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8 ついにきた魔法学園

ゲーム開始したけど、説明が多いのでしばらくは毎日更新かも。

緑豊かな美しい森に朝日が差している。

小鳥の鳴く声も美しい。

ここは、世界最古の魔法王国が誇る王立魔法学園の裏の森だ。

そして今日は、入学式。


おはようございます。私はリリーナ・ヴェルデガン伯爵令嬢15歳。

今日からこの栄えある魔法学園に通う、世界の救世主。

しかし、その実態は、女神に見込まれてゲームの世界に転生した現代日本人女性。

あまりモテないまま40歳で死亡し、今世ではイケメンに囲まれて幸せをつかみたいという欲望を持つ女。

なんだろう。崇高な使命を帯びた救世主なのに、あんまりいい話にならない。


いやあ、長かった。

女神のお告げを受け、現代日本からこの世界に転生し、記憶を取り戻してから7年が経った。

魔物の出る辺境の地で7年。

世界の救世主となるべく、ものすごく頑張ってレベルを上げたよ。

剣も魔法も。

だって、私が世界を救わないと、世界が破滅しちゃうんだよ。

自分ももちろん死んでしまう。

もう、本当に頑張ったよ。

試行錯誤の末、実際の戦闘が一番レベルアップに向いていると悟り、小さい魔物をコツコツやっつけ続けた。

継続は力なり。

頑張ったよ、リリーナ。

ああ、すばらしい。

世界の救世主、リリーナ。

誰も褒めてくれないので、自画自賛しながら、森を散策する。

鬱蒼と生い茂る緑に覆われた幻想的な空間は、すぐ横に学校があるとは思えないくらい静かだ。

実際、この森は校舎からはそこそこ離れている。

剣術や魔法の実技訓練があるので、校舎の裏側にはかなり大きな平地があって、その更に向こう側になるからだ。


誰もいない森を散策しているのは、感慨にふけるためではない。

ここでヒロインのリリーナは、攻略対象である王太子フィリップ殿下と騎士団長の息子エドワードに出会うことになっている。

入学式の会場に行こうとして、裏庭に迷い込むヒロイン。

他の生徒たちに騒がれるのを嫌って、森に来ていた殿下たちが助けてくれるのだ。

この時は、印象深く知り合うだけだが、設定上では、この出会いは再会だ。

幼い日に、ヒロインと攻略対象たちは星祭りで出会っている。

それをいつどこで思い出すかはプレイヤー(ヒロイン)の腕次第なのだ。


ちなみに、プレイヤーである私は星祭りですぐに、

この世界が『星の導き~救世の乙女は愛を探す~』、略して『ホシミチ』の世界だと認識した。

その時も迷子になったヒロインだった。

また迷子か。

準備が足りないぞ。

ゲームなのでしょうがないのかもしれないが、このヒロインは意外と行き当たりばったりだ。

まあ、15歳だしな。

私は準備を怠らない几帳面な前世日本人で、いい大人なので、時間は常に5分前行動だ。

どのくらい迷っていればいいかわからなかったので、かなり早めに寮の部屋を出た。

数日前に寮に入ってから、下見も何度かした。

髪良し、肌良し、濃紺の制服も皺一つなく、足元のブーツも新品。

制服は両側にボタンのついたマーチングバンドのコスチュームのような上着に膝下よりやや長めの丈のスカートだ。

ブーツは編み上げ式のロングブーツ。スカートなのにロングブーツなのは、淑女は足を見せるものではないからだ。

男子生徒はズボンに普通の革靴のような靴を履いている。

中性ヨーロッパ風の魔法世界なので、貴族の女性は驚くようなドレスを着ていたりもするのだが

日常生活を送るにはドレスというわけにはいかないので、前開きだったり、着脱しやすい工夫がなされている。

学園では、皆が平等で、それぞれが自立した生活を送ることになっているのだ。

それが建前だというのは知っているけど。

高位貴族のご令嬢は身の回りの世話をするメイドを連れて来ているし、分家筋の生徒に世話をさせていたりもする。

恐ろしい階級社会だ。

私はここで悪役令嬢のいじめに打ち勝ち、王子をゲットしなければならない。

手鏡でもう一度、身なりをチェックする。

よし。今日も可愛い。

後は、さりげなく出会うだけだ。


さりげなく、さりげなく。

なのに、何故、関係ない人がいるかなあ。

女の子がしくしく泣いている。私と同じ濃紺の制服が真新しいので、おそらく同級生だ。

この世界では15歳だと成人でなくても一人前扱いだし結婚も出来るので、スルーしてもいいかな。

まあ、そういうわけにもいかないか。

「どうしたの?」

声をかけたら、美少女が顔を上げた。

流れるようなさらさらしたまっすぐな金髪にぱっちりした緑色の瞳。

肌は抜けるように白く、首がスッキリ細くてスタイルがいい。

公爵令嬢エミリア様ですね。フィリップ王子様の婚約者の。

スチルそのままだったんで、すぐわかりましたよ。

私と身長は変わらないのに、胸元が豊かでウエストがくびれていて、ちょっと本当にプロポーションがよろしいですね。

そう思いながらも、どうにも違和感がある。

なんか違わなくない?これ。

いや、見た目はそのままなんだけど。

なんか雰囲気が違い過ぎるというか。

傲慢で押し出しの強い悪役令嬢だよね、エミリアって。

「いえ、その」

エミリア(暫定)はもじもじした。

「お友達と、少し、喧嘩をしてしまいましたの」

恥ずかしそうに頬を染める姿は可憐なままだ。ゲームのイメージよりも少し細身で、儚さすら感じさせる。

「ごめんなさい。ご心配をおかけして」

え~公爵令嬢エミリア様が知らない同級生にそんなこと言っちゃうってありえなくね?

ここは『下賤な者が紹介もなく、私に声をかけるなんて』って怒りだすところじゃないの。


「エミー」

向こうから人がやってきた。

今度こそフィリップ殿下とエドワードくん。

おお、こちらもゲームどおりのイケメンに育ったな。

フィリップ。

やや癖っ毛の金髪が華やかに整った顔を縁取り、その中に黄金比を詰め込んだ王子様。

これこれこれだよ、私が求めていたものは。

エドワード。

少年体型でありながらもすらりと伸びた背が男らしさを予感させる。

眼福とはこのようなことではなかろうか。

私が心の中でにんまりとほくそ笑んだ時に、なんだかダルそうな声が聞こえた。

「お前、ぐずぐずしてないでさっさと帰れよ」

おや?フィリップ殿下、お口が悪いですよ。

「殿下、エミーは1人では帰れないですよ。誰か送って行かないと」

エドワードが助け舟を出すが、それもまた殿下の機嫌を損ねたようだ。

「ここは学園の敷地内だ。ここから会場までも1人で行けないなんて、箱入りのお嬢様にもほどがあるな」

「殿下・・・」

エミリアがわかりやすく涙ぐむ。

「そうやってすぐ泣くから女は嫌なんだよ。愚図だし、オニイサマがいないと何にもできないし」

「そもそも淑女というのはそういうものです」

今度はフィリップとエドワードが揉めだすが、どっちもかなり女性蔑視というか、かなり酷いことを言っている。

その間にもエミリア様はしくしく泣いてるし、これは何かな、三角関係の痴話喧嘩みたいなものなのかな。

なんでこんな現場に居合わせないといけないんだ。

私、帰っていいかな、って思ったけど、王子様たちと出会いイベントをしないといけないんだった。

おかしいなあ。

予定では、イケメン殿下に「新入生?」て声をかけられるはずなのに。

エドワードからも「入学式に遅れてしまうよ。送って行こう」って言われるはずなのに。

2人とも見た目だけはとてもイケメンなのになあ。

子供か。

そうか、子供だな。15歳だもの。

40歳+15歳の私からしたら、どうしても子供っぽく見えるのはしょうがない。

でも、普段は15歳のリリーナがちゃんと判定しているので、実の兄や若い使用人たちを子供っぽいと思ったりはしないんだけど。

ゲームの記憶に引きずられているのだろうか。

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