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女体化転生から始まる異世界新(神)生活〜TSした元男子大学生、第二の人生はチート能力【創造者】を手にして神の元で働く傍らでいつの間にか『神』扱いされる〜  作者: 霞杏檎
2章 地位確立編

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30 紅茶よりも赤い頬

 一方その頃ケルト達とは別にいた5人は城の来客者専用の休憩室にいた。


 休憩室と言ってもさすがはこの地方一番の豪邸と感じられるおしゃれな壁紙に包まれた部屋にはレースがかかった高級なベッドや側面に宝石が埋め込まれたまるで宝石箱の蓋でも取ったかのようなテーブル、その上には1セット数十万はするだろうアンティークじみたティーセットが置かれている。

 壁にはまるでゴッホなのかはたまたサルバドール=ダリなのかどちらを比べてもよく分からない絵画が飾られている。


 そしてこの部屋で一番目を引くのがプラチナ製の鎧の甲冑だった。壊したら一生かけてでもお金で払うことはできないくらいの物だ。そんな高級な物に囲まれた5人はリベアムールに「ゆっくりして行くと良い」と言われていたがゆっくりとできる環境ではなかった。


「なんやこの部屋!? 高級品ばっかりやん!! これ全部売ったら一体いくらになんねん!?」


 ダンが部屋中を散策し、宝の宝庫に目を輝かせていた。4人はそんなダンにあきれていたが取りあえずガクトとユシリズは椅子へ、アマはベッドへ、ユウビスは地べたに座った。


「お、このベッドふかふかだな。腰に悪そう」


 腰を落とすだけ軽く弾むその弾力のあるベッドにアマは少々驚いていた。高級品に触れて驚いているのはもちろんアマだけではない。


「紅茶を頂きたかったのだが……このティーセット……割ったら……」


 ガクトがティーカップを一つ取ると、両手で恐る恐るティーカップをあらゆる角度から見始めた。


「そんなこと考えるんじゃねえ!! 縁起でも無いだろ……」


 ユシリズは高級な物に触れまいと椅子の上で体育座りをしていた。


「こんなに高級な物があるなんて、やはりこの国屈指の神様の城の中って感じだな」


 ユウビスは落ち着いた口調で地べたに座り部屋をぐるりと見回していた。

 そんな余裕の様子のユウビスにユシリズが話しかけた。


「ユウビスは怖くないのか?」


「何が?」


「こんな高級な物が並んでるところにいてさ。俺はこう言う高級品とかはからっきし苦手でさ……昔、じいちゃんの壺を割ったことがあるんだ。その壺が高級品でね、それ以来……あまりこう言う物には触れないようにしてたんだ」


「お前は大雑把だからこう言う繊細に扱わなきゃいけない物の扱い苦手だもんな」


「うるせえよ」


「それにしても、ケルト大丈夫だろうか」


「まぁ、負けてしまったショックもあるし、今は疲労もあるだろうからな……安静にさせとくのが今は良いのさ」


「そうだな……」


 そんな2人の会話が切れるのと共にこの部屋のドアが開いた。入ってきたのは黒髪ロングヘアで顔がキリッとした若いメイドだった。手には湯気が上がっている水差しを持っていた。


「失礼します。私はメイドのカルマと申します。ケルト様のお仲間の皆様、どうですか? この部屋の方は気に入っていただけましたか?」


「ああ……まぁ、さすがリベアムール様だと思う部屋だとは感じますね」


 ガクトが顎に手を当てて、メイドからは目を背けて苦笑いで言った。するとメイドはニコッと笑うとまっすぐテーブルの方へと向かってきた。そして手慣れているかのように水差しの中に入った熱湯を茶葉の入ったティーポットに入れると紅茶を作り始めた。ティーポットから漂う紅茶の甘く渋味の混ざった香りは瞬く間に部屋中に広がっていった。そして、ゆっくりと5つのティーカップに均等に注がれていった。ティーポットから姿を出した紅茶は綺麗な真紅の色で白いカップを染めていく。


「こちらこの城の庭で採れた紅茶で作ったレッドヴィーナスと言う紅茶です。ほのかな甘さと渋さで飲みやすくメイド達がブレンドした茶葉を使っています。よろしければお飲みになってください」


 システムが起動した。


<<物質解析中>>


<<解析完了>>


<<解析結果は以下の通りです>>

 品名:レッドヴィーナス


 分類:合成茶葉


 材料:汎用ハーブ類少々、レッドハーブ


 特徴:様々なハーブを混ぜ、レッドハーブで着色してできた紅茶。複数のハーブを混ぜることで風味がバランス良く調整され健康に良い。レッドハーブでより綺麗な赤色を作り出している。


 綺麗に並べられた紅茶達を見て、5人はティーカップを手に取り、それぞれそれを口に運んだ。


「これは……旨い」


 ガクトが目を見開いて言う。


「なんやろ……なんかこう、優しい味がするなあ」


 ダンも少し落ち着いた口調でその紅茶を飲み続ける。


「俺はあんまり紅茶は飲まないんだけどこれは旨い、そう思うよなユシリズ?」


 ユウビスがユシリズの方を向くと一滴も紅茶が減っていなかった。

 顔を見ると険しい顔のまま紅茶をにらみつけている。


「ユシリズ? どうした?」


「俺、紅茶苦手……」


「お前紅茶苦手だったのかよ!?」


「うん……」


 ユシリズが横目でちらっと見るとアマのティーカップに入っていた紅茶は空になっていた。


「すいません、おかわりを」


「おまえ早くね!?」


「旨いぞこの紅茶。お前も飲んでみ?」


 ユシリズはアマに促されると苦々しい顔をしつつも出された物は頂くことを決心し、目を閉じて恐る恐る紅茶を口に含んだ。そのままごくっと喉越しを鳴らして口に含んだ分を飲むとティーカップテーブルの上に置いた。


「どうだ?」


 ユウビスが聞くとユシリズはユウビスの方に顔を向けた。


「これ……上手い……何でだ!? 何でこんなに旨いんだよ!!」


ユシリズがそう言うとまたティーカップを乱暴に取り、残った紅茶を飲み干してしまった。

その様子を見ていたメイドはクスクスと笑っている。


「お気に召されて良かったです。実はこの紅茶をケルト様にもお持ちしようと思ったのですが、紅茶だけでは寂しいものがあると思いましてちょっとした紅茶に合うお菓子をお作りしたいと思ったのです。皆さまならケルト様の好みをご存知だと思い、この紅茶の試飲も兼ねてお尋ねしに参ってきたのです」


「ケルトの好み? んーー……あいつ……何が好きなんだ?」


 ガクトは首を傾げる。


「あいつは甘党だった気がするな、お菓子好きだったし」


 アマは前の世界でケルトはスイーツを誰よりも美味しく食べていたのを思い出した。ケルトはこのグループで唯一の甘党だったのだ。


「甘いお菓子なら何でもいいかもな、あいつなら何も文句言わずに食べるから」


 ユウビスの言葉を聞いたメイドは笑顔の表情だった。


「でしたら、皆様にお願い事がございます。私達がお菓子をお作りする間にこの紅茶をケルト様のところへお見舞いの品として持って行って頂きたいのです。あなた方が行っていただけたらケルト様は喜ぶと思いますよ」


ガクトは何かを察したかのように鼻で笑う。


「分かりました、この紅茶の入れ方は俺たちでもできますか?」


「ええ、簡単ですよ。普通の紅茶の要領でお作りください」


「ありがとうございます。じゃあお前ら行くぞ」


ガクトが振り向き皆に声をかけるとはいはいと各々腰を上げた。


「そろそろケルトちゃんのお見舞いにでも行かんとな。寂しがってるかも知れへんしな」


ダンの言葉にそうだなと返し、この部屋から出て行こうとしたとき、メイドは紙袋をガクトに渡した。


「これは?」


「皆様が飲んだ紅茶と同じ茶葉でございます」

 

そしてメイドはガクトの耳元に近づいて囁いた。


「皆さんがケルト様を元気付けてあげて下さいね」


そう一言だけ言うとメイドはそれではとだけ言い残し、部屋から出て行ってしまった。

ガクトは紙袋を握り、皆でケルトのいる医療室へと向かった。

そして、医療室に着き、ドアを開けると沢山の白いベッドが並ぶ部屋の1番奥の隅にケルトがベッドの上で毛布をかぶって丸くなっていた。ここで皆は一斉に勘違いするであろう。試合に負けて元気が無いのだろうと。

皆はケルトのいるベットの近くに行くと声をかける。


「ケルト、見舞いに来てやったぞ。まぁ、その、負けてしまったのはしょうがないんだ!元気出そうぜ!!」


 ユシリズが声をかけるも反応が返ってこない。皆はどうケルトに声をかけようか悩んでいる様子だった。そんな空気に耐えかねたユシリズはベッドの毛布に手をかけた。


「うじうじしてんじゃねぇ!! 起きろ!!」


 そう言い放つとユシリズはケルトの毛布を剥ぐように引っ張り、毛布をとった。


 すると、そこには顔を耳まで赤くし、顔を隠したケルトの姿があった。少し、半泣きになった瞳を微かに見せて顔を隠している。


「み……見ないで……」


 その震えた一言と今のケルトの状況はあまりにも皆には予想外の展開であったため、驚きを隠せなかった。


「大丈夫か!? そんなに悔しかったのかよ!?」


  ユシリズは心配しケルトに更に近づく。


「いや……あの……」


  ケルトがボソッと呟くがそんな言葉は皆には届いていなかった。


「おいおいここまでだったとは予想外だったな……」


「紅茶入れてやろう紅茶!!」


 アマやユウビスはケルトの話を聞かずに話を進めていく。

 近くの小さなテーブルにあったティーポットを使ってガクトが紅茶を作り始める。


「この紅茶めっちゃ美味いんやで!! お前も飲んでみ、元気になるで」


 ケルトにはダンの言葉が暖かく感じられたような気がした。さっきまでかなり高ぶっていた感情が落ち着きだし、改めて皆の方を見る。自分のために心配してここまで騒いでくれる者たちはそうそういない。そんな光景を見て、俺は落ち着きを取り戻すと一言だけ感謝を述べて笑った。


「……ありがとう」


  騒がしい医療室の外側のドアで1人盗み聞きをしている人物に対して、通りかかったカルマが声を掛けた。


「盗み聞きですか? リベアムール様?」


「盗み聞きとは人聞きが悪いぞ。……お前は気が利いたメイドだ。妾の城の者として褒めてつかわすぞ」


  神の言葉を受けたメイドはふふっと微笑んだ。


「いえいえ、私はメイドとして当然のことをしたまでです」


 その言葉にリベアムールはそうかとだけ答えた。

 そして2人は医療室に目をやる。


「それにして、ケルトは良い仲間を持ってるな」


「はい、素直で優しい子たちです」


 医療室から聞こえてくるバタバタとした様子がドア越しにでも分かる。


 2人微笑みながらその様子を見守っていたのであった。


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