56 投獄そして脱獄
俺たちもそのまま縄で手を巻かれ、拘束されると兵士たちに連れられこの国の中心部の奥へと向かわされた。そこにあったのはまるでアンコールワットのような大きな建物だった。無論、この国の神の城である。
城の中へ入り、地下への階段を降りる。長く深い階段を降りた先は広く、大きな牢獄がそこにはあった。光も射さないその牢獄はいつ死んだのか分からない竜人の死体が中に置かれたまま腐敗臭が俺たちの鼻に漂っている。一箇所、使われていない牢の前に着くと、竜人兵は重い牢の扉を開ける。
「中に入ってろ!」
竜人兵に押されて牢に入る。竜人兵は牢に鍵をかけると何処かへ行ってしまった。
「何やねんここ!! 臭いわ、寒いわ、気持ち悪いわ!! 早よここから出ようや!」
文句を言いながら体を動かそうとするが体を拘束されてしまっているため、その場で芋虫のように転がることしかできていない。
「俺、牢屋に初めて入った」
「誰だってそうだろ……」
楽しそうにしているユシリズをユウビスが呆れたようにつっこみを入れる。アマは寝そべったまま余裕の表情でおとなしくしていた。ガクトもおとなしくしているのだが目線を落としている。やはり、ガクトは何だかんだでアミュラのことが心配なのだ。取り敢えず、一刻も速くこの場から出て、アミュラを見つけだそう。
「みんな、今回は緊急事態だからこう言う時にこそ各々の能力をうまく使って行きましょう。ユシリズ、取り敢えずあんたの炎でこの縄燃やして頂戴」
「え? 良いけど、お前燃えるんじゃね?」
「こう言う時に私の能力が光るんじゃないの」
俺は心の中で、こいつの炎にだけは燃え死にたくないと強く願う。
<<『能力制作』の効果が発動、以下の能力を作成・取得しました>>
耐性:火炎無効
効果:火属性攻撃すべてを無効化する。
制作理由:燃えたくない強い思い
「よし! これでやけどしないね! ユシリズ良いよ!」
「待って、先に俺の縄から燃やす」
ユシリズが自分の縄を握るとそこから火がたち、握っていた部分の縄が焼け切れる。ユシリズは縄がほどけると俺を拘束している縄を握り、火で焼き切った。
「ありがと、あとはみんなの縄は私が切るから」
俺は一人一人の縄を剣で切り、全員の拘束を解いた。
「さて……あとはこの牢屋から抜け出すだけなんだけど、開くわけないよね」
目の前の牢屋の入り口に手をかけてみるがびくともしない。しっかりと鍵がかかっているようだ。外側には鍵穴が1つだけある。
「んん~~どうしようかな」
「ちょっとそこどけ」
後ろからガクトが出てくると腕を牢屋の入り口の隙間から出す。
<<発動:【身体変異】>>
すると、ガクトの指の爪が一気に細く伸びまるで糸状になるとそれを起用に鍵穴に通して針金の要領でピッキングを始めた。カチャっと言う音が鳴ると、牢屋の入り口が開いた。
<<【身体変異】の能力により以下のスキルを覚えました】>>
応用スキル:【鋼糸】【粘糸】
効果:自身の爪を変化し、形状を糸に変える。【鋼糸】は物理的に頑丈な糸を作り出す。【粘糸】は粘着力のある物体にくっつく糸を作り出す。
「開いたぞ、アミュラを見つけよう」
「なかなかやるじゃない。じゃあダン、索敵お願い」
「よっしゃ! いくで!」
<<発動:【非対称の目】>>
牢屋を抜けて、ダンを先頭にゆっくりと出口を求めて進んでいく。牢屋には死体のほかに俺たちのように捕まった者たちが助けを求めてこちらに手を差し伸べてくる者や座ってずっと祈り続けている者、無気力に倒れている者などこの牢獄の厳しさが見て分かった。
「助けてくれぇ!! こんなところで一生を過ごすなんて嫌だぁぁ!!!!」
「ああ……神よ……お許しを……」
「……」
見過ごしたくはなかったが自分たちの目的を果たす方が先決であるために無視を余儀なくしてしまった。
ゆっくりと歩き続けているとダンが歩みを止める。
「みんな壁際によるんや。この先に敵がおる。見える範囲では2人や」
ちょうど右に曲がる道から男の会話が聞こえてくる。
「あのガキはどこに置いた?」
「ケテルネス様が直々に話がしたいと言っていたから、玉座の間で十字架にかけた。いつでも処刑できるようにな」
どうやらアミュラはここの神の場所にいるらしい。いい情報を聞いた。探す手間が省けたということだ。しかし、進路的にはあの二人を突破しないといけないのだが……
「じゃあ、ここは俺が」
前に出てきたのはアマだった。アマは目を閉じて、意識を集中し始めると電流が体に流れ、電気が体に纏うとみるみる体が消えていく。
「はい、光学迷彩の出来上がり」
<<【電気支配】の能力により以下のスキルを覚えました】>>
応用スキル:【透明化】
効果:周囲に電磁場を発生させ、光の屈折を変えることによって自身を不可視化させる。
アマがいたところが若干歪んで見えるがかなり近くで見ないとわからないくらい視認ができない。これが透明人間というやつか。
「まじか、じゃ……じゃあそれで」
「で、だれが囮役する?」
アマの一言で全員が俺の方に目を向ける。
「え? 私?」
「俺は回り込んで他4人は隠れさせとくから。つまり君が適任」
「……はぁ、やればいいんでしょやれば!」
というわけで作戦を開始する。
俺は男2人に見える位置でペタリと座り込む。
「何者だ!?」
「誰だ!?」
「きゃあ♡ 乱暴しちゃいや♡」
俺は精いっぱいの可愛い(と思われる)声を出して注意を引く。すると男たちは腰につけていた剣を抜いて、こちらに近づいてくる。
「一体ここで何をしている!?」
「きゃ♡ そんな物騒なもの向けないでぇ♡ ねぇ? お兄ちゃんたちぃ……私、少し具合が悪くて、体も熱くて、何か変なかんじがするのぉ♡」
そう言いながら俺は、上着を1枚軽く脱いで、白くきれいな形の肩と鎖骨をあらわにする。
「ちょっと……見てくれないかしら♡」
<<発動:【魅了】>>
「「は、はい!! 喜んで♡♡♡」」
どうやら効果抜群だったようで、剣を下に落とし、目をハートにして鼻息を荒くしながら俺の方に抱き着こうとしてくる。
その時、2人の竜人兵の体に電流が走り、その場に倒れこんで気絶してしまった。後ろには透明状態のアマがいたらしく、優しいタッチで電流を流したようだ。透明化が解けるとアマが正体を現す。
「ありがと♡ アマ♡」
「キモッ」
「殺す♡」
冗談はさておき、物陰に隠れていた仲間を呼び出して、気絶した兵士を空いた牢屋に放り投げて先へと進む。兵士たちが居た道を進んでいくと上り階段を見つけた。階段を上がると木製の扉を見つけ、ゆっくりと開いていく。扉の向こうはどうやら外になっており、城の裏側のようだ。
取り敢えず脱出成功である。さぁアミュラがいる神のところへ向かおう。





