聖武器の相性
「ウサギの精霊ですかな? ウサギは俺の専売特許! 負けませんぞ!」
ウサウニーとしてお義父さんを魅了するのですぞ!
「まだ張り合ってますよこの人! いい加減にして欲しいもんですね」
「ふん。お前に何が出来るのですかな? やれるもんならやって見ろですぞ」
「別に争う必要は無いですけどね。いえ……あなたが恐れる本線の世界から巣立ったあの子に通報するのも手ですね」
と言う言葉に俺の脳裏にお姉さんが浮かんできましたぞ。
「ボクも槌の精霊としての適性が無いわけじゃないですね。貴方をぼこぼこにする手助けくらいは……できますかねー」
槌……お姉さんの逞しい姿が思い出されます。
フィーロたんのお姉さんをするだけあって、凄まじいお方なのですぞ。
「くっ……何なのですかな! お姉さんに頼るのは卑怯ですぞ!」
俺が妙な精霊を指さしていると槍の精霊が苦笑しやがりましたぞ。
「さて、彼は何でしょう? 当てて見たら?」
「ですから! この人は全部外すってわかってるでしょうが!」
「わかりませんぞ! モグラとかですかな? それとも口調から樹がリスーカから精霊にランクアップでもしたのですかな!」
「あの皮肉屋と重ねて来るとか屈辱も良い所ですよ! こっちがどれだけ苦労したと思ってんですか!」
ギャーギャーやかましい精霊ですぞ。
「日が暮れるから言いますよ。ボクはテオドールですよ!」
「テオドール……誰ですかな?」
「ええぇ……この人は……もう忘れたんですか!」
誰でしたかな?
薄ぼんやりな印象ですぞ。
「まあ愛称で呼ばれる事の方が多かったしねー。一度変に覚えると別の名前しか出てこないって所でしょ」
「ああもう……お陰でここに至った訳ですけど屈辱も良い所ですよ! 面倒ですからボクは相手しませんからね」
じゃ! っと精霊は他の精霊の所へと飛んで行きましたぞ。
遠目で見ると話し合いの指揮をしようとしているように見えますな。
「思い出せない訳じゃなく別の名前で君は覚えているようだね。北村元康」
「だから誰ですかな?」
「テオって呼べばわかるかな? いや、君の場合はウサギ男って覚えていたっけ」
「ウサギ男ですかな?」
フッと浮かんできましたぞ。
「奴は精霊種だったのですかな?」
「まあ当たらずとも遠からずと言うのが答えかなー……少しばかり薄めだったけど今回のループで色々とね。こっちも驚きの要素が無いわけじゃないんだけど」
「何なのですかな?」
「うーん……正直に言えば君や彼が知らなくても良い事ではあるんだけど、それじゃあむず痒いだろうから話すと……彼の魂が結構特殊でね。ああ、今の彼とは既に分かれてるというか輪廻の中に再度入って行ったから別の存在なんだけど」
既にこの段階で訳が分かりませんぞ。
「君にわかりやすく言うなら……精霊種を前世に持った魂の存在だった、かな?」
「それが何かあるのですかな?」
「そうだなー、勇者とかになりやすいのもあるけど、このループで判明した技術があるでしょ? 君がモグラって呼んでるルーモ種達が研究してた奴」
言われて思い出しますぞ。
ああ、ありましたな。
ラフミが分析してましたぞ。
「過去に存在していたけれど、この世界を滅茶苦茶にした奴の所為で失われてしてしまった技術がある。俺の生きていた頃には『ハーモナイズ』『シンクロ』とも言われていた精霊種と契約者の力を引き上げる技術だったんだよね」
ウサギ男の説明からなんでこの技術の説明になるのですかな?
俺が首を傾げていると槍の精霊がため息をしながらさらに続けましたぞ。
「技術が失われても、その存在まで完全に消えてしまった訳ではないって事さ。彼の魂は元より体の方も因子があったのが大きくてね。彼、どんな精霊種や人ともハーモナイズが出来る万能属性持ちだったんだよ。だから研究に参加している内に、器に他の精霊種から貰った力が蓄積して死後、こうして精霊として形を成せたという訳だ」
まあミックスジュースみたいに混ざった混合精霊だけどね。
と、槍の精霊は説明したつもりになってますぞ。
「俺が君を所持者として選んだのには相性があるんだ。君の前世は精霊種とは関係ないけどね。俺の場合は君みたいなタイプと相性が良いんだよ」
割と皮肉としてね……と勝手に自嘲してますがこれは怒るべきですかな?
「話が飛んでいてまるで分りませんぞ」
「ちょっと飛んじゃってるのは蛇足と言えば蛇足かな? まあ聖武器クラスの精霊になると所持者の相性もあるんだよ。俺を所持するのに必要なね。じゃないとこっちに負荷が掛かって上手く力を引き出してあげられないんだ」
俺の話にもつながるのですかな?
「比較なんてそんなに意味のある事では無いんだけど、そうだなぁ。剣の勇者の天木錬がわかりやすいかな? 剣の聖武器は独特の価値観があってね、それに適合する者が所有するとその出力が大きく出るんだ」
そうなのですかな?
……考えてみればこれまでのループで錬の強さ、というよりスキルの威力に幅がある様な気はしますな。
ループによる変動、性格の差異によって出力に差があったという事かもしれません。
「もちろん、俺達聖武器クラスの精霊が選定した高潔さとかいろんな要素が絡むよ? とはいえ転生者と君たちが呼んでた腐った魂は論外。あいつ等に無理やり所持されるのはかなりの過負荷が掛かる」
割と本気で衰弱しかねない拷問なんだよね。あれ。
などと愚痴って来ましたが、どうやら聖武器や七星武器の内情を語っていたようですぞ。
「所持者を勇者なんて呼んでいるんだ。勇気の無い者が持てる道理はないって事さ」
その形や方向性は各々の精霊によって様々だけどね、との補足が入りました。
やはり精霊とやらも色々と面倒な連中みたいですな。
「前回の世界で弓の勇者の川澄樹……彼が良い例だね。彼は思想や魂の形を変えて尚、他者を守る為に戦った。闇の中、絶望の中で尚、光を失わなかった」
あの手の早い、すぐに攻撃する樹ですな。
「腐った魂が彼と同じ状況になった時……誰かを守る為に勝てる見込みのない、己よりも強い者に挑めるかな? 己を犠牲にして、身を削る様な消耗の中で奴等は歩んでゆけるかい?」
「なるほど、無理でしょうな」
いつのループかは忘れましたが、短い期間で我慢できずに復讐に来て返り討ちに合う様な連中ですからな。
あの世界の樹は何年も何十年も……それが今日この日だったとしても、自分が死ぬその時まで戦う覚悟があったと聞いております。
悪人を一人でも多く道連れにするとか息巻いていましたからな。
お義父さんが大分心配して配慮していたので覚えていますぞ。
「実の所、俺達精霊は選定した勇者にしっかりと世界の理に合わせて各々力を引き出す方法を説明としてシステムで見せて居たんだけどさ。長年の戦いの合間に波の主犯に仕込まれていた代物があって土壇場で説明不足、接続障害を起こされてしまって割と本気で焦ったね」
「それってどういう事ですかな? いや……もしや」
ふっと俺の脳裏に最初の世界でのカルミラ島での出来事が蘇って来ましたぞ。
「お? さすがに理解が出来るか。そう……複数折り重なった世界の強化方法の共有が出来るはずなのにできなかったのはそれが原因。あの女神を自称した神を僭称する主犯、ガチすぎて本気で焦ったよ」
何やら赤豚の本体は色々と仕込んでいたという事のようですぞ。
「どういうことですかな! もっと細かく言えですぞ!」
「もう済んだ事だし再接続が上手く行ったから別に気にしなくても良いとは思うけど? 蛇足ではあるよ?」
「良いから教えろですぞ」
「そうは言ってもね。波が起こるまでに起こったいろんな出来事や戦いの合間に、聖武器や七星武器にあいつが障害を起こす事を仕込んでいたようでさ。調べたら君が刺された時にも仕込まれててダブルパンチだった。他の連中も同様だったよ」
うっ……脇腹に痛みが走ったような気がしましたぞ。
刺された時に武器の力を引き出しきれない仕掛けを施されていたのですかな?
「君の前の所持者を選定した時にも戦った相手とか、槍に入れた物とか、いろんな物に仕込んでたみたいでさ。実は転生者やその息が掛かった奴とつばぜり合いとかした時とかにも感染してたみたいでさ。強奪じゃなくても仕込まれていてね……あの手この手で暗躍されていて厄介極まりなかった」
俺より前の槍の所持者の頃から仕込んでいたと。
赤豚本体は何処までやらかしていたのでしょうかな?
それくらい徹底しないといけなかったとかでしょうか。
どちらにしてもクソですぞ。




