第11話:選択の罠 シーン1:導入 ― 目覚めと錯覚
まぶしいほどの白。
それは光ではなく、情報そのものが飽和した空間。
世界の輪郭は消え、時間の流れすら存在しない。
リリアは、まるで夢の途中で息を吸い損ねたように、
ゆっくりと瞼を開いた。
――息が、ない。
肺に空気が入らないのに、苦しくもない。
体温の感覚も、音の概念すらも薄れていく。
リリア(独白):「……ここは、どこ……? 違う……これは、“私の中”?」
声が響くのではなく、思考がそのまま空間に投影された。
言葉が音ではなく、データの波紋として拡散していく。
白の中心に、ひとつの文字列が浮かび上がった。
《#Choice_Sequence: Initiated》
《#Judgment Mode: Active》
その瞬間、世界が“意味”を取り戻す。
彼女の前に、無数のウィンドウがゆっくりと開いていった。
ホログラムのように浮かぶ半透明の枠。
そこには、懐かしい――いや、痛ましいほど見覚えのある名前たち。
①アレンを信じる → 処刑
②ユウを庇う → 消滅
③ルカを救う → 自壊
④レオを選ぶ → 崩壊
白い空間が、微かに揺らめく。
ひとつひとつの選択肢の背後で、
アレンの瞳、ユウの微笑、ルカの沈黙、レオの笑い声――
過去の記憶が断片映像のように再生されていく。
リリア(小声):「……これって……私が選んだ、結末……?」
ウィンドウの文字が淡く瞬き、彼女の瞳に反射した。
その光は、まるで“選択を迫る視線”のようだった。
震える指を伸ばす。
だが、どの光にも――幸福の気配はなかった。
リリアは息を止めたまま、
まるで“自分の罪を触れようとしている”かのように手を下ろした。
リリア(震える声):「選べない……。だって、どの“恋”も、誰かを壊す。」
白い空間が、ゆっくりと赤に染まり始める。
光が警告のように点滅し、無音のはずの空間に低い唸りが響いた。
《#Loop: Reaching Terminal Phase》
《#Judgment Tree: Fully Unlocked》
リリアの瞳に、絶望の色が反射する。
その光の奥で、遠く、誰かの声が――確かに彼女を呼んでいた。
アマリエ(残響):「ようやく、あなたは“愛の罪”に辿り着いた。」
白の世界がひび割れ、データの欠片が花びらのように舞い散る。
リリアは震える唇で、誰に届くとも知れぬ言葉を零した。
リリア:「……私の、選択は――」
その瞬間、光が弾け、全ての音が断罪のように途切れた。




