空間崩壊 ― 世界の終焉
桜の花びらが、空へと舞い上がる。
まるで時が逆流しているかのように――花弁たちは枝へと戻り、春が“再生”の形で終わりを迎えていた。
学園の中庭がゆっくりと、白い光に侵食されていく。
次に崩れるのは研究塔。その壁面を走る光のコードが音もなくほどけ、虚空に溶けていく。
そして、最後に――記憶の海。
幾千の恋と涙の残響が波紋のように広がり、すべてが“ひとつの白”へと統合されていった。
ルカ(叫ぶ):「リリア! まだだ、戻ってこい!」
声は、崩れゆく空間に吸い込まれ、ひどく遠く聞こえた。
彼が伸ばした指先は、光の粒に分解されながら、形を失っていく。
リリアは振り返り、微笑んだ。
その顔には涙も恐怖もなく、ただ穏やかな安らぎがあった。
リリア:「ありがとう、ルカ。
あなたがいたから、ここまで辿り着けたの。」
光が彼を包み、ルカの姿はノイズとともに淡く滲んで消えていく。
彼の最後の微笑だけが、空間に優しく残った。
世界が静かに息を止める。
風も音も、すべてが凍りついたような静寂――
リリアはひとり、崩壊の中心に立ち尽くしていた。
空から降る光の粉。
それは、かつて彼女が生き、恋し、赦した全ての記憶の欠片だった。
彼女は静かに目を閉じ、胸に手を当てる。
鼓動の音が、世界の心臓と重なって響いた。
リリア(囁き):「……これで、いいの。
終わりは、始まりの形をしているから。」
その言葉とともに、
光はさらに強く輝きを増し、
世界という名の夢が、静かに幕を下ろしていった。




