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ラスボスの登場ですね、長かったですね



家に帰って、姉貴と二人で飯を食って、ベッドに寝転がっています。




「はぁ……」




もう何度ついたかわからないため息をついて俺は柔らかめなベッドに体を沈めさせます。




ハーレム……ハレームってなんだ? それはためらわないことかも知れません。




もし自分がそんな立場になったら全力で楽しんでやるって思ってましたけど、来夢の涙を見たらとてもじゃないですがそんなこと思えないです。




「想いは重し……か」




そんなこと呟いていましたら、部屋のドアがステイサムでも入ってきたかと思うような感じで乱暴に開けられました。




「おー、悩める青少年。元気してっかー?」




タンクトップに下は半ズボンのジャージ姿の姉貴がソーダ味のゲッソリくんをかじりながら俺の部屋に入ってきました。




「あのさー、思春期の男の子の部屋なんだからノックぐらいしろってんですよ……一生消えないトラウマ植えつけちゃうかもしらんですよ?」




「おー、たまってんのか? 手伝ってやろうか?」




「女の子がたまってるとか言わないの!!」




「へっ!」




姉貴は実に下品な笑みを浮かべて、ベッドの脇に座ってそのままゲッソリ君を無言で食べています。自分の部屋で食えよ……。




「何しにきたんすか?」




「忠告さ……まぁ、言わなくても分かってんだろうけど」




すると姉貴は急に俺の頬を軽く握ってきました。




「男のナニは一つしかついてないんだからよ、一人の女の子しか好きになっちゃダメだぞ?」




姉貴より兄貴がしっくり来るぞ、こいつ……。




「まぁ、そのなんだ……明日から大変だろうからさ……うん」




「何が?」




「明日になりゃわかるよ……まぁ、俺的に言わしてもらえれば玉砕できるだけマシだと思うんだよなぁ……無理やりあきらめもつけさせられるしな」




「何をさっきから意味のわからな……ゴフッ!」




姉貴はベッドから立ち上がるとさっきまで自分が食べていたゲッソリくんを俺の口に突っ込んできやがりました。




「可愛いお姉ちゃんの食いかけのアイスだ? 興奮するか?」




「あほか……」




「ふん、じゃあな、可愛い弟よ。せいぜい苦しめ」




姉貴はそう言って部屋を出て行きました。一体何がはじまるって言うんですか!?











姉貴に怪しげなフラグを建てられまくって迎えた新学期初日ですが、朝はこれといって何もなく静かに過ごすことができました。

夏の余韻の熱さがまだ残る日、クーラーの利いた教室で窓際で頬杖なんかついちゃってるとついついウトウトしてきちゃいます。




今日のお天気は曇り空。遠くの雲を見てると突然の大雨に見舞われそうですねぇ……傘持ってきてったっけ?




それにしてもなんだか今日は生徒たちが全体的にざわついているような気がします、特に男子。




そっと某議員よろしく耳をすませてみます。




「今日きた転校生めちゃめちゃ可愛らしいぜ!?」




「神村レベルっていうか、マジやばかったって」




ピクッ……。




嫌な予感がひしひしとします。そうもう本当にヒシヒシと……。




そうだ! 聞かなかったことにしよう! おっけー? いえーい! 幸せスパイラルゥ!




つまり私が観測さえしなければ転校生など、転校して来たことにならないのです!そんなシュレディンガースタイルを決め込むことにした俺は教室の外から一歩も出なかった訳でございます。




とかなんとか言いながら胸に一抹の不安を抱えて、午前中のひたすら経文を聞かされているような退屈な授業を終え昼休みを迎えました。




どうせ、祐一は愛しの樋口さんと飯でも食うんでしょうから一人で学食に行こう、とか思ってたら祐一の方がとても慌てた様子で俺の方に向かってきました。




「おい! 祐亜聞いたか!? 転校生のこと!?」




また転校生の事ですか……。




「聞いてないし、知りたくもないね!」




「俺も全然知らなかったんだけどあの転校せ……」




祐一が矢継ぎ早に二の言葉を紡ごうとしたら、教室の前の扉が勢いよく開かれました。




「祐亜、ご飯食べよー!」




そこにいたのは結衣を筆頭にしたいつものメンバー5人。結衣、亜弥さん、柳、高宮さん、樋口さん。




そして後ろの扉が、ゆっくりと開かれました。







「祐亜」






後ろの扉から聞こえたその声を聞いた瞬間、俺は反射的に立ちあがってしまいました。




酷く、懐かしい声でした。








視線を向けたその先にいたその子は、はっきり言ってみたことのない美人さんでした。




だって俺の記憶の中では、その子は眼鏡をかけていて髪の長さも肩ぐらいまでのショートカットで。




けど目の前の美人さんは髪を伸ばしていて、眼鏡だってつけていなかった。

けれどその顔はなんだか俺の記憶の中の女の子ととてもよく似ていました。




俺が生まれて初めて好きになった女の子に……。




何も言えず、まるで酸素を求める金魚みたいに口をパクパクさせている俺の元に彼女はまっすぐに向かってきました。




教室は水をうったように静まり返りその美人さんが一身にその視線を集めています。




やばい……やばいぞ、何がやばいかわからないけどとにかくやばい!!




俺は身動き一つとることができず彼女が目の前にくるのを待っていました。




あぁ、まずい。こいつ見ない間にすごく可愛くなってる。




俺のすぐ前に立っている、頭一つ小さな彼女は俺のことをまっすぐに見つめています。

その目には微かに涙がたまっていて、頬にはほんのり赤みがさしていて。




雨粒が窓を叩く音が、微かに聞こえました。





「ずっと、会いたかった」




その音は俺の心臓の鼓動と比例するように徐々に激しさを増していって。




「葵……だよな?」




次の瞬間彼女は俺に勢いよく飛びついてきました。俺はその反動で椅子に座り込みそうになりますがなんとか抱きとめます。葵は俺の胸に顔をすりすりとこすりつけながら泣き始めました。




「ゆうあ、ゆうあぁ…!!」




「あの葵様……!? 皆様も見ていらっしゃいますので少し距離を取って冷静に話し合おう! な!? そうしましょったらそうしましょ!!」




どこか懐かしくて、それでいて頭がクラクラするような甘い香りの中、俺は必死に葵を引きはがそうとしますが彼女は俺をきつく抱きしめてきてとても離してくれそうにないです。




完全にパニック状態です。視線を結衣たちの方に向けます。5人が5人全員突然はじまったラブストーリを目の当たりにして、目を点にしています。




俺だって何から伝えたらいいのかわからないまま時は流れてって、その時。





「あ」





葵が俺の頭の後ろを押さえて自分の方に寄せ、その唇をそっと俺の方に重ねてきました。





本日の天気は曇りのち雨、所によって嵐になるでしょう













「むぐぅぅ!?」




教室は黄色い歓声やら怒声やら悲鳴やらが聞こえてきます。

しかし葵はそんな周りの様子なんてお構いなしな感じで俺に長いこと唇を重ねてから、やっと離しやがりました。




唇に微かに残る今まで経験したことのなかった淡い衝撃に、顔が一気に火照っていくのがわかります。




「おま……!? はぁぁあああああ!?」




「ファースト……で、いいですよね?」




葵は片目を瞑りながら人差指を口にあてて、魅惑的な表情を浮かべています。




違う……俺の中の記憶の葵は、もうちょいドジっ子で世話焼きでこうなんか……こんな余裕のある感じではなかった。

私の知ってる葵はぁぁぁ目の前にいる葵ではぁぁあああございませぇぇんん!!




「こ、ここここ……こんな子に育てた覚えは……!!??」




「あぁーあ……予想以上に酷いことになってんなぁ」




後ろの扉からやれやれ顔で姉貴が現れました。振り返った葵が姉貴の姿を確認すると、今度は一目散にそちらに向かって飛びついて行きました。




「杏華ー!! 久しぶりですー!! 生杏華は本当に久々ですね!」




「ええい! 抱きつくな、暑苦しい! ちっと面貸せ、この色ボケ猫! おい、祐亜、祐一もこっちに来い」




抱きついてくる葵を心底鬱陶しそうに引きはがしている姉貴が俺と祐一の名前を

呼んだので、俺はそちらに早足で向かいます。

この空間にいたらやばい、本当やばいっす。




特に前方ですよね。




すごい……もうね、負のオーラが。負ってもんじゃない、負の次ですねこれはへのオーラですわ、もはやですね。




あちらに視線を向けたら死ぬ。そんな気がします、見たら最後。そんな世にも奇妙な物語的な感じがするのです。




深夜のサンペドロスーラのような、それぐらい危険な空間に耐えれず俺は逃げだした訳です。




それに俺自身も突然の出来事に頭の整理がついていかないので、結衣たちになんて言ったらいいのかわからないのが本音です。




それから俺と祐一と、姉貴と葵とで学食の方へと向かいました。






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