85 黄金竜との約束
こうして夜は無事に過ぎ、城で1泊させて貰った。
その日の夜は皆は1つの危機が去り、その疲れからかぐっすりと眠っていた。
ガクトもアミュラも眠りにつき、俺もそろそろ意識が落ちそうなところで耳に声が入ってくる。
「ぬし、起きてるか?」
驚いて顔を上げるとアミュラの胸元が点滅していた。
そう、球の状態でアミュラの懐に隠れているファンロンだった。
「どうしたのファンロン?」
「戦闘が終了してから我が言葉を発する場所が無かったからな。ぬしも少しは落ち着いたであろう時間はあまり取らないよう少し話をせんか?」
珍しいと言うか、ファンロンからコミュニケーションをとって来るのは意外さと何となく嬉しさが合ったのでまぁ眠いのは否めないのだがその会話をする事に承諾した。
「良いよ、ファンロンとも少し話したかったから」
「よし、では我を神子の胸元から取り出してくれよ」
「わかった……えっ!?」
そう、今ファンロンはアミュラの胸元に隠されているのだから持ち出すにはアミュラの胸に手を入れてファンロンを取り出さなくてはならない。
勿論、俺はその行為に躊躇わないわけがない。
「どうしたぬし? 早く我を出すのだ」
「うん、そうなんだけど……」
ええいままよ!! 俺も男だ!! 外見は女の子なんだから大丈夫!! 女の子が女の子にセクハラする話を昔聞いたが……違う!! これはファンロンを取り出すためだ!! そいやーー!!!!
そうして、アミュラの胸元にそっと手を入れる。
アミュラの身体の温もりが手に伝わってくる。
「んんぅ……あっ……♡」
「ひゃっ!?……」
ファンロンに向かう手が少しアミュラの肌に当たり、アミュラが変な声を出して驚く。俺も変な声が出かけたが口を押さえて、ファンロンである玉をうまく掴んでゆっくりと取り出す。
「と……取れた……」
「遅いぞ」
「うるしゃい! 人の気持ちも知らないで!」
「???」
何か悪いことをしてるような感覚がして物凄い背徳感を感じてしまう。まだまだ俺も心が童貞だよ……とほほ……
ゆっくりと部屋を出て、部屋のドアの隣の壁に保たれて、一息つく。
「ぬし、そろそろ良いか?」
「うん、良いよ。で? 話って?」
「うむ、ぬしたちには感謝せねばならんと思ってな。あそこまで汚れ果てていた神子を救い、我までも……神子には我が身とあのノイと言う子供しか身寄りが無く、心配はしていたのだがここまで神子が生き生きとした姿は久しぶりだった。それもぬしたちのおかげだ。感謝する」
今のファンロンは手のひらサイズの黄色い水晶玉なのだがその声だけでも俺たちに対して心から感謝している気持ちが伝わってくる。
「ファンロンも1人でアミュラの事守ってくれてたんだから、私たちはそれを手助けしただけでファンロンの労力の比なんかにならないから。それと、私が感謝したいくらい。貴方達を助ける事ができてよかったって」
「ぬし……どこまで人が良いのだ」
「えへへ、何でだろうね。私でも判らないくらいそう考えちゃうんだよね」
そう、この世界に来て主人公ぶってる様に見えるかもしれないが、本当に誰かを助けたいと言う思いが心から溢れてる感覚がするのだ。そこも、前までの自分とは少し変わったところだ。まるで、前の自分と似てるが違う様だ。
「……ぬし、ケルティディアと言う神を知っているか?」
「あーーその人って昔居た神様だよね? その人がどうかしたの?」
「その神も昔、神子の自由を訴えてた者の1人だったのだ」
「ケルティディアさんが?」
「ああ、我も長くこの世界に居る。アミュラの先祖も我がこの目と身をもって見守ってきていたのだが、やはり竜血の神子とは昔もかなり特殊な存在で扱いも平等では無かったのだ。我のような竜を操る者が近くにいたらぬしも変に思うだろ?」
「うーーん、最初はそうかも」
「その思いが肥大化し、神子達はかなり迫害を受けたりしていた。しかし、その活動に待ったをかける様に現れたのがケルティディア神だ。ケルティディア神は他地方の神でありながらもサーティ地方に来ては民を助けていた。そして、その一つが神子の自由の訴えだ。そのおかげかアミュラの代ではもう迫害や差別などはほとんどなくなり、神子も普通に生活できる様にはなった。しかし、ケテルネス自身が神子を隠し、血を抜き取っていたのも我は知っていたがどうする事も出来なかった。我はただ、次生まれた神子を守り、最後を見届けるのが仕事。しかし、神子を少しでも救ってくれたあの神に恩を返したいと言う思いがあった。ところが、我とまた出会う前にどこかへ消えてしまったと言う噂が流れ、我は内心深く傷心していたのだが……」
光の点滅が収まり、言葉を詰まらせるファンロン。
俺は静かに話を聞き、その続きを待つ。
「ぬしに出会って、ケルティディア神と同じ考えを持った者が現れ、我は……決めたのだ」
「決めたって?」
「神子を守るぬし達が神となるまで我もぬし達をこの身をもって守らんとしよう……そう決めたのだ」
「か……神!? 私達が!?」
「我は思ったのだ、我に命令を下したぬしのあの姿を見た時、神の素質を感じたのだ。それと、その剣……神器は神にしか扱うことのできぬ物、それを所持している時点で運命なのかもしれぬ」
「で、でも神ってそう簡単になれる物じゃないよ!!」
「『今は』な。今はその時ではない。しかしらいずれぬしの魅力に惹かれ、付き従う者達がどんどん現れるはずだ。そう、我の様に。しかし、意識しなくて良い。ぬし達は普通に生活をすれば良い。神になる『その時』をぬし達なら掴めるはずだ」
自分が神になれるだなんて言われても、信じられない。
信じる事ができない。
自分の持つ能力は確かに強い……て思いたい。しかし、まだまだうまく扱えていない。到底今のレベルで神になれるなんて思いもしない。ファンロンの言う話はもう少し先の事だ。
「そう言う事で……我の力、巫女だけではなくぬしにも力を貸そう。どうだ?」
「……断る理由なんて無いよ。私が神とかよく分からないけどアミュラのためにも私たちと一緒にいてくれたらそれだけで力になってる。だから、ファンロンがどうしたいかはファンロンの好きにして良いよ。だから、歓迎するから!」
「……よし、これで約束だ。ぬしが神になる軌跡を我も共に歩もう」
「大げさだよ~~、さてと……明日も朝早いから今日はここら辺にしとく?」
「そうだな、我もこのまま眠る。また、我を神子の服へ納めよ」
「……まじ?」
この後、取り出す時よりも苦戦を強いられ、やっとこさ元の位置にファンロンを戻す。
「……アミュラの肌柔らか……」
そうして、自分のベッドに座ると自分のスキルの事を思い出した。確認する暇がなかった為急いでシステムで確認する。
≪【創造者】のレベルが上がりました。level 1→2≫
≪【創造者】に新たなスキルが解放されました。詳細は以下の通りです≫
name:【制作領域拡張】
前提条件:【能力制作】所持
種別:EXスキル
効果:【能力制作】で制作できるスキルに、EXスキルが追加される。
【能力制作】のスキルで特殊スキルとEXスキルが作れる!?
そういえばファフネリオンの戦いの時さりげなく作ってた様な……いつから? まぁいっか……
て事は……もう俺に作れない物なんて無いんじゃ……
後で実験してみよう。今はもう休もう……眠い……
俺はシステムを消して、ベッドに倒れる様に眠りについた。
今回も最後まで読んで頂きありがとうございます!!
もし宜しければブクマ、評価、感想、レビューどれかで構いません!してくれたら嬉しいです( ´ ▽ ` )
次回も楽しみにして下さい!!
2020/09/23 制作領域拡張のスキル詳細を変更しました。
 





