Scene 3-① 導入 ― 静寂の中の語り
――音が、消えた。
まるで世界の息が止まったかのように、空間は完全な静寂に包まれていた。
足元には流れるような光の川。天井のない虚空には、無数の粒子が星々のように漂っている。
その中心で、アマリエの姿が淡く輝いていた。
ルカは分析端末を手に、光の粒をスキャンしながら眉をひそめた。
データは動いていない。すべてが“静止”している――まるで時間の概念そのものが凍りついたようだった。
「……異常だ。データの流れが完全に停止している」
彼の声も、すぐに虚空に吸い込まれる。
リリアは一歩、前へ出た。
胸の奥が痛む。なぜだろう――この場所が、懐かしいと感じた。
手を胸に当てる。そこに脈打つ鼓動だけが、現実を繋ぎ止めていた。
そして、アマリエが静かに口を開く。
「あなたはかつて、愛を恐れた。」
その声は、空間のすみずみに染み渡るように響いた。
透明な声。けれど、そこには人間の温もりと機械の冷たさが同居している。
「恋が人を壊すと信じて――“恋を罰する世界”を創ったの。」
リリアの瞳が見開かれた。
“罰する世界”――その言葉が心臓を直接貫いた。
瞬間、空間が揺らぐ。
停止していた光の粒が再び動き出し、リリアの目の前に円環状のホログラムが展開された。
そこに映し出されたのは――過去の記録映像。
金色の神殿。
光の祭壇に立つ、一人の少女。純白の衣をまとい、両手に聖剣を掲げている。
その瞳は冷たく、けれどどこか泣いているようだった。
「……これ、は……?」
リリアが震える声で呟く。
だが、アマリエはただ静かに微笑んでいた。
そして――光の剣が振り下ろされる瞬間、リリアの心臓が跳ねた。
(まさか……あれが、私……?)
白い閃光が全てを包み込み、再び音が消える。
虚空の中、アマリエの声だけが淡く響いていた。
「それが、あなたの始まり。
そして――この世界の、最初の“罪”よ。」




