戦力の確認、そして王都へ
遅くなりました、続きを投稿します。
ガンドルフの話によると、現在人間族の国王は死霊王を復活させてその力を自分のモノにしようと企んでいる……という噂が流れているらしい。
実際に王都では前よりも死霊王を崇める邪教徒の姿を見かけるようになったとか、誘拐事件が頻発しているとかとにかく事件に事欠かない様子で、衛兵だけでは手が足りずに冒険者ギルドにも王都からの支援要請が来ているせいで手練れの冒険者がとられている状態なのだ。
何故手練れの冒険者を派遣しているのかと至人が尋ねると、信用の問題があるからそうせざるをえないんだとか。
ガンドルフ的には現在のような状況で至人達にまで王都に行かれると、高難度の依頼が滞るので行ってほしくはない様なのだが。
聞いてしまった以上至人達は王都に向かわざるを得ないというのは建前で、これ以上ガンドルフに便利屋扱いされるのもいい加減嫌になった至人は、この事件をとっとと解決して平常に戻した方が楽になると考えた結果王都に行くと決めた。
現在はその前段階として模擬戦場を借りている、理由はインシュンの実力を見るためだ。
『インシュン、お前の実力を見たいから全力で来い』
『わかったよ、ヂーレン兄さん』
敬語じゃなくていいと伝えた後、インシュンは至人の事をなぜか兄さん呼びするようになった。
それに関して至人は特に突っ込まなかった。
「ソニア、可愛そうだとか思わず手加減なしでやってみてくれ」
「あれ? シビトくんは?」
「俺は客観的に見たいから見学」
「ずるくない?」
「文句言わない」
「はーい」
結果はインシュンの惜敗、あの時の動きよりかは幾分かぎこちない感じを見受けられた。
本人に聞いてみると、本人的には身体が動き過ぎて動きにくいという事なのでどうやら隷属魔術によって最適化せれていたのではないかと考えられる。
本人に了承を取り(理解はしていなかったっぽい)、ステータスを見せてもらう。
パラメータ的にはソニア曰く平均的なCランク相当で中衛向け、職業は暗殺者とあった。
スキルは見ていて面白かった。
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スキル
短剣術 投擲術 軽身功 操糸術 影斬拳
気配察知 気配遮断 隠形術 暗殺術 薬物耐性
バトルスキル
飛毛脚 暗剄 気脈壊 人形繰り 影刃 首枷
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軽身功はブンドル手下の軽業師みたいなもの。
そのまんま糸を操る技術の操糸術。
飛毛脚はガンドルフの縮地劣化版。
暗剄は気を流して相手の気脈を暴走させて破壊する技で、気脈壊は逆に相手の気の流れを断ち切って気絶させる。
人形繰りは相手の神経に鋼糸を打ち込んで操る技、読み方はマリオネット。
影刃はこれまたブンドル手下のシャドウダガーみたいなもの。
最後の首枷は相手の虚を突いて一瞬で首をへし折る技。
一通り眺めてから魔物相手にはあんまり向かない対人特化だなぁと至人は思っていた。
(実際、向こうの世界に魔物はいないしな)
インシュンに向こうで何やってたの? と尋ねると案の定小さいころから暗殺術を仕込まれていたと答えた。
14歳でここまで習得していたのだからきっととてつもない修行を課せられていたのだろうと至人は少し哀しくなった。
他にも聞いてみるとインシュンは短剣よりかは素手の方が「斬れ味がいい」と言った。
洪家に伝わる暗殺拳『影斬拳』は影すらも断ち切るほどの鋭さを手刀に持たせる事を到達点とする拳。
師範クラスになると鋼鉄も平気で斬り裂くという。
ちなみにインシュンは岩が限界とのこと、充分凄いと至人は思った。
短剣術と投擲術は距離を詰めたり遠距離からの攻撃手段の一つとして鋼糸と使い分けるために習得させられたようだ。
至人はついでにソニアのステータスをチェックさせてもらった。
ソニア自身も至人に会う前にチェックしたっきりだと言っていたのでいい機会だからお互いのステータスを見せることにした。
「ちょっと、シビトくんのステータスおかしくない?」
「そうか?」
どうやら地竜を倒したことでかなりアップしたらしい。
固定値上昇だけでなく経験上昇も加わって、ソニアが言うにはレベルの割にとんでもない数字になっているそうだ。
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シビト
Lv:62
HP:4362/4362
LP:0/0
MP:6090/6090
str:6526
def:5892
vit:error
int:3263
agi:3690~
mag:4116
luc:60
パッシブスキル
再生MAX 芸術闘技 限界突破 立体機動
バトルスキル
噛みつきLv1 握撃MAX 死霊の盆踊り 超再生
舞翔爪蓮華
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言われてみると色々オカシイかもしれないと至人は思った。
むしろ手加減していたとはいえ、このステータスについてこれたインシュンの潜在能力はどうなっているのかそっちの方が気になる。
ソニアはというと
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ソニア
Lv:50
HP:3890/3890
LP:100/100
MP:1260/1260
str:3200
def:2300
vit:error
int:1800
agi:980
mag:1020
luc:900
パッシブスキル
怪力 身体操作 頑強 鉄壁 受け流し
バトルスキル
戦乱斧闘 渾身の打ち下ろし正拳
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見事に重戦士。
戦乱斧闘がガンドルフ戦で使っていたやつだそうだ。
HPを削り続ける為にスタミナ管理が大変な技だとか。
渾身の打ち下ろし正拳は、あのときインシュンに叩き込んだ技だと言った。
気絶狙いどころか殺る気満々な一撃に見えたのは勘違いじゃなかったか。
インシュン、生きててよかったなと至人はつぶやいた。
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次の日、3人は行商人の馬車で王都に向かっていた。
王都へは馬車で1週間の道のり、せっかくなので王都行きの護衛依頼を受けておいたようだ。
「いやぁ、ヒュムリスで有名な『屍山血河』に依頼を受けていただけるとは思いませんでしたね」
突然の呼び名に困惑して至人は尋ねた。
「おいおい、誰のことだそりゃ」
「おや? 今ヒュムリスでは貴方ほど有名な方は今せんよ。その男の逆鱗に触れし時、等しく死が訪れる。曰く、四散した死体が残る。曰く、全身を砕かれ血の河に沈む。曰く、悪人はその骸を晒すことも叶わない。曰く……」
「まったまった! なんか悪名ばっかりな気がするんだが……」
何処から漏れたのかは分からないが内容は心当たりしかない、最も2番目のはヒドゥの事だとは思うが、死んでないし。
それにしても尾ひれはついてないが表現が酷い。
「屍山血河以外にも鉄人や不死身、後は戦女神の寵愛を受けし者とかいうのもありましたね」
にっこり笑って得意げに話す行商人、悪意はまったくない。
「戦女神……ね」
そう言って至人はソニアを見る、ソニアは真っ赤になって俯いていた。
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ヒュムリスを出て5日、ここまで何もなく平和な道程を進んできた。
残り2日ほど何事もなく過ごせれば御の字だなと至人は思っていたが、ソニアは魔物との戦闘すら無くて運動不足だとぼやいていた。
戦闘狂の兆しはあったが、どうやら確信かもしれないと至人は感じた。
インシュンはというと
「お……はよ、こざ……ます」
この世界の共通語の勉強をしていた。
『おお、初日よりも大分うまくなったな』
わしわしと頭を撫でて褒める。
『えへへ……兄さんが教えるの上手いからだよ』
はにかみながら上目遣いで至人を見上げるインシュン。
『う……じゃ、じゃあ今日から日常の会話は出来るだけこの世界の共通語で話そうか』
妹に甘えられているような錯覚に陥りそうになり、慌てて精神を引っ張り戻す。
『え……ハードル高くない……?』
至人の提案に表情が暗くなり、少しうるんだ瞳を向けてくる。
『ソニアと話したくないか?』
こいつは男、こいつは男と自己暗示をかけながら表情には微塵も出さないようにする。
『!! お姉ちゃんと話したい!』
前からソニアと話したい感じの事は言っていたので上手くたきつけられたようだ。
『じゃあ出来るよな』
『……うん、頑張る!』
両の拳を胸の前でグッと握り、ふんすと気合を込めるインシュン。
だからいちいち仕草が可愛いんだよ。とイケない世界に足を踏み入れそうな感じを寸でのところで留まることに至人は成功した。
その日の夕方、火の番をしていたソニアに至人は声をかけた。
「よう」
「あれ? 交代はまだだよね」
「ああ、今は話がしたくて来たんだ」
「うん、いいよ。何もなくて暇だったんだ」
パチパチと火の粉を散らしながら仄明るい光を放つ炎を見つめ、少しだけ沈黙する至人。
なかなか切り出してこない至人にせっつく様な事はせず、ソニアはじっと言葉を待つ。
5分ほどが経っただろうか、意を決したように至人がゆっくりと言葉を紡ぎ始めた。
「なあ、ソニア。俺が人間族じゃないってのはガンドルフからきいたろ?」
「うん、ガンドルフさんは魔族の吸血鬼だって言ってた」
「もし、魔族でもないって言ったら驚くか?」
「不死族……でしょ? それと異世界人だね」
「っ!? 知っていたのか……いつから?」
「割と最初からかな? 抱き着いた時の体温とか他にも色々。異世界人についてはインシュンくんと話が出来る段階でお察しだよね」
「そうだったのか。……なんでだ? なんで不死族とわかって一緒にいてくれる?」
「うーん、お告げ……ていったら信じる?」
「お告げ? こないだ言っていた七英神か三柱の誰かのお告げか」
「うん、三柱神の一人『死の神コープス』様」
「コープス……」
「アタシね、本当はソニア・グレイブっていうの。グレイブ家は代々破壊と死の神コープス様の巫女をしているんだ」
ソニアは14代目の巫女だと告げた。
コープスは死霊王戦役の際に一切の神託が来なくなっていた。
コープスに力を失うような何かあったのだろうとグレイブ家は思ったがそれでも祀ることを続けてきた。
いつかコープスが力を取り戻したとき、誰も祀るものが居ないなんてことが無いように。
グレイブ家はあきらめずに祈りを捧げ、その思いが実ったのかついにソニアの代で神託が届いたのだ。
神託の内容は簡潔だった。
『己が命を救いし少年と共に在れ』
ブンドル一味に出会い死にかけたところを救われ、一目見たときにこの子だと確信したとソニアは言う。
「その神託に従って俺についてきたのか……」
至人の眼に力が無くなる。
その顔を見てあわててソニアが否定する。
「た、確かに神託もあったけどアタシは一目惚れもあったんだよ! じゃなきゃ……」
「……じゃなきゃ?」
「お、女の子に言わせる気!? アタシは神託とか関係なくシビトくんが……」
もごもごと後半部分を口ごもるソニア。
「そう……だよな……うん、そうだよな」
一人納得したようにうなずく至人、先ほどの陰鬱な雰囲気は無くなったようだ。
「なに一人で納得してるの?」
少しだけ不機嫌になったソニアに問い詰められる。
「その続きは、俺の方から言わせてくれ。……今度」
やっぱり肝心なところでヘタレる。
「わかった、待ってるからね。絶対だよ」
にっこりと笑って至人に告げたあと、そっと額に口づけをした。
「え……今……」
突然の出来事に呆ける。
「よし、そろそろ交代の時間だね。ふあぁ眠い、じゃあとよろしくー」
そういって真っ赤になった顔を見られないようにそそくさと行ってしまった。
残された至人は額に残る柔らかな感触の余韻に浸りながら心の中でガッツポーズをとっていた。
王都に入ったらもう少し展開を早めたいですね。
お付き合いいただき有難うございました。




