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可愛い女の子は汗かいてもいい匂いするのが不思議でたまりません


「誰にもばれなかった?」




食堂をなかばヤケクソ気味に飛び出し別荘の裏手に来ると結衣がいたずらな笑みを携えて立っていました。




「あれで、バレてないと思ってるんですか……」




俺がジト目を向けると、結衣は舌を小さく出して笑いました。




「だよねぇー? まぁ、でも大丈夫だよ。きっとみんな空気を読んでくれるに違いないさ!」




とても俺には彼女たちがそんな大人しそうなタマには見えませんが……。




「まぁ、細かいこときにしちゃダメだよ! 今日は祐亜のこと私がひとり占めするって決めたから!」




そういって結衣はいきなり右腕に飛びついてきやがったのです。




ジャッジ! 脳内ジャッジの判定は!?




『技あり!!』




確実に来てます。

しかし俺は騙されません。

5年近く(体感です)この子に翻弄され続けてきたので、ちょっとやそっとのイベントではま、っまままったくここころろが揺らがんのですすたい!




しかし、風は感じます。フラグを……フラグを拾うんだ!! 

俺の人生は晴れ時々大荒れ……いいね! いいラブコメだよ!




この笑顔の下に隠された結衣の本当の気持ちを少しでも知ることができたら結衣ともっと近づけるのでは。




俺はそう思いながら、結衣とともに別荘を後にしました。

背後から感じる殺気なんかに気付かず。










「潮風が気持ちいいねぇー」




「全くですな」




俺の右腕に当たったあなたの何かやわらかいものの感触の方がはるかに気持ちいいとは言えない、そんな俺です。




俺の右腕に絡みついてがっちりホールドしてる結衣と、別荘から少し離れた海岸通りを散歩しております。

雲がとけたような少し白みを帯びた青空に、右手の結衣越しに見える広大なマリンブルーの海はわずかに白波を立てるばかりでおだやかにそこに存在しています。時間の流れがゆっくりと穏やかに過ぎて行っているのを感じますな。あれだな、幸せすぎて死ぬやつだわ!! これね!!




「ところで、このデートとやら何か目的はございますのでしょうか?」




俺のすぐ隣を歩く結衣に声をかけると結衣は少し困ったように視線を上へ向かわせ、そのあとすぐに俺の方へと戻し笑みを浮かべました。




「ないや! なんとなく祐亜といたかったからかな?」




きましたわ……!! 有効!!




紆余曲折の末、ついに結衣の方からこんな軽く異性として意識していてくれているような台詞が飛び出してくるなんて……。

やっと正しい方向へ進みだしたか、俺という物語も!!




「ねぇ、祐亜?」




「なんでございましょうか!?」




俺が軽く感慨にふけっていると、




「明日のコンテスト、がんばろうね!」




結衣がまっすぐな瞳をこちらに向けてきていました。

はて……なんのことかと考えた後にそういえばそんなこともあったなとすぐ思いだし、俺は意味ありげな表情を浮かべて深く頷きました。




そんな時です……遠くから声が聞こえてきました。




「クリーク……クリーク……」




なんだ? 地の底から響く様な複数名の不穏な女性の声が……。




戦争クリーク戦争クリーク戦争クリーク!」




「な、なんてこったい……」




深緑色の軍服に身を包んだ美女5人がゆっくりと一列でこちらに向かってきています。

先頭を歩く、軍服に映えるあのブロンドがかった綺麗な髪の持ち主はきっとせっちゃん先輩。

田舎の夏ののどかな午後の雰囲気が一変、まるでイギリス征討歌でも聞こえてきそうなそんな様相を呈しています。




まさかこれほどの直球で来るとは……。

普通こういう場合、こっそり尾行。

後ろから俺と結衣の仲睦まじい様子を悶々としながら見て俺と結衣がいい感じの雰囲気になりそうな時にみんなが物陰から一斉に出てくる、そういうパターン! そういうお約束! そういう流れを踏むのがラブコメにおける暗黙の了解のはず!




ところがどっこいッッッッ!!




こんな正面から堂々と、しかも軍服を着て隊列を組んで邪魔しに来るとは狂気の沙汰でございますよ……。

海の見えるこんな綺麗な田舎で、なぜ水着ではなく軍服に身を包んでいるのだ。こんなの俺の知ってるラブコメじゃない……。




「少佐殿! 少佐! 代行! 代行殿! 大隊指揮官殿!」




だんだん近づいてきています、そしてなんであんなに統率が取れているのだ……。貴様らのようなヒロインがいるか!!




「祐亜、逃げるよ!!」




結衣が俺の手を引いて駆け出しました。なんだよこれぇ!!(オカリン風)











「いくらなんでも怖すぎやしませんか!!??」




「いやぁ、いい子たちなんだけど思いがまっすぐすぎるというかなんというか……あはは」




結衣に手を引かれながら気持ちの良い海風がそよぐ海岸沿いをただいま爆走兄弟よろしく疾走中でございます。

俺の質問に対して、結衣は答え辛そうな感じで苦笑いを浮かべてお茶を濁しました。




そんな間違った方向に全力な彼女たちの方へ視線を向けると。意外にも走って追ってきたりはしていませんでした。

しかし、逆にそれが不気味であったりはしますが。




いつでも、ヤれるぞ。




暗にそんなメッセージをその姿勢から発しているような気がして。




「お、追ってこないみたいですよ!?」




「安心はできないよ!来夢ちゃんと杏華はあれだけど、あとの三人は並の女子高生の身体能力じゃないし……この先に港町みたいな所があるみたいだからそこまで全力で走るよ!」




俺が息も切れ切れという感じで訴えると、結衣は繋いだ手にさらに力を込めて走るスピードをあげました。

そうだ……失念しておりました。彼女、足の速さだけだったらなんとかさんクラスでしたね。もう何年も前かの昔のことのように感じる体育祭のことを思い出しつつ、胃からせりあがってくる吐き気を必死で押さえながら結衣の後ろに続くのでした。いやほとんど引きずられています。










「ぅぉえっぷ……」




都会とは全く違う静かで閑散としている港町に猛ダッシュで着きました結衣と俺は、なんとなしに目に入った小洒落た構えの喫茶店に入ってみることにしました。店内は店主の趣味なのか、ハワイアンテイストの南国チックな内装でこの町の雰囲気に合っています。

主張しすぎない程度のボリュームでかかってる音楽は、多分jack johnsonのNever know。サーフ系の中でもかなり好きな曲です。店主とは仲良くなれそう。




さて、そんないい雰囲気のお店の奥の席で俺は必死に嗚咽を堪えている俺です。




「あはは……ごめん、ちょっと早すぎたかも……。あ、アイスコーヒーを二つお願いします。」




そんな俺を申し訳なさそうに見つめる向かいに座った結衣は、怪訝な様子でテーブルに来た店員に適当に注文を伝えております。

しかし、あれだけのスピードで走って息一つ切らしていないとはやはり色々高スペックですな、この方。




「いえいえ……これしき、なんてこたぁありません……というのはやや誇張表現になりますな。少しばかりしんどいです」




「なんかいつも振りまわしてばっかりだね、私」




俺がローテンションで答えると、結衣はどこか遠い目をしながらそんなことを言いました。




「まぁ、仕方ないですよね」




「ん? 仕方ないって?」




結衣は小首を傾げて、頭の上にクエスチョンマークでも浮かんできそうな表情を浮かべています。




「結衣のこと好きになっちゃったんですもん。惚れたもん負けですね。結衣が宇宙行くぜ!って言っても着いていきますよ、俺。多分ですけど」




俺が別段なんてことはないという感じでそう言うと、結衣の顔がまるで今更夏の暑さを思い出したかのように赤く染まっていきました。




「な、なんでそんなことさらっと言っちゃうかな!?」




「いや、今更何を……。好きでもなかったらこんなにそばにいようとする訳……」




「たのもぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおお!!!!ですぅ!!!!」



俺の台詞は突如来店した軍服に身を包んだ桃色の髪の美女によりかき消されました。どうして世界はこんなにも俺をいじめるのか……。







それは異様な光景でした。

緩やかな時間が流れる南国のリゾートのような雰囲気の店で、季節に全く合わない軍服に身を包んだ5人の美少女が俺たちのちょうど後ろの席に堂々と座りやがったのです。結衣の肩越しに見える彼女たちのそれは非常にドス黒く……あ、姉貴は恥ずかしそう。




「バーホーゲンのココアを5つ……砂糖とミルクありありで」




「ちょ……先輩いくらなんでもこのクソ暑い日にココアなんて」




「あうあう、杏華は全く分かってないですぅ!!」




なんかわちゃわちゃ言ってますが、店員の方のツチノコでも見つけたような視線に早く気付いて静かになって欲しいです。




「あちゃぁ……やっぱりひとりじめは無理か。分かってたけどね」




結衣が運ばれてきたアイスコーヒに口をつけながら、少し寂しげな笑みを浮かべて何かつぶやきましたが後ろの騒ぎのせいで上手く聞き取れませんでした。




「じぃ……」




「いやぁ、わ、私はあれだ……結衣とお前の身に何かあったら心配で仕方なしにだな……!」




効果音を口にしながら結衣の肩に顎を乗せてこちらを無表情で見ている柳と、体を半分だけこちらに向けて必死に言い訳をしているなんとかさん。




「モテモテだねぇ?」




自分の左肩に乗っている柳の顔に顔を寄せてほっぺをすりすりしながら、結衣はいつか聞いたことのあるようなことを口にしました。




「帰ろうか?」




えっ? まだ何もしてない……デートどころか引きずられながら走って吐きそうになりながらアイスコーヒ飲んだだけですが。




「やっぱりみんなで来てる訳だし、みんなと遊ばないとダメだよね」




その瞬間、俺のフラグ構築の術を失った瞬間、確かに彼女たちは安堵の笑みを浮かべたあとダークサイドに落ちたような不敵な笑みを浮かべたのでした。


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