70 インフィニティコード
黒龍と全く同じ姿に変わったファンロンを前にしてファフネリオンもこれには動揺が隠せず、襲って来ようとはせずに様子を伺いながらファンロンの姿をまじまじと見つめている。
もちろん、上に乗っている俺も驚いている。さっきまで黄金に輝いた竜の上にいたのにまるで間違って黒龍に乗ってしまったかのような感覚。さっきまでの艶やかさのある鱗は黒くなり、感触が全く違うものだった。ファンロンが話すことが出来ているから判別できるもののお互いの体はまるで同じ、鏡合わせのように黒龍が2体その場にいる様子は不自然極まりないのである。
「その様子ではお前でさえ驚いているなファフネリオン……この力こそ我が能力”千変万化の擬態”だ。この能力は対象の外見、行動など理解したときそのものとほぼ同じ姿となることができる。対象の姿が大きくとも小さくとも意のままの姿に変えることができるそして、この能力の最大の力……それを教えてやろう」
そういうとファンロンはファフネリオンに向けて大きな口を開くと口から炎を出した。その炎はただの炎ではない。さっきガクトに向けて放っていた黒炎をファフネリオンに向けて放つ。その攻撃に対して、ファフネリオンは避けることはせずにまともにその炎の中に飲み込まれていく。
しかし、ファフネリオンが一鳴きすると辺りに風圧が生まれ、その風によって火柱は一気に消える。もちろん、その攻撃によるダメージは無いように見える。しかし、ファンロンにとってダメージを与えることが本筋ではないのは俺でも分かった。なぜなら俺はファンロンの言いたいことがこれで理解したからだ。それはファフネリオンも同じだろう。
ファンロンは静かに広げた大きな口を閉じる。
「我が能力の最大の力……それは『姿を変えた対象の能力、耐性が一部使用可能』になると言うことだ。貴様とケルトの仲間が戦闘をしている間、ただ見ていたわけではないのだ……貴様の動き、特徴その全てをこの瞳で捉え続けて、覚えていたのだ。これで貴様の力の一部は我がものとなり、貴様の攻撃は我に通用せぬ」
「もしかしてその力で私にもなれるの?」
「ぬしの姿は容易い。なぜなら、我のそばにいたのだからなぬしは」
「そうなんだ……凄い力……」
「ふふ……我の力をぬしに見せることができてよかった。それよりも早くぬしの仲間を助けてやるのだ。我がこの手でファフネリオンの息の根を止めて見せる。バトンタッチと言うやつだ」
「……分かった!」
俺はファンロンの背から降りると倒れたガクトの元へと向かう。腕を掴んで肩を支えてやるとガクトは竜の体からいつもの人間の姿へと戻る。
「ファンロン!! すぐ戻るから、黒龍のこと頼んだよ!!」
「任せろ、ぬしがいなくとも倒して見せる」
ファンロンを背に、俺はガクトを運ぶために風に乗るように移動する。その間、ガクトは傷が深いのかぐったりしている。
「すまない……まだ、力に……慣れていなくて……」
「良いの。ガクトが無事ならそれで良いから」
「あいつは……アミュラは?」
「大丈夫……今、ダンたちが村の外で保護してるから無事だよ」
「そうか……よかった。もう少しで国の奴らが来る……あと少しだ……だから、耐える……ぞ……」
そう言うと、ガクトは目を閉じて気を失った。
「当り前じゃない……色んな人たちと約束したんだから……」
そう言いながら、みんながいると思われる村の外へとかけ走った。
そして、村の中心に残った2匹の竜がにらみ合っている。その様子はまるで竜と龍の縄張り争いである。
「やっと、戦えるな黒龍よ。あの時の事は忘れておらぬぞ。貴様にはあの時の屈辱を晴らさせてもらう!! 行くぞ!!」
先に攻撃を仕掛けたのはファンロンだった。黒龍の姿のままファフネリオンとの距離を詰めていく。向かってくるファンロンに対してファフネリオンはよける気配がなかった。
ファンロンはそのままファフネリオンの首元に噛みつく。黒龍の牙は自身の鱗を貫通し、下の肉にまで牙が刺さると初めての黒龍の黒い血が流れ出てくる。
これが効いたのか堪らずファフネリオンは尻尾を鞭のように扱いファンロンを殴りつける。噛みついた口は外れたものの倒れはしない。
≪千変万化の擬態解除≫
ファンロンの体からは一瞬にして輝きを取り戻し、いつもの黄金の鱗に覆われた外見へと戻る。そして、そのまま右の大きな手でファフネリオンを掴み、地面へとたたきつける。
その後、攻撃の嵐は止まず、倒れ伏した黒龍にさらに足で踏みつぶしの追い打ちをかける。しかし、それにはファフネリオンも紙一重で回避し、隙を見計らってファンロンの首元を噛もうとする。
≪発動:千変万化の擬態≫
≪対象:ジャイアント=センチピード≫
≪擬態成功≫
ファフネリオンの歯がファンロンの首元を捉えたその時、またファンロンの体が光始める。すると、その姿は巨大な百足の姿となったのだ。
≪発動:鉄壁甲殻≫
無論、体が百足の姿に変わっても鋭い牙を立てて、その身体に噛みつくが噛みついた瞬間に金属が擦れる音が鳴るとファフネリオンは口を身体から離す。
見るとファフネリオンの歯が少し欠け落ちている様子が見える。
一方、百足姿のファンロンの体には傷一つついていない。そして、隙を見せたファフネリオンに長く軟化した百足の身体で絡みつく。
ファフネリオンが暴れるもがっちりと縛りついているため振り払うことはできない。そのままファンロンはファフネリオンを締め付ける。
もがき苦しむファフネリオンは自身に絡みつくファンロンに向けて炎を吐く。自身の身体もろとも炎に巻き込まれるがファンロンの身体の方が焼夷している。
流石に虫の身体は火に弱いため、これには堪らずファンロンも締め付けを解いてそれと同時に擬態の効果も解除した。また、お互いが距離を取り見つめ会う。
「はあ……はあ……やはり、簡単には倒れぬか……一か八かやるしかないか……」
ファンロンは姿勢を正すと目を閉じ、意識を集中し始める。擬態対象のイメージ、できるだけ対象と同じ外見、力を出すための想像に全意識を能力へと注ぐ。
そして開眼し、その姿は光出す。
≪発動:千変万化の擬態≫
≪対象:ケルト=シグムント≫
≪擬態成功≫
光がはれた頃、それはケルトの姿で立っていた。
「ケルト、ぬしの力借りるぞ」





