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 雪鈴は、藍色のドレスを纏い、記念日に礼竜にもらった珊瑚の髪飾りを付け、じっと織り上がったレースを見ていた。


 彼岸花――いや、悲願花のレースだ。

 島国で伝わっている藍染めと呼ばれる手法で染めた糸を取り寄せて織った。


 丁鳩とリディシアとライオルも居る。


 間もなく、王位三位の今日の教育が終わる刻限だ。

 どやどやと声と足音が近づいてくる。


 礼竜だけでなく、イザベリシア、イザベルシア、国王、前国王も一緒だ。


「ユズ……じゃない、ミーネちゃん」

「できたってね!」

 雪鈴は頷く。


 あとは、これを礼竜の傷に当てるだけだ。


 暑くても肩から上と手しか出さない礼竜の服を男性陣が剥ぎ、禍々しい呪いの傷を露出させる。


 緊張した面持ちで、雪鈴がレースを当てた。


 音も、光もなかった。


 ただ吸い込まれるように藍のレースは礼竜の背に溶け――刻まれた。

 傷は――消えていた。


「……消えた……」

 丁鳩が呆然と呟き、弟の背中を思いきり叩く。

「痛いか?」

「いいえ。全然。


 ――ありがとう! 雪鈴! キョイ義従兄様(にいさま)!」


 一同、泣き出す者まで出ていた。

 特に祖父が感無量と言った感じだ。


 傷の代わりに悲願花が刻まれたが、気にする者は居なかった。


 キョイは、これで礼竜が雪鈴のレースを占領することはないと安堵したのだが……その後も雪鈴が、礼竜のハンカチだのタイだのカフスだの付け襟だのを織るので、嫉妬に狂っていた。


 雪鈴には、婚約したという記憶も、幼いころのキョイとの接触の記憶も全くなかった。



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