始まる前の世界
フッと気付いて周囲を見渡しますぞ。
何処かの街道……いえ、見覚えがありますな、フィーロたんと愛のランデブーをした街道ですな。
ではあの時のループに飛んだのかと思いましたがフィーロたんはおりません。
ステータスで登録しているフィロリアル様を確認するのですが誰もおりませんぞ。
何より服装が異世界に来た直後の私服なのですな。
???
一体どうなっているのですかな?
場所はともかく状況がまったく想像出来ませんぞ。
何分、ループ直後はどうなっているのか推測しなければいけないのですぞ。
ですがまるで想像が出来ませんな。
フィロリアル様がおらず、近くにお義父さんも居ない。
考えられるのはフィロリアル様を育てる前でお義父さんを助けるために行動中だったとかでしょうか。
いえ、シルトヴェルトに行くループだったとしてもその場合は夜になって居たはずですが生憎と昼間なのですぞ。
エクレアを置いて行って追いかけるにしても場所がおかしいですな。
ハッキリ言って今までのループ内でこんな状況になった事は一度もありませんぞ。
何かしらの判断材料を探すべきですぞ。
槍の中に何かドロップ品などが無いかも確認しましたがありません。
一体、何処のループに俺を置いたのでしょうかな?
ループする前に聞くべきですな。ボーナスステージと言ってましたが何処か教えろですぞ。
何やら思わせぶりな態度でしたので答えなかった可能性は高すぎますぞ。
絶対に車軸にしてやりますぞ。
ついでに野郎の尻に刺してやりますかな? いえ、それはご褒美になりそうですな。
何にしても情報収集をしてから判断しましょう。
「ポータルスピア!」
と言う訳で手始めにメルロマルクにポータルで移動する事にしました。
メルロマルクに到着した俺は城下町を確認しますぞ。
特にコレと言った変化は見受けられませんな。
正面から城に乗り込んでクズを脅しに行くのも良いですが下手に暴れるとお義父さんに怒られるかもしれないのですぞ。
なので偵察とばかりにクローキング状態で城内を確認しますぞ。
ふむ……よく分かりませんな。
おや? 城内でクズを見つけました。
赤豚は何処でしょうかな?
先手必勝でぶち殺してやるのも良いですぞ。
そう思ってクズに付いて行くと……何やら会議室のような所で誰かと話をするようですぞ。
「もうすぐ学園の長期休暇期間で帰って来るマルティの為に珍しい食材を使った料理を食べたいと手紙が来ているので用意しようと思っている」
「……」
相手は……なんでしょうかな?
見た事があるような無いような、見覚えがあるけれど初めて会ったような覚えのある人物ですぞ。
「なんじゃ? これくらいもダメと抜かす気か!」
クズが何やら機嫌を伺うような台詞を言ってますぞ。
「貴様とて娘が居る身であろうが。そんな事もワシは許されていないと言う気か!」
「……わかり申した。用意しましょう。私の領地の者に漁に出られるか声を掛けてみよう」
「うむ! 任せた。ああ、あの子の顔を早く見たいものじゃ」
相手の返事にクズは満足したと言った様子ですぞ。
そうして相手が部屋から出て行くと……おや? 部屋の前にエクレアがいるようですぞ。
「……」
命令を待っているかのようですな。
「今回は私が行く。無理を承知で頼まねばならないのだからな。お前は城の方に居てくれ」
「は!」
と、エクレアは相手の命令に素直に従っているでようですぞ。
「折角の領地へ戻るのです。どうかしばし羽を休めて下さい」
エクレアがそう言うと相手は微笑んで居るようですぞ。
「ああ、あまり留守には出来ないが羽を伸ばすとしよう」
ううむ……? エクレアが当たり前の様に城内を歩いていると言う事は三勇教の騒動後という事ですかな?
いえ、クズが改心した後は元より波の出来事の平和な時に来てしまったのかも知れないですぞ。
城内を探しても婚約者がおりません。
どうにもピンと来ないのでお義父さんの領地の村に行ってみましょう。平和になった後ならば基本的にあの村の復興をさせてますからな。
していない場合はシルトヴェルトに向かったループである可能性が浮かびますぞ。
何分、お姉さんが生きているのを確認出来ていなかった頃なのですぞ。
そんな訳でお義父さんの領地兼お姉さんの村へと行きますぞ。
……?
「いらっしゃい。旅の方ですか?」
お姉さんの村へと行くと村人らしき人達がいました。
こんな村人居ましたかな?
見覚えの無い連中がチラホラいますぞ。
ですが俺の知らない人員が来るのはよくある事なので卒無く返事をしますかな?
「ちょっと立ち寄ったのですぞ」
「そうですか。小さな村ですがどうぞごゆっくり」
とは言いつつ村人は警戒気味に去って行きました。
俺はテクテクと村を適度に歩き回りながら確認をしておきます。
ふむ……? 復興した割にはそこそこ古い建物がありますな。
一体いつ頃の時期にループしてしまったのか分かりませんぞ。
波が起こってからどれくらいでしょう。
「失礼しますぞ」
「はい? 何でしょうか? 旅の方」
少々引っかかりますが気にせず聞きますぞ。
「波が起こってどれくらい経ったでしょうかな?」
「はい? 波ってなんの事でしょう? この前の少々海が荒れた頃の事でしょうか?」
……?
どうにも話がかみ合いませんぞ。
「ではお義父さん……盾の勇者はどこに居るか分かりますかな?」
「盾の勇者様? 是非ともお会いしたい伝説の人物ですよね。何処かで私達を見守って下さっているのでしょう」
この反応は知らないと言う事ですかな?
単純に宗教的な神様的な返事ですぞ。
槍の精霊、一体何処に俺を置いたのですかな?
遙か未来ですかな?
いや、クズやエクレアのそっくりさんが未来にいるとでも?
「こんにちわ!」
「はいはい。こんにちわ、ラフタリアちゃん」
っと、そんな話をしている横を……幼いお姉さんが楽しそうに駆けて行きました。
「ブブブー!」
「やっほー」
そこに居るのはキールとお姉さんのご友人ですぞ。
どちらも幼い姿ですぞ。
いえ、幼いお姿であるのは別に何も不思議では無いですが……波の話をしてもピンとこない村の者たちですぞ。
「ブブ! ブブヒ?」
「ボール遊び!」
「おいかけっこ」
「海で泳ぐのも良いなー」
「ブブー!」
「ブー!」
と、キール達は何をして遊ぶかを決めて村の外の方へと向かって行きますぞ。
「おーい。ラフタリア。元気なのは良いけれどあんまり遠くに行かないようにね」
「あ、お父さん。はーい」
と……そこでお姉さんと同族らしき大人の男性が和やかな笑みで手を振っておりました。
……?
お姉さんがお父さんと呼ぶ……?
どう見てもその人物はお姉さんとの血を感じさせる耳や尻尾、顔立ちがありました。
ですが……お姉さんの実の両親は波で確か亡くなったと聞きました。
ハッとなって波の到来時間を確認しますぞ。
――118:32
まだ波は起こる……いえ、もしかしたらこれから起こると言う事という事なのですかな!?
と言う訳でどうやら俺は……まだこの世界が波を認識する前に、来てしまったようですぞ。
お義父さんすら召喚されていないこのループで俺は……何をすべきなのですかな!?




