十話~
事故現場に来てみたが事故が起きてから随分経っていた事もあり、収穫のないまま帰ろうとした時知った顔を見かけた。
私が出産した病院の看護師だった。
私の事を見ていた気がしたが私が看護師に気づくと去っていった。
追いかけるか迷ったが、子供は母が見てくれていたしなんだか不思議と気になったので少しだけ追いかけてみる事にした。
やがて、看護師のアパートに着いた。看護師が部屋に入るのを確認してから看護師の部屋のドアの前まで行ってみた。
ここまで、あくまで興味本位で追いかけてきた。看護師がなにか事故について知っているという確証があった訳ではなかった。
しかし、扉の前でなにかを感じた。私が鎖で繋いでいたあなたはここにいる気がした。
あなたの身体の前に立っても全く感じなかったあなたの気配、あなたの存在を感じた。
チャイムを鳴らす、看護師が出てきた驚いた顔をしたのは一瞬、感情が一切見えない面のような顔になった。看護師を無視して中に入る。扉が開いた時から私の中であなたがここにいることは確信に変わっていた。
あなたは見えなかった。当たり前だわ、だって貴方の身体は病院にある。
ここに貴方がいるとしてもそれは一般的に魂などと呼ばれているものだ。
しかし例え見えなくても私にはあなたがここにいる事がわかった。
看護師を問い詰めようと後ろを振り向くと看護師は包丁を持ってこちらを見ていた。
私に向ける視線は病院で私を見ていたこちらに笑いかける目ではなく、見開いた目で私をただひたすらに凝視していた。
動く気配を感じさせずに一歩目を踏み込みナイフを向け看護師は突進してきた。
見事にナイフは私の腹に突き刺さった。当たり前だ、私は格闘技経験もないただの一児の母だ。
痛かった。けど陣痛の方が痛かった。母は強しを早速実感している……暇はなくもう一度刺そうと包丁をわたしの腹から看護師が抜いた瞬間痛みを我慢して気力で相手を突き飛ばし逃げる為に外に飛び出した。
看護師は追いかけてくる気配はなかったが私は腹から血をだらだらと流しながら逃げ続けた。
そして私は自分で救急車を呼んだところで意識が途切れた……。




