アマリエとの最終対話 ― 自己との対峙 ①
夕陽が、学園の屋上を金色に染めていた。
手すりの影が長く伸び、どこまでも静かな風が頬を撫でていく。
錆びたフェンスが、かすかに「きぃ」と鳴った。
リリアはその音を背に、ゆっくりと空を見上げた。
春の名残を帯びた風が、髪を揺らす。
桜はもう散ったはずなのに、どこかでひとひら、光のような花びらが舞った気がした。
胸の奥が、少しだけ痛む。
けれどそれは悲しみではなく、どこか懐かしい――“再会”の予感。
その瞬間、背後の空気がふっと揺らめいた。
淡い光が集まり、人の形を描く。
その輪郭はやがて、柔らかな金の髪と純白の衣を纏う少女の姿になった。
リリアは息を呑む。
それは、何度も夢の中で見た姿。
何度も心の底で会話を交わした、“もう一人の自分”。
「……アマリエ。」
声に出した瞬間、胸の奥がじんわりと熱を帯びる。
アマリエは静かに微笑んだ。
その表情は、あの日よりも穏やかで――まるで長い時間の果てに、ようやく安らぎを得たようだった。
「お久しぶりね、リリア。」
その声は風と溶け合い、柔らかく世界に染み込んでいく。
リリアはゆっくりと振り返り、彼女の瞳を見つめた。
そこには怒りも悲しみもなく、ただ“赦し”だけがあった。
――アマリエ。
それは神であり、システムであり、そして“かつての自分”。
リリアの魂の奥底に刻まれた、原初の存在だった。
風が二人の間を通り抜ける。
空は朱から白へ、そしてどこまでも透明に溶けていった。




