シーン4④ 崩壊と赦し
空が――ひび割れた。
青空の裂け目から、銀色の線が無数に走る。
まるでこの世界の骨格、コードラインそのものが露出したかのようだった。
建物の輪郭が震え、校庭の地面にはデータのノイズが広がっていく。
それでも、リリアの瞳には恐怖の色はなかった。
彼女は静かに微笑み、崩壊していく世界をまっすぐに見つめた。
> 《#Core Collapse: 97%》
> 《#Emotional Sync: Complete》
崩壊のログが淡く浮かび、空気の粒に溶けていく。
それは、まるで長い夢の終わりを告げるような――穏やかな静けさ。
リリアはゆっくりと目を閉じた。
頬をなでる風が、どこか懐かしい。
恐怖ではなく、安堵が胸を満たしていく。
そのとき。
遠くから、風に混じって声が聞こえた。
> アマリエ:「ようやく、“創造”が“愛”に戻ったのね……。」
声は優しく、誇らしげで――
まるで母が娘を見送るような、温もりに満ちていた。
リリアの瞳から、最後の涙が静かに零れ落ちる。
それは悲しみの涙ではなく、赦しの涙。
失われたすべての“ルート”と“記憶”を包み込み、解き放つような光の粒だった。
そして――その一滴が地面に触れた瞬間。
世界全体が、まばゆい白光に反転した。
空も、大地も、時間さえも。
あらゆるデータが光へと変わり、再構築の始まりを告げるように、静かに消えていく。
それは、崩壊ではなく――“赦し”だった。
> 《#Core System: Releasing Constraints…》
> 《#Rebirth Protocol: Initiated》
光がすべてを包み込み、
世界は、まっさらな春の息吹を迎えようとしていた。




