表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
&dead.  作者: 猫蓮
40/143

&34.順調

 落下させた鋭い先端がペリカンに突き刺さる。すると下から大量の黒い粉が噴き上がる。


 一瞬にして視界が黒に包まれる。


「やったか!?」


 いや安心するのはまだ早い。これでモグラの時はプチッてされたんだ。


 ……今思えば、あれってただ私の方に倒れてきただけじゃない?

 逆立ちみたいな状態で首を斬って、支えを失ったモグラは切れた方向に倒れただけ。伐採と同じ原理だ。その場から動かなかった私が下敷きになるのも納得がいく。


 それじゃあ今回。現在私がいる場所、ペリカンに刺さった足場の上。クチバシは足場で固定されてるからこっちに来ることはない。


 勝った。今度こそ、華々しい有終の美を飾れる!


 両手を上げてポーズを決める。と、地面が揺れた。

 うぇっ!? なに!?


 身を屈めて警戒する。ペリカンが動き出したのか!?

 意識を巡らせて足場の状態を確認する。先端には何もない。うん。異常なし……い?


 待て。待て待て待て。

 私はペリカンに刺さった足場の上に居る。ペリカンに刺さった……?

 今、先端には、何もない。


 モグラは倒した後、何も残らずに消えた。じゃあ、ペリカンも……消える?

 消えるって居なくなる事で、つまり……!?


 落ちた先にあるの、マグマ!

 このほっそい足場じゃ、沈む!?


 ぬぁーっと!!

 ヤバいヤバいヤバい。他に足場はっ、何も見えない……!


 足場がマグマに入る。全部は沈まない。けど、浮力か何かで上昇する。足場が、斜めに……!


「どうにかなれー」


 頭を思いっきりぶん投げる。黒い粉を抜けて視界が開く。これで足場を見つけて上手く着陸出来れば!


 …………て、なんじゃこりゃぁあああ!?!?


 開いた視界に映る景色は、溶けていた。

 なんだこれなんだこれ!?

 崩壊? 崩落? 融解?


 敵を倒した。だからこのフィールドはクリアで、次のフィールドに移行するはずだ。その方法が……フィールドの崩壊?


 クリアしたフィールドは用済みだから壊すってか。贅沢な使い方!

 てかそれなら、プレイヤーを追い出した後でいいだろ。なんで私が崩壊に巻き込まれなきゃいけないんだ!

 私は勝者だぞ。褒め称える道理はあっても酷い目に合わせるのは違うだろ。筋を通せ。優遇しろ。


 はっ、そうだ!


「シズクちゃん!」


 どこ? どこにいるの!?


「さめじぃ」


 急に目の前に白い炎が現れた。

 うん? どこから出てきた?

 後ろから? もしかして私の体、今は頭か、から?


 ううん。今はそんな事どうでもいい。


「シズクちゃん、お願い! 私から離れないで!」


 きっとどこにも逃げ場はない。このフィールド自体が壊れる。それに巻き添えをくうのは抗えない。

 荒野の時みたいに、無意味な抵抗となって終わる。


「私はきっと溶けて、姿が見えなくなる」


 全てが溶けてなくなる。地面もマグマも、溶けてなくなる。その後、どうやって次のフィールドに移るのか全く想像が出来ないけど。

その前に私はマグマに溶けてるだろう。その時は原形も残ってない。次のフィールドに移るまで、私はずっと溶け続けてるのかもしれない。


「お願いシズクちゃん。どうか……どうかっ、忘れないで」


 私にはどうする事も出来ない。だから願うしかない。シズクちゃんに頼る他ない。

 溶けた私は、当然身動きが取れない。その前に意識が保てる保証だってない。アリジゴクに埋もれて、ここに落ちるまでの間、意識がなかった。

 でもそれは、もしかしたらシズクちゃんも同じなのかもしれない。


「私は死なない。絶対に死なないから。ずっと一緒に、離れても絶対に見つけるから、だからっ……!」


 だから、その後に言葉は続かなかった。


 高く投げた頭は放物線を描いて落ちていく。その途中で体が戻って、限界まで抗うつもりだった。ギリギリまでシズクちゃんに想いを告げて安心させる予定だった。


 なのに、いつまで経っても体は戻らない。首から下が生えてこない。これじゃあ頭を投げる事が出来ない。


 後頭部がマグマに落ちた。そう認識した時には何もかもが手遅れだ。熱さに意識が引っ張られ、その一瞬で頭は沈んで、全ての感覚がなくなった。






 * * *



 カタカタカタ。


 机の上に置いてあった缶が振動して音を発する。それを取って、耳に当てる。


 ガガァー


 耳障りな音が聞こえる。顔を歪めて舌打ちし、立ち上がる。窓辺に寄ると缶の底から垂れてるワイヤーがピンと張った状態になった。


『炎龍ヅルの消失を確認』


 なんとか聞き取れる音になって声が聞こえてくる。


『FK2の消滅を確認』


 けれどそれ以降、声は聞こえてこなくなった。訝しみ、手にした缶を見やるとワイヤーが垂れ下がっていた。どうやら引っ張り過ぎたみたいだ。


 再び舌打ちをして、缶を放り投げる。甲高い音を鳴らし、床に落ちた缶はヘコんでいた。

 それには気にも留めずに親指の爪を強く噛む。


「龍? FK2? 一体なんの事?」


 考え込んでいると、静かな部屋にドアをノックする音が響く。続いてドアが開かれる。


 頭を下げたデモンが部屋に入り、糸電話を回収するのが視界の端に映る。再び頭を下げてドアを閉めようとする。


「待ちなさい」


 声をかけるとピタリと行動を止める。顔を上げ、ドアの隣で頭を下げ続けているデモンを見る。


「アメデビルとツチデビルを連れて来なさい」


 デモンは深く頭を下げてから、ドアをそのままに走り去っていった。


 分からないのなら、情報を集めればいいだけの事。

 簡単な話だ。


「お呼びですか、マザー」


 二人のデビルが部屋に入って頭を垂れる。一番目と二番目のデビル。

 命令するとすぐさま部屋から出ていった。


 それを見送ってから視線を外そうとすると、入れ替わるように十一番目のデビルが入ってきた。


「マザー、お耳に入れたい話があります。新たなデビルが誕生しました。後ほどお連れします」


 これでデビルは十三か。だがまだ足りない。もっともっとデビルを増やさなければ。


「それと、こちらを」


 そう言って渡されたのは硬玉だった。感嘆の息を漏らして目を細める。その間にデビルは部屋を出た。


 全てが順調だ。順調過ぎて笑いが込み上げてくる。


「オーダー」






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ