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DEAD MAN´S EVOLUTION  作者: 江上 那智
異世界冒険編
11/22

Dランク目指して

いつもご覧いただきありがとうございます。

少し長くなってしまいました。

多くても一話5000文字以内で投下しようと思います。

あれから一週間の時が過ぎた。

前回気になっていた食に関してだが、結果としては予想の範囲内。

食事をとることで回復力が高まったのだ。

試しに怪我をした状態で食事をとると再生力も上がる、ポーションの代わり扱い。

無機物以外ならば割となんでも食事にカウントされる事もわかった。

さらに言えば未調理でもまったく問題ない様子、こんなところでまさかのゾンビ要素である。

これに関しては流石に食事処で試すわけにはいかなかったのでもちろん街の外で試したようだ。


そのあとは特に試したいことはなかったので、今は出来るだけ早くDランクになることを目標に至人は精力的に依頼をこなしている。


あれからソニアには会っていない。

休まず眠らず食事もとらず活動できる至人にとっては、誰かといる方が枷になるからだ。

というのは建前で実際には何度か会いに行こうと思っていたようなのだが、たまたまソニアが防具の修繕で居なかったり依頼で居なかったりとニアミスを繰り返した結果の一週間なのだ。

必然的に仕事しかやることが無くなり、昼夜問わないワーカホリックな一週間をこなしていくうちに異例の早さでEランクに上がっていた。

これにはジーナも驚いたが


「いくら愛しいソニアさんの為とはいえ、頑張りすぎです! 少し休んでください!」


前半部に聞き捨てならない言葉が混じっていた気がするが、このように職権乱用気味に依頼を受けさせてもらえない事態が起きていた。


そして至人は現在……。


「おい、くそガキぃ! これ以上俺様のソニアに近づくんじゃねえ!」


一週間ごしで絡まれていた。


「彼女には一週間前に会ったっきりだよ、言いがかりはよしてくれ」


「お前がソニアとパーティ組みたいからDランク目指してるのは知ってんだよ! ソニアとは俺様がパーティ組む! てめえの出る幕じゃねえから消えなって言ってんだよ!」


「そんな話は聞いてないな、本人がそういったのか?」


「あ、あったりまえよ! だからおとなしく消えな、それとも痛ぇ目に遭いてぇのか?」


「どういうふうに遭わせてくれるんだ? 後学の為に教えてくれないか?」


「て、てめえ! 俺様をBランク冒険者のヒドゥと知ってて言っているのか? あん!?」


(ヒドゥに喧嘩吹っ掛けるなんて正気じゃないぞ) (あの青年、死んだな……) (あいつ、ソニアちゃんのイイヒトじゃないのか?) (まじか? 助けるか?) (馬鹿言うな、こっちまで殺される)

ギルド内の酒場がざわめき始める。


至人は決して目立ちたいわけではなかったのだが、人目もはばからずに喧嘩腰になるほどかなり頭に来ていた。

怒りの正体はヒドゥのステータス。

じっくり観察する時間があったので相手の称号まで読めたのだが、これを目にした瞬間至人の心に殺意が湧いた。

「殺人者」「強姦魔」「違法奴隷ブローカー」。

そんな称号を持っている奴がソニアに執心している、つまり「そういうこと」なのだ。


「ヒドゥなんて名前知らないね。それと、その歯糞くせぇ汚物みたいな口を閉じろ。吐き気がする」


「んな!? こんのくそガキがぁぁぁ!」


「最近のBランク様は金と欲の為に犯罪もするのか? 気に入った女をさらって犯して、飽きたら殺すか奴隷にするってか? おいクズヤロウ! ソニアに指一本でも触れてみろ、二度と太陽を拝めなくしてやる!」


「て、てててんめえぇ! ぶっ殺す!」

図星をつかれたのか、完全にキレたヒドゥは勢いよく腰の剣を抜いて斬りかかる。



ブレのない、綺麗な剣筋は真っすぐに脳天から正中を割こうと襲ってくる。

きっと昔は真面目に稽古に取り組んでいたのだろう、一般人では視認することすら出来ない大上段からの斬り下ろし。

それを至人は苦もなく、必要最低限の移動で回避する。



左腕を残して(・・・・・・)



斬り飛ばされた左腕を見てから至人は相手にしか聞こえない声量でつぶやいた。

「正当防衛成立ってか?」


「あ? なにを言って……」

瞬間、目の前にいたはずの至人が掻き消えた。


「左腕が無くてもなんとかなりそうだな」

ヒドゥの耳にそんな言葉が届くと同時に鳩尾に重く鋭い衝撃が走る。


「おうぐえぇ!」


「もう喋んな、耳障りだ」


至人はその場で独楽のように廻り、ヒドゥの身体には続けざまに痛みが来る。こめかみ・喉・脇腹・肩・肢……吹き飛びそうな衝撃が身体を突き抜けると、その方向を無理やり変えられる一撃が即座に放たれる。

飛ばされて戻されて飛ばされて戻されてを繰り返し、回転数を徐々に上げる破壊の暴風雨は止まることを知らない。

至人という竜巻を中心にその周囲を飛び回るヒドゥ。浴びせられる打撃にびくびくと反射で悶える姿はまるで死霊(レイス)が踊っているように見えた。

周囲の人々はその凄惨さと美しさに自然と拍手をし、そして涙していた。


永遠とも思える破壊の暴風雨はその動きを唐突に止める。

慣性で吹き飛んだヒドゥは見るに堪えない姿になっていた。

四肢は折れ曲がり、鼻とあごは砕かれ、喉と目は潰されていた。

生命維持に必要な臓器には傷一つないように手加減したので辛うじて息はある。

ただ生きている、それだけだ。

冒険者としての再起は最早不可能だろう。


「殺しはしない、あんたと同じところに堕ちるのは御免だからな」


落ちているゴミを見ているかのような目でそう言い放つと、至人はごくごく当たり前の自然な動作で落ちていた左腕を拾い、ギルドを後にしようとする。

そんな至人の背後から突然声がかかった。


「待ちなニイちゃん。悪いがちょっとだけ付き合ってもらおうか」


至人は驚き、構えなおして振り返る。

そこには無精髭を生やした武骨な中年の男が立っていた。


(まったく気配を感じなかった……奴の仲間か?)


「違う違う、アイツの仲間じゃねえよ。だからそんなに警戒すんな。ただちょっと話を聞きたいだけだ」

そういって男は少年のような笑みを浮かべる。


「おっと忘れる前に、おーい! 誰か手の空いてるやつ、このクズを治療院に連れてってくれ。喉以外は治さなくていいって言っとけよ! さて、行こうかニイちゃん……2階によ」

有無を言わせぬ男の迫力に、至人はついて行かざるをえなかった。



――――――――――――――――――――――



「おうニイちゃん、適当に掛けてくれ。自己紹介がまだだったな、俺の名はガンドルフ。ガンドルフ=ローエンハイムだ、このギルドのマスターをやっている。よろしくな」


「あ、はい。どうも……」


「んで、だ。まずは礼を言っておこう、ギルドの面汚しを粛正してくれてありがとな」


「……え? それは……」


「あいつがな、裏でコソコソやってんのはこっちも知ってたんだ」


「だったら……」


「そこが面倒なとこなんだよ。こういった組織になっちまうとな、裏が取れねーとなんも出来ねーんだわ。疑わしきは罰するなんてやったら誰も来なくなる、わかるだろ?」


「じゃあ……」


「おう、ニイちゃんが再起不能まで追い込んでくれたおかげで色々やりやすくなった。アイツの喉の治療待ちになるが、身の安全の保障を対価に犯罪仲間の情報を引き出すつもりだ」


「そう……ですか」

これでソニアは安全になるだろう。

懸念していたことが払拭された事で至人は安心して胸をなでおろす。


「アイツの事に関してはこんなとこだな。それで、お前さんの事だが……」


「俺は……」


「知ってるよ、新進気鋭のEランク最速到達冒険者。鉄人シビトだろ」


「は? 鉄人?」


「なんだ、手前の二つ名も知らねえのか。決して眠らず休まない、無限の体力を持つ男。誰が呼んだか『鉄人』シビトってな」

ガハハと大声をあげて笑うガンドルフ。


「ジーナから報告は受けていた、惚れた女の為に身を粉にするなんてなかなかやるじゃねえか。そこで本題だ、お前……Bランクになれ」

至人のソニアに対する話がどんどん大きくなってると感じた。


「B? いきなり何の冗談を言ってるんですか?」


「冗談なんかじゃねえ、こっちは大マジよ。考えてもみろ、仮にもBランクだったやつを左腕一本の犠牲であっさり片づけるような奴がEランクなんてそれこそ何の冗談だって話だ」


「う、それは……その」


「大体お前、あの腕だって反撃する正当な理由を作るためにわざとやらせたんだろ? 俺の見立てじゃあ本気を出したら一撃も掠らせることなく、しかも一瞬で殺せただろ」


「……」

図星をつかれ、ぐうの音もでない至人を前になおも続けるガンドルフ。


「これは俺の憶測も入ってるんだがお前……人間族じゃねえな?」


「……っ!!」

とっさに立ち上がり構えをとってしまった。


「そんな反応を示すってことは図星だな。安心しろ、仕事っぷりを見ていたら信頼できるのはわかる。だから座れ」


「腕に対する執着のなさから考えると魔族か? 大方吸血鬼だろ」


不死族が表に居なくなってからかなりの時が立っているためか勘違いしてくれたようだ。

至人はこれに乗っかることにする。


「ああ、吸血鬼の父と人間の母がいた」


「ハーフか、母親の血の方が濃いんだな。とすると吸血が無くて再生とデイウォーク持ちか」


「そうだ」

デイウォークのスキルはハーフだけが持っている固有らしい。

対して吸血は純血種の固有スキルのようだ。

折角なので至人は再生スキルを裏付けるように目の前でくっつけて見せた。


「すげぇもんだな、再生スキルってのは」

何事もなかったかのようにくっついた腕を見てガンドルフは感嘆の声を上げる。


「ま、だいたいはこんなとこだな。聞きたいことも言いたいことも、明日の朝一にまたここに来い。愛しの嬢ちゃんと一緒にな」


「なんでソニアも一緒なんだ?」


「そらおめぇ、Bに上がってもらう条件としてパーティ組んでもらうためよ」


「聞いてないぞ!?」


「言ってねえもん。Bに上がるのもパーティ組むのも決定事項だ、これはギルドマスター権限において命令だかんな」


「職権乱用だぞ!」


「なんとでも言え。それに、嬢ちゃんはお前の手綱だ。シビト、お前さんは嬢ちゃんの事となると見境が無くなるみてえだからな、目の届くとこに置いておけ」


ガンドルフの意見は尤もだ、至人は自分でも理解していた。

ソニアが絡むと冷静に考えることが出来なくなるという事を。

たった一日一緒に過ごしただけの彼女に何故こんなにまでなってしまうのか。

その理由は、いくら考えてもわからなかった。

最後までお読みいただき感謝です。

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