悍ましい男の異形の夢
陽華はあてがわれた部屋に篭った。
自分の守護者は、山神様ではない。
そして、男の方ー‥‥‥。
【山神に愛された娘の末裔】
そのはずなのに、なぜ
暗美と白亜は、私に怯えるの。
桜花ー‥‥‥
あの憎らしい女ー‥‥‥
なぜあんな女に、
暗美と白亜は尻尾を振るの。
私には、牙を剥いて唸るのに。
【憎い。憎い。】
【桜花が憎い。】
【憎い。憎い。】
【暗美と白亜までも憎い】
陽華『私‥‥‥いつの間に‥‥‥
こんなにも残忍な考えになったの‥‥‥』
いけない、と陽華は首を振る。
16年間の小屋生活を思い出す。
【私がいた村は‥‥‥
本当に、雨が降らなかった?】
陽華は考える。
雨なんか見たことなかった。
【どんな村だったかしら?】
考えても思い出せない。
鳥の囀りは聞こえたけれど、
人間の声など、ほとんど聞こえなかった。
そう、この森深くにある清雅の家と同じくらい
しんと静まり返った村だったのだ。
【私は、誰に育てられたのかしら】
【気づいたら、大人になっていたというの?】
ありえない、と陽華はつぶやいた。
陽華『ねえ。』
陽華は、姿が見えない
自分の【守護者】に向かって話しかけた。
陽華『私は、何者なの?
あなたは?
なぜ私のそばにいるの?
あの村は何?』
聞いても返事はなかった。
陽華はそのまま眠りにつく。
陽華はその晩、夢を見た。
悍ましい男の異形の夢だ。
細い爪、ヘドロを纏ったような体ー‥‥‥
陽華の体を掴んだまま離さない。
でも不思議と、陽華は怖くなかった。
陽華『あなたが、私の守護者なの?
あなたは、山神なの?』
異形の男は、何も言わなかった。
しかし、陽華の耳元で囁いた。
【お前が望むのなら、
あの犬2匹も、この爪で八つ裂きにしてやろう】




