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女体化転生から始まる異世界新(神)生活〜TSした元男子大学生、第二の人生はチート能力【創造者】を手にして神の元で働く傍らでいつの間にか『神』扱いされる〜  作者: 霞杏檎
4章 黄燐ノ竜編

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55 絶対神政

「すいませーん注文お願いしまーす!!」


「はーーい! ただいま行きます!!」


「今日はとことん飲んでやるぜ畜生!!」


「あーー……今日もしんどかったぜ……」


 ドアを開けると、中はお客でいっぱいだった。主に街で時々見かけた金属鎧を身につけた兵士達が多く来店しており、円卓のテーブル席では酒の入ったジョッキを持ちながら仲間達と肩を組み、飲みの場を楽しむ者達もいれば、カウンター席で1人、酒に溺れて酔い潰れている人たちもいる。

 酒場内では注文が銃弾のように飛び交い、店員さん達の仕事も忙しそうだった。


「いらっしゃいませ!」


 1人の店員の女の子が俺たちの元に来た。


「大分お客が多いみたいだけど、今日は貸し切りなんですか?」


「いえいえ! 今日は国の兵士様達が多く飲みに来られているみたいで、もちろん普通のお客様も大歓迎です!ですが……団体の方々には申し訳ないのですけど、あいにく円卓のお席が埋まっておりました。カウンター席なら7人ちょうど開いておられますので、それでよろしければご案内しますよ?」


「じゃあそれでお願いします!」


「かしこまです!! それではこちらに!」


 店員の女性の後に続き、カウンター席にそれぞれ座った。もちろんアミュラはガクトの隣で一番隅に座らせる。


「いらっしゃいませお嬢さん方、今日はいかが致しましょう?」


 カウンター席に着くと前から品のある女店主が声をかけてくる。


「晩酌になんかおすすめは?」


「でしたら、当店自慢のサンドワーム肉の竜田揚げなんていかがでしょう。これ一品でお腹は満足していただけると思います」


「じゃあ、それで!」


「かしこまりました」


 ある程度、みんなが注文し終わったところで店内をもう一度見渡してみる。やはり、一般客は俺たちくらいで他は兵士たちだけだ。


「お客様、見ない顔ですねぇ? もしかして旅のお方ですか?」


 女店主が俺に声をかけてくる。


「はい、ちょっといろいろ有って旅をしてるんです。それにしても、今日はやけに人が多いですけど、今日は宴会か何かですか?」


 俺がそう聞くと店主は眉間にしわを寄せて、キセルで一服しだす。


「いつもこんな感じよ。まぁこの国に勤めてたら、酒や娯楽が欲しくなるに決まってるわ」


「それはどういうことですか?」


「……あなた、名前は?」


「私、ケルト=シグムンドです」


「そう、じゃあケルトちゃんで良いわね。これから私の言うことを外で言っちゃだめよ。お姉さんとの約束ね? この兵士たちはこの国の女神であるケテルネス様に仕える人たちで私も含めこの国の民はケテルネス様を信仰としてるの。ケテルネス様は私たちと同じ竜人なのだけど凄まじい能力から『破壊神』とも言われているお方です。なので、女神様はは乱暴者で自分勝手で強いものを好む。そして、そんな彼女が作り上げた政策が『絶対神政』よ」


「絶対神政?」


「要するに、神の命令は絶対であるという事よ。神が正しいと言ったら正しい。神がやれと言ったら実行する。そういってこの国を支配してるわ。中にはこの制度に反対しているものもいるけどこんなこと外で言ってたら……分かるわよね?」


 店主の最後の言葉に想像したくもないことを想像してしまった。俺は一気に鳥肌が立ち少し怖くなる。モリカとは真逆の独裁国家であることを知った時、街の人たちの疲れ切った顔を思い出した。


 上の命令は絶対。監視されている。そんな窮屈な国ならあんな顔をして当然だ。ここにいる兵士たちもそんな圧力に耐えて生きているのだと思うとこの国の竜人たちの精神力に感心してしまう。


「でも、お姉さん。こんなことここで話してて大丈夫なの?」


「平気よ平気! だってここにいる兵士たちは癒しを求めてここに来た者たちだらけ! そうよね! みんな!」


「「「「「おうよ!! 神政国家糞くらえだ!!」」」」」」


 店主が大きな声を上げると後ろから否定の声をあげる者たちがほとんどだった。どうやらみんな同じ考えのようだ。


「はい! お待たせしました! こちらサンドワーム肉の竜田揚げです!」


 店主との話で時間が経ち、俺たちのテーブルに大きな皿を奥から店員が運んできてくれた。


「凄い量ね……確かにこれならみんな満足するかも……」


 料理が運ばれてから、皆はいただきますの一言の後に竜田揚げを皿に分け、竜田揚げを頬張っていく。食べてみるとジューシーな衣と肉厚な身が空腹を満たしていった。

 ガクトがアミュラの分を皿によそって渡そうとアミュラの顔を見る。すると、アミュラは服を掴み、もじもじしていた。


「どうかしたのか?」


「……おトイレ行きたい」


「急いで行って来い……」


 幸いアミュラの席からトイレが近かったためガクトはついていかずにアミュラの分の食事を分けていた。俺たちは普通に食事を楽しんでいると勢いよく店の扉が開く。がやがやと盛り上がっていた場はすぐに静かになった。

 入ってきたのは黒い甲冑を全身に身にまとった兵士1人と周りにはこの場にいる兵士と同じ金属鎧を身にまとった者たちがずかずかと酒場に入り込んでくる。すると、黒い甲冑は酒を飲んでいた一人の兵士に声をかけた。


「お前らここで何やっている」


「こ……これは兵隊長! お……お疲れ様であります!」


「こんな事態だというのにお前ら、よく平気で酒なんか飲めるな。どうやら宴を楽しむ余裕があるというのだな?」


「あ、いや……これは、その」


「何なら、明日からもっと訓練をつけてやるよ。お前ら全員な」


 兵隊長と言われる男の一言で一気に男たちの顔が青ざめていく、どうやらこいつが嫌な上司の一人ってわけか……


 兵隊長はカウンター席まで来ると女店主がそそくさと兵隊長の隣へ行く。


「珍しいですわね? あなたがここに来るだなんて? それで? ご注文は?」


 男は店主の言葉を無視して話をする。


「今朝、サーティ地方の関所で里を崩壊させた竜が現れたとの報告があった。それに災厄を招くガキが竜とともに逃げ出し、この国に潜んでいるやもしれぬ。我らはこの国を守るため、厳重警戒態勢でこの街の見回りをしておるのだ。女、この顔のガキを見ていないか」


 男はお尋ね者の似顔絵が描かれた紙を店主に見せる。その紙にはアミュラに似た特徴のある顔が描かれていた。


「さあ、見てないわね」


「そうか……そう言えば、竜が襲撃してきた時、冒険者と名乗る輩が関所を通って行ったとの報告があったな。確か、女が率いていたパーティと言っていたが」


 そう言うと男は俺の肩に手を乗せてくる。鉄の感触が肩に伝わり、重みを感じてくる。


「心当たりはないかな?」


「さぁ、知らないわ、人違いじゃないかしら」


  俺は男の顔を見ずに返答する。その時だった。トイレの方から物音が聞こえてくる。そしてトイレの扉が開き、アミュラが出てきた。最悪な事に頭巾をつけ忘れてしまっており、顔が兵士たちに露になっていた。


「み、みんな……これは一体」


「ふむ、なら……これはどう言う事かな?」


 まずい……非常にまずい。悪いタイミングで出てきていてしまった。俺は焦って咄嗟に言葉が出てこなかった。


「だんまりか、こいつらは黒だ。おい! ガキとこいつらを捕まえろ!!」


 男が側近の兵士たちに声をかけるとアミュラに向けて2、3人の大男がアミュラを床に倒し、太縄で手を拘束する。


「いやっ!! 離して!!」


「アミュラ!!」


「まずい! 急いで……て」


 俺は抵抗しようとするガクトとユシリズの前に出て無言で止める。


「何で止めるだケルト! このままだと捕まっちまうぞ!」


「ここで暴れたらもっと大事になる。ここは指示に従って様子を見たほうがいい。現に私達は何もしてないんだから抵抗する理由はない。落ち着くの」


「……っ!! 糞ったれが!!」


ユシリズは近くにあった木製の椅子を蹴り飛ばし、粉々にする。


「連れていけ」


「はっ!!」


 男達はアミュラを拘束した縄を引いて外に出ようとする。


「助けて! ケルト!! ガクト!! みんな!!」


 ボロボロと大粒の涙を零して連れて行かれるアミュラを見て、ガクトは俯く。ガクトの拳は強く握られていた。


「さて、どうする? 抵抗するなら力尽くでも拘束するが?」


 気がつけば俺たちは兵士に囲まれており、四面楚歌の状況だった。もちろん、能力を使えば余裕なのだがそう言うわけには行かない。俺は冷静を装いながら前にゆっくりと出る。


「私達はあの子の無罪を信じてここまで来た!! 私達は抵抗はしない。しかし、無罪の主張は続ける!! だから私達を好きなところへ連れて行きなさい!!」


  俺は囲んでいる兵士と黒の兵隊長に向けて胸を張って言った。俺の言葉に兵士たちは圧倒され後ろに下がっていく。


「ほう……面白い。恐れがないと言うのか……」


「だって、無罪だからね」


「……分かった。お前ら、こいつらを連れていけ!」


「はっ!!」


 俺たちは手に縄を巻かれ、そのまま兵士たちに拘束されてしまった。




 


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