59 アナンタ村
投稿ペースが遅くてすいません。
ケルトたちがガラクリオットでアミュラを救出している同時刻、ガラクリオットから西に離れたところに位置するアナンタ村はガラクリオットで起こっている事態など知らずに人々は農作業に明け暮れていた。
ここアナンタ村はガラクリオットと違い、人口50人くらいの小さな村である。アナンタ村の近くには襲撃されたマダンの里があったため、竜を従えた少女の話は人々の間で広まっていた。
しかし、この小さな村ではどうすることもできない人々は国家の兵士たちにそちらの問題を任せ、村人は生きるために作物を育てているのだ。人々は作物を育てる傍らで話す話題は今日もアミュラの件であふれている。
「ねぇ!! 奥さん!! 聞いた? あの村を滅ぼした厄災を操る女が逃げ出したんですって!! しかも……厄災を引き連れてよ!? おそろしいわよねぇ~~?」
「まぁ!? 何てことよ!! うちの村まで焼かれたらたまったもんじゃないよ!!」
小太りな竜人女性とやせ細った竜人女性が村の中心の井戸の前で井戸端話をしていた。そこへ一人の青髪でショートヘアの小柄な少年が通りかかり、女性たちのアミュラに対しての話を聞くと歯を食いしばり二人の間に割り込んでくる。
「やい!! またアミュラの事悪く言いやがって!! アミュラは何もしていないぞ!! このおばば!!」
少年は二人の女性に対して真っ赤な舌を出して挑発する。
「何ですって!? お前はまたそんなこと言って!!」
「大人の話に口だしするんじゃないよ!!」
「うるさい! うるさい!! お前たちにアミュラの何がわかるんだ!!」
少年が乱入してきたことにより、井戸端では子供vs大人二人の口論合戦が始まった。
その時、
「ノイ!! あんたまた何かやったね!!!!」
と、遠くから怒号を叫びながらこちらの方へ走ってくる女性がいた。
「げっ!? 母ちゃん!?」
近づいてくるにつれて、頭から生えた竜族特有の角がいい感じに鬼の形相のようになっているスタイルの良い青髪のポニーテールの竜族の女性が現れた。
「あんた!! また他人に迷惑かけて!! この馬鹿垂れ!!」
そう言いながら少年の頬っぺたをつねる。
「いででで!! だって、こいつらが!!」
「目上の人にこいつらとは口が悪いわよ!!」
そういって少年の頭を両手の拳で挟み込み、ドリルのようにぐりぐりする。
「あだあぁぁぁぁ!!!!」
それを見ていた二人の女性は相変わらずと言った面持ちで二人の方を見ていた。やせ細った女性が声をかけてくる。
「まぁまぁ、カリンさんその辺にしておきましょ? ノイの事はいつもの事なんだから」
「いいや奥様、この馬鹿息子にはこれくらいしないとわからないのよ。さあ、反省しなさい!!」
「い! や! だ!!!!」
ノイは母親の腕を掴み、ぐりぐりから抜け出すと急いで逃げ出した。
「母ちゃんの馬鹿ぁぁぁ!!」
「誰が馬鹿じゃ!! またんかこらぁぁ!!」
カリンが追いかけようとする素振りを見せるがノイの姿は既に遠くに離れ、そのまま見失ってしまった。
「全く、あの子ったら……」
カリンはノイが逃げていった方向を見ながらため息をついた。
ーーそして場所は変わり、ノイは母親のカリンから逃げ、村から見て西側の今は無きマダンの地へと続く道をとぼとぼと歩いている。
「みんな……アミュラの悪口ばっかりだ……」
下を向きながら歩いていると前に人がいる事に気付かずにぶつかってしまい、ノイは尻もちを着く。
「痛っ!」
「ああ、済まない。大丈夫か?」
ノイが顔を上げると、そこにいたのは大柄の体格をした黒い甲冑を身に纏った男性と思われる人がこちらに手を差し伸べていた。『思われる』と言うのはこの時、甲冑によって男の顔が隠れており、声質だけで男性と認識したからである。
ノイは差し伸べられた手を掴み、立ち上がる。その男は軽々と片手でノイの身体を持ち上げる。
「ありがとう、えーーと、ガラクリオットの兵士さん?」
「そんなものだ」
「1人で何してるんだよ……」
「ちょっと見回りをしていてね、最近よく噂になっているじゃないか、竜を操る少女がいるとか」
「そっか……やっぱりアミュラの捜索か……」
ノイは肩を落として下を向きながら止めていた足を進める。そして、男の横を通り、道を歩む。しかし、男は見過ごすはずがなく、振り向いてノイに声をかける。
「どうしたんだ?」
「いいよ、どうせ神様の尻に敷かれた頭の硬い人たちだもん……話なんて聞く耳なんて持つわけないさ……」
とぼとぼと肩を落として歩いていくノイを止めるべきか男は考えていると何処からか何かが近づいてくる音が聞こえた。ふと、男が上を見上げると大きな羽と鋭い大きな牙をを持った翼竜がノイに向かって飛び下かかってこようとしていた。ノイは下を向いているためこの状況に気付いていない。
「おい!! 危ないぞ!!」
そう言うとノイは顔を上げて自分に魔物が襲われそうになっている状況に今になって気づく。ノイは避けようとするどころか驚き竦み上がっていて体が固まってしまった。
「うわぁぁああああ!!」
「ピギャァオオオオオーーーー!!!!」
「クソがっ!! でりゃあああ!!!!」
男はノイとワイバーンの間に割り込み、男の右腕が黒く光り出す。そしてその腕はまるで大型の竜の前足のような形となり、ワイバーンに向かって振り下ろされる。
《破壊の黒龍爪》
爪によってワイバーンは真っ二つに引き裂かれる。さっきまで動いていたワイバーンはピクリとも動かなくなり、それとともに男の右腕も元の姿に戻っていった。
「大丈夫か?」
「……はっ!? あ、えっと、その…ありがとう」
どうやらノイは一瞬の出来事に理解が追いつくことができていないようだった。ひとまずノイを道の脇に座らせ、男は懐から木製の水筒を取り出すと蓋を取ってノイの前に差し出す。
「飲め、落ち着くぞ」
「……ありがと」
ノイは水筒を両手で受け取るとグイッと勢いよく飲む。中身は普通の水だったが入れたてなのか随分冷たくて、喉に潤う感じがした。
「ぷはっ……」
「落ち着いたか?」
「少しは……おじさん名前は?」
男はノイの隣に座り込む。
「おじさんじゃない……まだお兄さんだ。まぁいい……俺の名はファフネリオン、ガラクリオットで兵隊長をしている」
「へ、兵隊長!?」
「ファフネリオンで良い」
「あ、はい……あの、ファフネリオンさんもやっぱりアミュラの探索を?」
「ああ、その話なんだが……少し誤解がある」
「誤解?」
「実は、俺はアミュラは処刑するために探しているんじゃないんだ。我らが安全に保護するために探している。殺したいと思っているのは神であるケテルネス=ベンデルゼンだけだ」
「え!? なんで!? なんで神様が殺したがってるの!?」
「決まってるだろう。その方が都合がいいからさ。少なくともマダンはこのサーティ地方の一部であった。それを破壊されたのだ。神としても面子が保たんだろう。じゃあ、身分の高いものは何をすると思う? 犯人を決めつけて、処刑させれば万事解決……なんとも愚かな行動だ。だから、私は裏で保護しようと決めたのだ。たとえそれが自国の神に背いたとしてでも」
ファフネリオンはそういうと立ち上がり、ノイの肩に手を置く。
「君の名前は何て言う?」
「ノイです……」
「ノイ、君のさっきまでの発言からどうやらアミュラの味方になりたいと思っているな?」
男にそう言われたノイは少し顔を赤くさせながら首を縦に大きく振った。
「ならばノイ、君の力が必要だ。アミュラをいち早くこちらで保護するためにもっと情報が知りたい。君の家まで行って詳しい情報が聞きたいんだ。良いか?」
ノイはこの時、気が付いたら首を縦に振っていた。目の前に初めて自分の味方が現れたからだ。この男が無事にアミュラを助けてくれる。さっきの自分のように助けてくれるとノイは感じてしまった。そしてノイは上機嫌になりながら、ファフネリオンと言う男を村の自分の家に案内するのであった。





