいかな」
なるほどと先輩の意見を受け入れ、至人は売却カウンターに並ぶ。
売却受付に居たのは、眠たそうな目をしたブロンドストレートロングでFカップのお姉さん。
美人度はソニアを超える152の数値を表示した。
ここには美人度100超えの巨乳さんしかいないんじゃないかと至人は思った。
きっとギルドマスターの趣味なのだろう、まさに眼福である。
「こんにちはぁ、魔石売却ですねぇ。ソニアさんの彼氏ですかぁ?」
そのお姉さんが少し間延びした口調でとんでもないことを口にする。
「な、ばか! なに言ってんのアニタ! シビトくんはそんなんじゃないから!」
まだ……とボソッと聞こえたのを至人は知らない事にする。
「結婚するときはよんでくださいねぇ。それでは魔石をお願いしまぁす」
ソニアをからかうだけ散々からかってからアニタはお仕事モードになる。
近くでむくれてるソニアがとても可愛らしい。
「あ、はい。これです」
促されるままに何も考えず、ゴロゴロと虚空から100個の魔石を取り出した。その途端、周りの目が変わる。
「シビトくん、アイテムボックス使えるの!?」
ソニアが驚きの声を上げる。
「空間魔術は習得が難しいですからぁ、私も久しぶりに見ましたねぇ」
アニタも驚いてるようには見えないが驚いてる。
迂闊だったと至人は一瞬顔をしかめたが既にやってしまったものは仕方ないのでそのまま通す事にする。
「ええ、道具袋が必要なくなるから便利だなと思って。これ以外の空間魔術は使えないですが」
「そういうことですかぁ。確かにぃ、空間魔術は使いたいもの1個に絞って習得する方が速いって言いますからぁたまにそういう方もいらっしゃいますねぇ」
アニタはそんな感想を述べながら素早く個数と状態を確認している。
口調と動きは比例しないんだなと至人は見ていて思った。
結構出したと思った至人だったが、アニタは慣れた手つきで割とすぐ査定を終わらせた。
「確かにゴブリンの魔石100個ですねぇ、状態もいいので一個20Gの満額査定で2000Gになりますぅ」
にっこりと微笑んでそう告げてから、アニタは硬化を用意し始める。
銀貨2枚でもよかったが、使いやすいように半分は銅貨にした方がいいと助言を頂いたので至人は銀貨1枚と銅貨10枚でもらった。
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そのあと、至人はテンプレ展開を期待したが何もなかったためにちょっとだけガッカリしていた。
宿屋に関してはこれまたソニアの勧めで割とあっさり決まったようだ。
質は普通だが食事が旨いという宿屋「アンブロシア」。
至人の世界ではギリシャ神話における神々の食事。
「なあソニア、ここって実は食事処がメインなんじゃないのか?」
異世界知識があるならもっともな疑問。
「うん。宿屋はついでだって聞いたよ」
しれっと答えるソニア。
店主は地球人じゃなかろうかと至人は思ったが、あまりにあからさまな店名にその線は捨てた。
(まあ、地球からこっちにきた奴探したいわけじゃないし。縁があればどっかで出会うだろう)
宿泊費は1泊20G、食事つきならプラス10G。とりあえず至人は10泊分の300Gを先払いする。
食事は必要ないのだが、なんとなく食べたらどうなるかというのは前々から気になっていた。
「とりあえず食事にする?」
ソニアが聞いてくる
「いや、今日は疲れたからもう休むとするよ」
寝る必要もないが、精神的に今日はとても疲れたので至人はそう告げる。
「そっか……それじゃ帰るね。アタシはこの先の女性専用宿に泊まってるから、いつでも訪ねてきていいんだからね」
ソニアが一瞬寂しそうな目をしたのが至人の胸を締め付けた。罪悪感に苛まれながらも務めて明るく答える。
「ああ、必ず行く。あーっと……俺がDランクになったら一緒に仕事しような」
なぜそこで食事じゃないんだ!とギャラリーは皆思った。それなら今すぐパーティ組めばいいじゃん!とも。それでもソニアは
「うん……うん、絶対だよ! 嘘ついたら胴体真っ二つにするからね!」
泣いたカラスがなんとやら、見るものが思わず振り返って2度見するようないい笑顔でソニアは走り去っていった。言ってることは物騒だが。
「はぁ……最後の最後ですんげぇ疲れた……。約束しちまったし……Dランク、早いとこ目指さないとなぁ」
至人の盛大な溜息とつぶやきが夜の街に溶けていった。
主人公が勝手に動き過ぎて困ります(笑)
あらすじ詐欺になってないか心配です。




