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情報処理が追い付かず思考停止に至りました

「ちょ、君、待って………って!」



入り組んだ細い路地裏を身軽な体捌きで駆けていく小柄な影を、必死に追いかける。スピードを落とすことなく壁を蹴って軌道を無理矢理変えたり四点着地し転がって衝撃を逃がしたり、前世でいうパルクールをやってのける相手に対し、こちらは純粋に大人の足の長さとスピードで勝負しているが、角ではどうしてもスピードをセーブしてしまいがちなので、直線で距離を詰めている。結果、距離が縮まったり遠退いたりという状況が続いていた。



切られた肩紐を口に咥え、いっそ見惚れそうなほどの身のこなしで逃げていく影に、どうしたものかと逡巡しつつも走り続けていたカイトの死角から、突如ばちんと光が弾けたあと、耳障りなダミ声で「ぐえっ」と呻くのが聞こえて振り返った。



「………えっ……」



地に伏せて潰れている男のそばに、短剣が落ちている。どういうことだと視線を巡らせれば、包囲するように厳つい顔の男たちに囲まれていた。しかし、その表情は驚愕で呆けている。



「な、何が起きた?!」



ーーーいやそれこっちの台詞。



言いたい言葉を飲み込みつつ、状況把握のためさらに視線をさ迷わせるカイトの視界に、先程まで追いかけていた小柄な人影がゆっくりと歩み寄ってきた。



「ただのお人好しかと思ったら、魔法が使えるとはな」



ちんまりとした身体に似つかわしくない尊大な物言いに、カイトは目を瞬かせた。



「……えぇっと、君? この柄の悪い男たちに使われてるんじゃないの」



「まさか。こいつらは俺の部下だ。俺にとっちゃこの辺りは庭同然でね」



「…………」



沈黙が降り落ちた後、カイトは盛大に息をついた。



「……あのねぇ、いくら子どもといえど、やって良いことと悪いことの区別くらいつかないと逮捕されちゃうんだよ?」



「………は?」



「あ、こら、馬鹿野郎!」



「大人なのにこんな小さな子どもに悪いこと教えてる人たちは黙っててください」



なにやら小柄な身体に似つかわしくない低音が零れたのに重なるように周囲の男たちが声を上げたためカイトは気づかない。代わりに周囲の男たちを叱責してから彼は小さなその相手に向き直った。



「こんな柄の悪い人たちとつるんでないで、もっと全うな仕事をしなさい。まだまだ若いんだからーーーあれ、聞いてる?」



ぶるぶると俯いて震える小柄な相手に、カイトは首を傾げた。そんなカイトからむくつけき男たちがそろそろと距離を取っているのだが、目の前の相手に意識が向いている彼は気づかない。



そんなカイトの目の前で少年の耳の辺りからじわじわと植物が生えてきた。目を瞠るカイトの耳に、真っ赤な顔を上げた相手は絶叫した。



「俺は、もう成人済だああぁぁぁっ!」



雄叫び一発、飛び込んできた相手の右手から植物の根が乱舞しながら飛来する。思わず顔を庇ったが、その前に不可視の壁がその攻撃を撥ね飛ばす。



結果、周囲から離れていた男たちの方への根が軌道を変えて襲来し、対抗手段を持たない男たちは絶叫しながら回避しようと苦心している。



「ちっくしょお! ここまで馬鹿にされてるのに攻撃通らねえとかざけんじゃねぇぞ! とっとと消し炭になりやがれっ!」



飛来する植物は鞭のようにしなり結界へぶちあたり、軌道を逸れて周囲へ甚大な被害を与えているが、一向にカイトには届かない。最初の攻撃こそ驚いたが、ここまでくれば誰の仕業かは分かってしまったので、カイトは至って冷静だった。



「レン、いるんでしょ?」



『もちろんキュー』



肯定の返事と共に、物陰からルイの背にのって、四匹が姿を現した。



『カイが孤児院から離れたのを見て追いかけてきたのー』



『カイト兄に合流しなかったのは、そいつらが何を企んでるのか聞き出そうと思ったからピィ』



『幸い、レンの魔法を通るような攻撃手段はなさそうだったから安心だと思ったにゃー。もしかしたら何か手がかりが手に入るかもと思って静観したにゃー』



『今日中に結論出すにはそれがいいと思ってたのー』



『最初は悩んだけど、三日間悩んでるの見てたから解決するなら少しだけ我慢すべきと思ったキュー』



誉めて誉めて、と嬉しそうに尻尾を振るルイに、偉いでしょうと言わんばかりのレン、アルやネロもどこか誇らしげである。



そんな四匹に和んでいる間にも、結界の向こう側から罵詈雑言を吐き散らす合法ショタは、ついに魔力が切れたのかへたりこんだ。



「こんな、こんなにも太刀打ち出来ないなんて……! なんで、なんで……っ」



泣き濡れるショタは叫ぶ。



「なんでこんなやつにティオさんを取られなきゃいけないんだ…………っ!」



「………………………は?」



情報処理が追い付かず、カイトは暫く硬直した。




というわけで新キャラ登場。今回は合法ショタです。口調とっても悪いけど。



さて久しぶりの更新です。少しずつ少しずつ加筆してようやく投稿できました。仕事に忙殺されてますが忘れてません。ただ遅筆なだけです。



しかしながら仕事が過密すぎて更新頻度ががくっと落ちたことには申し訳なさばかり湧きますね。でも、仕事量は半端ないけど、人間関係は直属の上司がとても良い方だからか同僚も過密なスケジュールの中でも周りを気遣えるような方たちばかりだから……。そんな職場なかなか見つけらんないし。



まぁ、自分の身体が壊れない程度に手抜きしつつ、可能な限りのんびりやってます。自分の身が一番可愛いもの。



そんなこんなで漸く一話。一、二時間後にもう一話自動投稿になってます。



それでは皆様、読んでいただきありがとうございましたo(*⌒―⌒*)o

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