第六十三話 「偽りの魔法」
なんとか勝てた…。
正直、油断したら普通に負けてた。
攻撃をした後に少し隙があったからその隙をついて倒せた。
隙がなかったら負けていたと思うな…。
2回戦でこのレベル…想像以上にレベルが高いな。
さてと、3回戦目が始まるまでに色々と考えておこう。
悠長にしていられない、このままだと普通に負ける…。
その後、リヒトは次のアナウンスが入るまでの間、敵の戦闘スタイルや、使う魔法を考え、その対策を練っていた。
思いつく限りのことを考え、色々を対策を練れたリヒト。
「受験番号315番、受験番号315番、出番、出番」
よしきた。
次はどんなのが来るのか…。
ゲートを通り、再び大きな歓声に包まれる。
3回目ともなるとさすがに場に慣れてきたリヒト。
反対側からもゲートが開き、選手が出てきた。
「よろしくね、僕はボイドっていうんだ」
「リヒト、アークストン・リヒト」
へぇ、この子、アークストン家の神童か。
これは楽しみだ。
「それではCブロック28番、試合開始ぃ〜!!」
——ん?
動かない…それどころか魔法すら使わない…。
どういうこと?
ふふ、さぁ来なよ神童。
とりあえず遠距離で様子を見よう。
「——レヴォルテ」
「リヒト選手の強力な一撃ぃ! ボイド選手は果たしてどうなったぁ?!」
——いない…どこに行った?
「残念、神童さんは僕の気配に気づくことなくやられてしまう」
「おぉ〜っと!! リヒト選手、ボイド選手に気付けず、刺されてしまったぁ!」
な、ど、どうして…。
あの時、姿と同時に気配が消えた、、そして刺されるまでその気配に気づけなかった。
普通背後にいたら分かる…! なのに気づけなかった。
まるで、刺されるまでそこにいなかったような…。
「気づけていないようだね」
「冥土の土産に一つ教えてあげるよ」
「僕はとある機関の実力者でね、情報を扱う分野でさ、情報戦や情報操作は得意中の得意なんだ」
「あとは僕の魔法かな、、」
何を、言って…。
「僕の魔法はね、情報操作ができるんだよね」
「情報操作といってもそれだけじゃない、時や場所、事象の情報すらも変える」
「な、何をいって…」
「この試合が終わったら治癒魔法で全回復する、僕は情報分野に精通しているからね、他の人にあまり情報を渡したくないんだ」
「忘れてもらうね?」
「虚像:何もなかった」
さてと、これで魔法を解いてっと。
「リヒト選手、ボイド選手との取っ組み合いに負け、倒れたぁ!」
「勝者、ボイド・スカーレット!」
ふふ、誰も知らない、リヒトと僕は取っ組み合いをしていたんじゃない。
取っ組み合いは全て嘘偽りさ、みんなが見ていたのは僕の虚像。
「う、うぅ…」
「お目覚めですか、リヒト様」
「うぅ…リ、リーブ?」
「はい、リーブです。 試験、お疲れ様でした」
「そっか、負けたのか…」
あれ、、俺、どうやって負けたんだっけ?
確か背中を刺されて、、そのあとは? 出血多量で倒れたのか?
思い出せない、、あぁもどかしい!
「リヒト様、帰りましょう、七賢法エリス様から転移石を貰っています」
「これを破ると、周囲の人や物を指定した場所に転移できるようです、すごいですね!」
「そうだね」
ん〜、思い出せない…。
「それでは、、えいっ!」
——リヒト様、負けましたか…。
戦った相手は、、ボイド・スカーレット…。
彼の魔法は攻略の仕方を知らなきゃ絶対に勝てない。
リヒト様が負けてしまったのは残念です…。
「——選手! 大きい一撃だぁ!」
私は私のするべきことを、、。
リヒト様とリーブさんは転移石で帰れるでしょう。
「つきました、正門の前ですね」
「落ち込むことはありません、リヒト様以上に相手が強かっただけなのです」
「1級魔法使い試験は次は4年後にあります! その時は必ず合格しましょう!」
「うん、、そうだね、気持ちを切り替えよう…」
俺もまだまだ子どもなんだな、いつまでもいじけてばかり。
なんだ、、リーブの方がよっぽど大人じゃないか。
今は8歳の子どもだが、中身は40のおっさんなんだ。
いつまでも、引きずっていじけてる場合じゃないな。
「屋敷に戻りましょうか」
「いや、少し散歩しない? リーブ」
「あ、あぁはい」
「突然どうしたんですか? 急に散歩なんて」
「まぁ、気分を切り替えるなら散歩かなぁと」
リヒト様、行動が少し年相応ではないですね…。
歳をとると、散歩だけでも色々考えたり、気持ちを切り替えたりできるいい機会になるんだよな。
正直、自分の力は強いと思っていた、いや、違うな。
ある程度の実力に若い年齢で行けたからこそ、自分の実力に驕りを持っていたんだ。
俺よりも強い人はたくさんいる、でも、、人間界へ行った時、俺の実力はかなりのものだった…。
戦闘をすれば必ず褒められ、それが俺の認識を狂わせるには十分だった。
世の中には俺よりも強い奴はたくさんいるのに、自分が無意識のうちに自分を上位の存在の箱に入れてしまっていた。
間違った認識はそう簡単には変えられない、だからゆっくりと、時間をかけて認識を正さないと。
そのためには、、。
「リヒト様、だいぶ遠くの方に来てしまいましたね」
「え? あぁ、うん、そうだね」
「そろそろ戻りましょうか」
「うん、そうだね」
いつの間に、、。
少し考えていただけだと思ってたけど、思ったよりも深く考え過ぎたようだった…。
その後、来た道を引き返し、屋敷に入ったリヒトとリーブ、本館の扉を開け、中に入ると数人の従者が掃除をしていた。
「ただいま帰りました」
声がした方に全員一斉に振り向く、すると、すぐに従者は動き出す。
「——あ…あ…あ…」
「リヒト様、リヒト様が……」




