第5話 季節の巻き戻り シーン4:崩れる日常
(BGM:歪んだオルゴールの旋律。途中でノイズが混ざる)
翌朝――。
教室に差し込む光が、どこか不自然だった。
昨日と同じ、春の朝。
けれど空気の流れも、生徒たちの声も、ほんのわずかに遅延している。
窓の外では、桜の花びらがゆっくりと舞い上がっていた。
――落ちるのではなく、逆再生のように空へと戻っていく。
ミナ:「ねぇカイト、今日も屋上でお昼にしよっか!」
カイト:「もちろん。桜の下で食べるのが、やっぱり一番だよな。」
その会話が終わると、再び――
ミナ:「ねぇカイト、今日も屋上でお昼にしよっか!」
カイト:「もちろん。桜の下で食べるのが、やっぱり一番だよな。」
まったく同じ笑顔、同じ声、同じ角度。
時間が巻き戻されては再生される。
リリアは机の上に両手を置き、息を詰めた。
彼女の視界の端で、風景がノイズの粒となって崩れていく。
リリア(心中):「世界が、繰り返してる……。
“恋”を、やり直すように。」
教室の蛍光灯が一瞬パチパチと点滅。
黒板のチョーク文字が溶けるように消え、赤い文字が浮かび上がる。
《#Loop: Initiated》
《#Next Phase: Judgment Cycle》
その瞬間、全員の動きがぴたりと止まる。
空気の流れすら、凍りついた。
リリアだけが、ひとり立ち上がる。
教室の外を見やると、窓の向こう――
桜の木がポリゴンのように分解され、ピンク色のデータの粒が空に吸い込まれていく。
リリア(心中):「“恋の世界”そのものが……裁かれようとしてる。」
BGMが停止し、残響だけが残る。
教室の壁がわずかに歪み、画面がホワイトアウト。
《System Alert:Judgment Mode 起動準備》
――そして世界は、静かに息を呑んだ。




