「昔はかっこよかったのに・・・」このセリフは反則です。
「勝者、櫛神琥珀!!」
『キャーーーーーーーーーーー!!』
司会の叫び、会場からの大歓声。そうか、勝ったか・・・。
「はは、やっぱヒーローは強ぇな。」
バタン。
俺は両足で立っていられなくなった。そして、そのまま意識はそっと遠のいていった。
「あれ?櫛神君倒れてない?」
一緒に観戦していた友達が琥珀を指差している。
「ホントだ。櫛神君倒れてる。」
周りの人もそれに気づき始めた。
「あっ!救護班が。櫛神君大丈夫かな?」
琥珀が担架で運ばれていく。
「あのバカ!やっぱり。」
私の足は自然に動きだしていた。
「ちょっと、茉莉奈。どこ行くのさ?」
友達の言葉も耳に入らない。私は走った。
一刻も早く琥珀のところへ。
ガラガラ。
「琥珀!」
私は保健室の扉をノックもせずに開け放った。
「うわっ!びっくりした。ったく、ノックぐらいしなさい。」
保健室の乙藤先生が驚いていた。でも、今は、そんなこと、どうでもいい。
「それより先生!琥珀は!?」
再び大きな声を出したからか、先生は片目を瞑って耳をふさいでいた。
「!けが人が寝ているんだから、もう少し静に。」
おそらく琥珀のことだろう。
「スイマセン。・・・それで、あのぉ~・・・琥珀は?」
私はなるべく声を抑えてひっそりと聞く。
「大丈夫だ。たいした怪我もなかったし、勝ったから気が抜けたんだろぅ。」
いや、違う。本当は・・・
「あのっ!・・・そのぉ・・・」
私の言わんとしていることが分かったのか、
「はぁ、やれやれ。なるべく安静にしてやれよ。」
それだけ言い残すと、先生は保健室から出て行った。
「さてと。」
私はスグに琥珀がいるベッドへと向かった。
「zzz。」
琥珀は寝ている・・・フリをしていた。長年一緒だったから簡単に見破れた。
「アンタ、やっぱり使ったのね【ヒーロータイム】を。」
琥珀は黙って返事をしない。
「前より持続時間が短くなってる。アンタこの約半年でどれくらい使ったわけ?」
「・・・・」
やはり琥珀は黙ったままだった。
「アンタはいいかも知れないけどね、心配するこっちの身にもなって・・・」
「それでも、今回だけは譲れなかった。」
琥珀が初めて口を開いた。
そのまま体を起こそうとしていたが、
「先生が安静に、だってそのまま寝てな。」
しかし、琥珀は、
「大丈夫。もぅ意識もちゃんとしてる。」
そういって琥珀は上半身を起こした。強がってはいるが、まだ顔色が悪い。
「そぅ・・・。で、アンタ。最後にいつ使ったの?」
まだ具合がよくないことは分かっているが、それには触れない。おそらく、琥珀自身もそう望んでいるだろうから。
「最後に使ったのは1ヶ月くらい前。不良に絡まれている女の子を助けるために・・・。」
なんとも琥珀らしぃ使い方で・・・。
「そう。で、そんときはどれくらい持ったの?」
「だいたい15分くらい。なんとか家までは持ったけど、正直やばかった。」
「15分っ!?」
昔は1時間持つことだってあったのに。たった半年でここまで・・・
「ここんところ一気に短くなってる。【ヒーロータイム】もあと何回できるか・・・。」
【ヒーロータイム】琥珀がそう呼んでいる能力。それは隔離性同一性障害、つまり【2重人格】の特異体によって起こるものだった。
普通の2重人格の場合は乗っ取る形でもう一方が表にでるのだが、琥珀の場合は両方が互いを認め合い、共存しているのである。
琥珀はもう片方をヒーローと呼び、最大の親友と言っている。
ヒーローと呼ばれる人格は常人の数倍の身体能力をもっており、特に動体視力は常人の約20倍である。
そして、【ヒーロータイム】その正体は、琥珀がヒーローからその能力の一部を借りた状態である。
【ヒーロタイム】中はヒーローの能力(主に動体視力)を限られた時間だが使用することが出来るのである。だから、会長の奥義もかわしきったのである。しかし、その制限時間も最近短くなっているらしい。
そしてメリットばかりでなくデメリットも存在する。
【ヒーロータイム】中は体の操作は完全に琥珀がするのだが、ヒーローから能力を引き出すので、言動の節々にヒーローの陰が現れるのである。さらに【ヒーロータイム】中の記憶は二人で二分されるため記憶が曖昧になり、ヒーローの身体能力に耐えられない琥珀の体は【ヒーロータイム】が終わると、しばらく動けなくなるのであった。
そして、私が何より気になっているのが。
「ねぇ、こんなこと今更なんだけどさ?・・・」
「ん?」
琥珀はカッコイイと思っているんだろうけど・・・
「【ヒーロータイム】って名前。ダサくない?」
・・・・・。
一瞬の沈黙。
「なッ!なんだと!」
リアクションの遅さに呆れつつも。
「だって、事実じゃない。なによ【ヒーロータイム】って、小学生じゃあるまいし。」
「考えたのは小学生のときだ!それにあん時はお前もカッコイイって言ってたじゃねーか!」
確かに私はカッコイイと言ったがそれは小学生のとき。
「アンタねぇ。今いくつよ?」
「うぐっ!。16です・・・」
悪態をつかれて著しくテンションの下がる琥珀。いじめすぎたかな?
「ふふふ。」
思わず声が出てしまった。
「何笑ってんだよ!」
琥珀が顔を真っ赤にしている。なんだか可愛く見えてきた。
「まぁでも、その【ヒーロータイム】に私はなんども助けられているんだけどね。」
そう私はなんども琥珀のそれに助けられていた。
「そりゃ、ヒーローだからな。」
琥珀は自慢げに言う。
「でも、感謝しているよ。ほんとうに。特に小学4年生のときは。」
「あぁ!あれな。あんときゃ頑張ったぞ俺。」
琥珀もそれで思いしたのか、あん時はあーだ、こーだ、と語っていた。
そう、あれは小学4年生のころ。
朝7時。
目覚ましの音で私は目を覚ました。
また、学校に行かなきゃならない。
行きたくない。
この頃、私はいじめにあっていた。
理由は私がアニメとかに詳しくないからだろう。今の時代、アニメを知らないやつはいじめられるのだ。
「いってきまぁ~す。」
私は親に心配をかけないようにいつも元気に振舞っていた。「いってきます」もわざと陽気に言う。
玄関を出た私はいつもとなんら変わらずに登校する。暗い表情のまま。
「おはよーす!。」
後ろから私のランドセルをバンッ!と叩きながら挨拶する子がいた。幼馴染の櫛神琥珀だ。
「うん。おはよう。」
私は無理にでも明るい顔をする。琥珀にも心配をかけまいと私はいじめられているのを隠していた。クラスが離れているからまだバレてはいない。
「そういや今日、俺のクラス1時間目図工なんだよねぇ~。絵の具セット学校に置いててよかったぜ。」
「ダメだよ。ちゃんと持って帰らないと。」
そんな他愛ない会話が私にはとても幸せだった。
でも、その幸せは二年生の教室の階までだった。
「そんじゃ俺のクラスこっちだから。んじゃな!」
「うん。また・・・」
ダメだ。明るくしないと。
琥珀が教室に入っていくのを見送ると、私は自分の教室へと向かう。
自然と足が重くなる。表情も暗くなってしまう。
自分の教室だ。入りたくない。でも、入らないと・・・。
ガラガラ。
私は教室へ入った。挨拶をしても意味がないのでしない。
いつもどうり私は自分の席に向かう。
私の机の上には落書きがしてあった。でも、これもいつもどうり。
クラスの連中がにやにやしながら私の席を取り囲む。いつもどうり。
「お前、まだ学校来るんだな。正直ウザイんだけど。」
「そうそう、アンタがいると場の空気が悪くなるんだよね。」
クラスのやつらは私を罵倒する。いつもどうり。
「おい、なんか言ったらどうなんだよ!」
私はなにも答えない。
「てめぇ見てるとイライラするんだよ!」
胸倉を掴まれる。それでも私は無表情。
「うぜぇって言ってんだろ!」
そのまま投げ飛ばされる。ガシャンと机や椅子に崩れ落ちる。いつもどうりだ。なにも変わらない。私もずっと無表情。
「おいっ。こいつのランドセルひっくり返せ。」
主犯格の男子生徒が子分連中に命令する。
ガシャガシャガシャ
ランドセルがひっくり返され中身があたりに散乱する。いつもどうり・・・ではなかった。
今日に限って母さんからもらったお守りの指輪が入っていたのだった。
案の定見つかる指輪。
「なんだこれ?はんっ!お前みたいなゴミにこんなのは勿体無ぇ。俺がもらってやるぜ。」
男子生徒は指輪をまじまじと見つめながら指にはめたりはずしたりしていた。
「・・かえ・・し・・て。それは・・・お母・・さ・・・・ん・・にもらった・・・。」
私は男子生徒の指に手を伸ばす。
「あぁん?お母さんにもらった?はん!そんなに大事なら取って来い!」
男子生徒はそのまま指輪を窓からなげすてたのだった。
「!!」
声が出なかった。私はそのまま泣き崩れた。
「おい、見ろよ。こいつ泣いてやがるぜ。ハッハッハッ。」
『ハハハハ』
クラス中が笑ってる。私は泣いている。
もぅどうしていいか分からなくなった。ただ泣くしかなかった。
その時・・・!
「おぉ~い茉莉奈~。絵の具セットやっぱり家に置いたまんまだったし、貸してくれ・・・・・・って・・・・・。」
琥珀の両目が見開く。
「おい、お前ら・・・なにやってんだ?なんで茉莉奈が泣いてんだ?お前らなにしたんだ?」
琥珀の声は震えていた。
「おぉ。櫛神か。みろよこいつ。傑作だとおもわねぇ・・・」
「なんで茉莉奈が泣いてんだって聞いてんだ!!!!」
クラス中に響く大きな声。
あまりの気迫に思わずたじろく生徒たち。
「なっ、なんだよ。いきなり大きな声出して?」
「お前ら茉莉奈に何をしたぁーー!!」
さっきを上回る大きな声だ。
「なんだよ?お前、こいつの味方すんのかよ?」
「お前・・・・ら・・・許さ・・・な・・い!」
琥珀の声はギリギリ聞き取れるがほとんど分からないくらい震えていた。
「ハンッ!ヒーローのつもりか?カッコつけてんじゃねーよ!」
琥珀の周りを生徒が取り囲む。
「ヒーロー・・・か。そうだな、俺はヒーローになってやる。お前らみたいな悪は全員、このヒーロー様がやっつけてやるぜ!」
琥珀はこっちをみて笑ってくれた。
「なっ!誰が悪だって?お前ら!やれぇ!」
「茉莉奈を泣かせたお前らは許さない。さぁ、かかって来い。今から俺がヒーローの時間、そう、【ヒーロータイム】のスタートだ!」
この後のことはあまりよく覚えていない。
気がつけばクラス全員が倒れていて、立っているのは琥珀だけだった。
下校の時間。
私は一人で帰っていた。
あの後、呼ばれた先生が琥珀を連れて行き、私が事情を話してクラス内のいじめが発覚した。
琥珀はまだ帰ってこない。
私は下校時間がとっくに過ぎているのに門の前でまっていた。が、琥珀は帰ってこなかった。
私は仕方なく一人で家路についていた。すると・・・。
「よっ!どうした?暗い顔して。」
また私ランドセルを叩く。振り返るとドロだらけの琥珀がそこにいた。
「へへっ。悪りぃな。探すのに手間取っちゃって。」
照れ笑いしながら差し出されたその手には私の指輪が収まっていた。
「これ・・・どうして!?」
「ったく、こんな小せぇ指輪なくしたら見つけんのも一苦労だなぁ。だから、もう失くすなよ!大事にもっとけ!」
琥珀はいつもの笑顔でニッと笑う。
「うぅ・・・あ、あり、ありがと・・・う。」
頑張って涙をこらえようとしたが無理だった。
「うわぁーーーん。」
私の両目からは涙が溢れていた。
「おいおい、泣くなって。嬉しい時は笑うんだぞ。」
琥珀は私の頭をそっと撫でてくれた。
「う、・・・うん。」
鼻声ながらに返事をし、私は今出来る最高の笑顔を作った。
その笑顔は上手くなかったかもしれない。不細工だったかもしれない。けど、琥珀は、
「うん。笑った茉莉奈の方がずっと可愛い。」
そう、いって笑ってくれた。
この日から今日までずっと琥珀は私の【ヒーロー】なのだ。
更新遅れちゃってスイマセン(汗
これからも、なんとか間を空けないよう頑張ります。
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