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女体化転生から始まる異世界新(神)生活〜TSした元男子大学生、第二の人生はチート能力【創造者】を手にして神の元で働く傍らでいつの間にか『神』扱いされる〜  作者: 霞杏檎
4章 黄燐ノ竜編

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71 最強の擬態

 ファフネリオンから見て足のつま先から、つむじの上までケルトとほぼ同じ外見となったファンロンのすがたがそこにはあった。服装はケルトの着ている緑色の上着に下は皮の胸当てで守られたワンピースまで同じである。髪も特徴的なくせっ毛気味の銀髪も真似られており、長い髪が風になびいている。


「少々ずるいやもしれぬがこの状況では関係など無かろう。貴様の身体もそろそろ限界が来てるであろう? 来るなら来い。決着を付けてやる」


 声も一緒だった。本物と違うところは目つきが鋭く、落ち着いた低い口調をしていると言うことだ。余裕の表情でケルトの姿を模したファンロンはファフネリオンに向けて挑発の手招きをする。ファフネリオンはそれに怒りをあらわにする雄叫びを上げるとファンロンに向かって口を開け、飛び掛かってくる。


 ケルトのサイズでは口の中に余裕で丸呑みにされてしまう。しかし、ファンロンは避けようとはせずに仁王立ちのまま黒龍がこちらに向かってくるのを見ている。


 目と鼻の先まで黒龍が近づいてきたギリギリを見計らったファンロンは右手を前に出す。その右手は空間が歪むまでに圧縮された大気の塊が生まれていた。


≪発動:獰猛な大気 (擬態)≫


 黒龍がファンロンを飲み込もうとした瞬間、大きな爆発が起きる。その、爆発と共に顔どころか黒龍の身体が吹っ飛ばされる。口の中で内部爆発したことにより鋭く固い牙は殆ど折れて、至る所に飛び散る。顔の周りの鱗も剥がれ落ち、衝撃に耐えられなかった皮膚は頭から血を盛大に振りまいた。 


 黒龍程の巨体は100メートル程宙を舞い、ボロボロになった家々を突き破りながら飛ばされる。土の摩擦力によってやっと動きが止まったときにはもうファフネリオンの意識は朦朧としていた。白目黒目を繰り返して、ギリギリ焦点を保たせたところで大きな腕で身体を支えながら立ち上がる。ふらついているその様に災厄の威厳など無いに等しかった。


「お前も辛かろう……あと少しだ……」


 ファンロンは走り出す。風に乗り、身軽になったその身体を使いながら家々の壁を走り、風を蹴る。その機動力は竜よりも圧倒的だ。一息する間もなく半分まで距離を詰める黒龍の顔面に風圧でコーティングされた足で横蹴りを与える。


 一陣の風の如き速度で蹴られ、身体は一回転する。衝撃によってボロボロと体中の鱗が剥がれていく。更に畳み掛けようとするファンロンだったが黒龍は目の前で火を口から出す。それは咄嗟のことでファンロンの身体は火に飲まれる。しかし、その飲まれたはずの身体は霧のように消えてゆく。


「残像だ」


 それは火を出した方向とは真横から聞こえてくる。目だけで横を見ると腕を組んで仁王立ちするケルトいや、ファンロンの姿があった。


「まだ火を吹ける体力があるとは驚いた。だが、惜しかったな。あと一歩だった。それに、貴様の硬い黒鱗もある程度は剥がれたであろう。これで我が攻撃も通ると言う事だ」


千変万化の擬態(インフィニティコード)強制解除≫


「おや、もう時間か……もう少しこの身体でいたかったのだが、まあ良い」


 ファンロンの姿はケルトの身体から今まで通りの身体へと戻る。


「我も誇り高き守護竜である。貴様との最後はこの姿で相まみえようでは無いか!」


 ファンロンは大きな雄叫びを巨大な羽を広げながら上げる。その雄叫びの衝撃波により周囲の大地が割れてゆく。


 ファフネリオンも最後の雄叫びを上げる。そして、地面を前後の足の爪で固定すると皮膚の内側が赤く照りだした。どうやら、体内全てから炎を生み出しそれを放つつもりである。体内で抑えきれない炎が鱗の隙間から漏れ出てきているのだ。


 一方でファンロンも圧縮した空気を体内に送り込み始める。ファンロンの周囲の風が荒れ始め、嵐がそこには起こっている。


≪発動:黒赤の息吹≫

≪発動:ショックブラスト≫


 そして、2体の技が同時にぶつかり合う。お互い身体のエネルギーを全て尽くしたその技は当たればどちらかの最後を意味する。


 大きなエネルギーがぶつかり合い、衝撃波が生まれ、周辺一帯が吹き飛ぶ。ぶつかり合う炎と風。二つの属性は両者一歩も引かない威力である。


 しかし、押しているのはやはりファンロンの方である。生み出される衝撃波は炎を先端からかき消してゆく。


 弱り切った身体に鞭を打ってでもファフネリオンは爪を立てて反動から身体を支えていたがそろそろ限界であろう。


 勝負は殆ど決まった……そう思ったその時だった。ファフネリオンの隣に即座に何かが現れる。


「やっぱりボロボロじゃない。ここまで来て負けちゃうのかしら?」


 それは、コウモリのような羽を背中に生やした白紫髪の女だった。


「ここ最近、エスデス様がお怒りだからしっかりしなきゃいけないのよ? 分かってる?」


 こんな緊迫した状況下で会話をしようとする女の聞き耳も立てずにファフネリオンはファンロンの攻撃を耐えている。


「……しょうが無いわね」


 そう言うと、女は右手の指をファフネリオンの皮膚に突き刺す。指した腕が赤色に染まっていく。ファフネリオンの体内に何かを注入しているようだ。


 そして、女は入れ終わると指を抜く。抜いた瞬間ファフネリオンの様子が変わった。目が赤色になり、黒い血液が漏れ出るとその黒色の皮膚が赤色に変わっていく。


 それと同時に火の威力が前の比にならない程上がっていた。押されていた炎が今度は風を打ち破り、飲み込んでファンロンの攻撃を押すようになったのだ。


「何だと!? 炎の威力が!? そこの女、何者だ!?」


「ナ・イ・ショ♡ それじゃ……ご機嫌よう」


 ウィンクをし、笑みを浮かべると女は素早く飛び上がりこの場から消え去ってしまった。

 残ったのは暴走状態に入りパワーアップしたファフネリオンだけ。しかし、状態は悪化してしまった。

 形勢逆転となったこの状況でファンロンが攻撃を耐える側となってしまった。



 一方で街の外にいるケルトの仲間達はファフネリオンの生み出した残党を倒し終わり、ある程度落ち着きを取り戻した頃だった。


 動き回っていた魔物達が地面に潰されていたり、丸焦げで仰向けになっている巨大百足の亡骸が至る所に転がっている。


 どうやら、安全を取り戻したようだった。


「ふぅ~~終わった終わった、多過ぎなんだなぁ……」


 ユシリズが小手に付いた炭を払いながら地面に雑に座る。


「はぁ……はぁ……長時間ここ周辺の時間を遅くさせるのも体力がいるよ……」


 ユウビスが顔中汗でびしょびしょになりながら地面に倒れ込んでしまった。


「みんなお疲れ様! よう頑張ったで!!」


 ダンが弓を背中に背負い直し、アミュラの手を引く。

 ふと、アミュラが村の中心の方を見た。何かに気がついたようにダンの腕を引っ張る。


「アミュラ、どないした?」


「ケルトが来た!!」


「何やて!?」


 ダンがアミュラの指さした方を見ると向こうから物凄い速度でこちらに向かってくる物が見えた。それは間違いなくケルトでしか出ることは無い速度である。

 ケルトの腕にはボロボロになったガクトが運ばれている。


「ほんまや!! おーーい!! ケルトちゃーーん!!」


 大きく手を振ると遠くから俺も手を振る。そして、手を振ってすぐにダンの元へと到着する。


「みんな大丈夫!?」


「ああ、みんな無事やで! アミュラもあいつらも。……って、ガクトが大変なことになってるやん!?」


「うう……俺は……大丈夫……」


「嘘つけ!!」


「大丈夫、今直すから」


 俺は優しくガクトを地面に寝かせると手をガクトの胸に置いた。すると優しい緑色の光と共に地面に魔方陣が瞬時に生み出されるとガクトの傷が直ぐに癒えていく。


「高速詠唱……! 凄いケルト!」


「いや~~それほどでも~~」


 アミュラには悪いけど、本当は能力で生み出したなんて言えない……

 そうこうしている間にガクトの傷は完全に消えてしまっていた。


「ありがとうケルト……おっと……」


 ガクトが立ち上がろうとしたとき少しよろめいたところを支えてやる。どうやら傷は癒えても、身体の疲労は回復しないようだ。


「無理しないで。病み上がりなんだから」


「……すまん」


 ガクトは自分からその場に座り込む。安心したのも束の間、アミュラがはっと町の方を見た。そしてそのまま、身体をガクガクと震わせている。


「アミュラ、どうしたの?」


「あ……ぐ……ぐるぐるが……危ない……」


「え?」


 そう言いながらしゃがみ込み、祈りの姿勢を取る。身体はまだ小刻みに震えているが必死に祈りを捧げている。


「ケルト! 俺たちの事は良い!! 早くファンロンの元に行け!!」


「……うん!」


 アミュラの様子を見る。必死に必死にファンロンの居る方向に向けて祈り続ける。少しだけアミュラから光が村の中心に流れていくような感じがした。

 俺もこの光に乗ってファンロンの元へ行くしか無い!!

 

 俺は大地を蹴り、また村の方向へと走った。



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