目覚めた男
ベッドの上で仰向けになっている男は目を覚ました。
「あ、大丈夫ですか?」
そう顔を覗き込みながら言ってくる長い橙色の髪に濃い赤色の瞳をもつ女性が心配そうに見つめてきた。男はそれを無視しあたりを見回した。そこには右側の窓から入り込んでくる日差しがベッドの対角線上にある机と椅子を照らしていた。
「ここは?」
「ここは私の部屋ですよ」
「なるほど」
「何かわかったんですか?」
「いえ、何も」
「そうですか」
しばらく沈黙が続いたが、男が女を見ていう。
「あなたは誰ですか?」
「あ、そうね。自己紹介がまだだったわよね。私は宝来 泉琥と言います。ちなみにここは定食屋の宝船で、今は私の父と切り盛りしてるのよ。それであなたのお名前は?」
「私かい。私は誰なんだろうか」
男は下向き自分の手を見ながら少し思い詰めたような口調で言った。泉琥はそれを聞き少し考え込んだ後に言った。
「それはきっと記憶喪失ですよ」
「記憶喪失?」
「えぇ、そんな急に言われてわからないかもしれませんが何か覚えていませんか?例えばご家族の事とか」
「すまない。何も覚えてない。」
「そうですか」
泉琥は不安で辛そうな男を見てあることを思いついた。
「それなら私が名前をつけても大丈夫でしょうか?」
「構わないよ。今のままだと不便だしな」
「よかったです。では、泰矢とかでいかがでしょうか?」
「泰矢か。それで構わないよ」
微笑みながら頷いた。しかし泉琥は少し疑い深く見つめてきた。
「ほんとですか?いやじゃありませんか?」
「嫌じゃないよ。全然いい名前だと思うよ」
「ならいいんですが」
それでもチラチラと見てきた。それを感じ取った泰矢はお願いした。
「そうだ、ここを案内してくれるか。もっと情報がほしいもんでね」
「確かに何も覚えてないですもんね。いいですよ」
「ほんとかい。すまないね」
泰矢は礼をした。それに泉琥は首と手を横に振った。
「いえいえ」
泰矢は泉琥に家の中を案内してもらった。そして、何もない空っぽな部屋に通された。
「ここは?」
「あなたがこれから暮らす部屋です。」
泰矢は泉琥の方を見た。
「え、暮らすって」
「そうですよ。けど、記憶が戻るまでですけどね」
「けど、流石にここまでしてくださらなくても」
「ならあなたがここでしっかりと働いてもらうお礼にここの部屋を貸すと言うことでいかがですか」
泰矢は少し考えた末、泉琥に言った。
「それならお言葉に甘えさせていただきます。」
その後二人で一階に降りて行った。一階には机と椅子が多く並べられており階段のすぐ目の前のドアを開けると厨房が設置されていた。少し低い声が聞こえた。
「お、どうした。泉琥」
「あ、お父さん。倒れてた人が目を覚ましたよ」
「ほんとか」
そして近くにあった椅子に腰掛けて泉琥のお父さんと話した。泉琥のお父さんは宝来 京樹と言い、頭は禿げ、顎髭は白く髪の毛のようにしっかりと生えており随分と歳をとった見た目をしていた。
「そうですか。娘の自己判断とはいえ、私も人でが欲しいのでそれは構いませんよ」
「すいません。これからお世話になります」
「そういえば、あなたが倒れてるところには行きましたか」
「いえまだ」
「そうですか。なら泉琥に案内して貰ってください。まだ店の開店まで時間がありますから」
そして泉琥と泰矢は外にでた。外の光景はまるで文明が滅んだような有様だった。二人は家の裏に周った。そこは草木が生い茂る場所で物干し竿が置かれてあった。
「あまりここら辺は掃除がされてないんですよ。あそこにある物干し竿だってもう使ってないですし」
「大変ですね。それで私が倒れていた場所ってどこですか?」
「えっと、確かここら辺ですよ」
そこは物干し竿が置かれいる場所から少し離れた場所だった。
「何か思い出しましたか?」
「すいません。特に何も思い出せないです」
「そうですか。なら戻ってお店の準備を手伝ってください」
「わかりました」
泉琥は泰矢の手をとり店に戻り、お店の準備をした。そして店を開ける時間になると外から少しずつ声が聞こえてきた。
「お、もうお客が集まってきたな。泉琥、暖簾あげてきてくれ」
「はーい」
泉琥は戸を開けて叫んだ。
「定食屋宝船、今から営業開始だよー」
そういったと同時に客がどんどんと入ってきて、泰矢と泉琥は椅子への案内や注文を聞き、それを聞いた京樹が料理を作っていくというとても慌ただしい時間が流れていったが、泰矢が客から聞きなれない言葉を聞いた。
「なぁーまた戦争が始まったらしいぜ」
「マジでか。こりゃまた物価があがっちまうな」
「あーだよなー。異能とかいう力が広まったばかりにな。」
そしてそのまま今日の営業は無事に終了した。そして夕飯を食べ、風呂に入りベットに入ったが、泰矢と泉琥は泉琥の部屋で話していた。




