第5話 季節の巻き戻り シーン2:再演 ― 「同じイベントの繰り返し」
(BGM:第1話と同じポップな学園テーマ。だが音質は微かに歪んでいる)
放課後。
西日が差し込む中庭には、風に舞う桜と笑い声。
それは――リリアが確かに一度見た光景だった。
(ここ……この構図、全部……同じ。)
ミナが、不良たちに囲まれている。
制服の襟を掴まれ、怯えた声を上げる。
「や、やめてください……!」
その瞬間、影の向こうから颯爽と現れる一人の少年。
風に揺れる髪、夕陽にきらめく瞳。
カイト。
――まるで“ヒーローの登場”を再放送するかのように。
カイト:「君を泣かせるなんて、見過ごせないな。」
その台詞。
その間。
その笑顔。
すべてが、前と一字一句同じ。
リリアは唇を噛み、足を一歩前へ。
しかし――
リリア:「……また、同じセリフ。」
空気が震えた。
風が止み、桜の花びらが空中で静止する。
「え……?」
彼女の伸ばした指先から、淡い青のノイズが走った。
まるで“この動作そのもの”が、世界の許可を得られていないかのように。
――そして、空間全体が一瞬で凍結する。
ミナの涙も、カイトの笑顔も、風の粒も。
すべてが映像データのように静止した。
《Access Denied : Observer_002》
《System Priority : Judgment Mode Transition》
リリアの耳に、低く電子的な警告音が鳴り響く。
胸の奥が締めつけられる。
彼女の存在そのものが“拒絶されている”感覚。
リリア(心中):「……私の干渉が、弾かれてる……!」
画面がノイズで揺らぎ、桜のピンクが白く反転していく。
フレームの端に、赤いコードが流れ始めた。
《Loop Integrity:72%》
《Judgment Protocol:準備中》
彼女の視界がぐにゃりと歪む。
声を上げようとしても、言葉が空気に変換されない。
そして――
映像が“再生ボタン”を押されたように、世界が巻き戻しを始めた。
風が再び吹き、ミナの声、カイトの台詞が、また同じ順序で流れ始める。
カイト:「君を泣かせるなんて、見過ごせないな。」
(BGMが再び流れ出す。完全なループ再演)
リリアはその場に立ち尽くす。
笑顔を浮かべるクラスメイトたちの中で――
ただひとり、止まったままの心臓の音を聞いていた。
(この世界は、もう――私の“舞台”じゃない。)
(画面フェードアウト。BGMがフェードダウンし、わずかな電子ノイズだけが残る)




