第八話 二人の友情ができました
12時15分。時計の針がその位置を示すとそれに合わせてチャイムが鳴り響く。
昼食の時間だ。大勢の人が様々な教室から出てくる。辺りは物凄くガヤガヤしていた。
俺も予定がある。後輩を待たせる訳には行かないし急ぐとしよう。
「とっとと行くぞ」
俺はそう言い志穂を見た。少し嫌そうな顔をしているが次第に席を立ち、学食へと向かう。
というか、学食とか久しぶりだ。志穂と知り合ってすぐ行った時から一度も行ってない。
「あっ先輩!」
少しワクワクしていた俺はいつの間にか学食に到着し彩花の元にまで来ていた。
やはり二人は仲が良くなさそうに睨み合っている。方法は無いのだろうか。
「はいはい。せっかく来たんだし何食うか」
俺はため息混じりの声でそう言った。
二人は答えが決まっているかのように
「オムライス」
二人は同時にそう答えた。同担拒否しているのか揃ってしまったことに嫌そうな顔をしている。
気が合うのか合わないのかどっちなんだ一体。
しかし何も分かってないな。学食と言えば(経験回数一回)カレーだろ?
結局二人はオムライスを頂き、俺はカレーを頂いた。三人は手を合わせる。
「いただきます」
そう言い終えると見な食事を始めた。
カレーはというものの、中々美味しかったがやはり辛味が足りなかった。
二口目を食べようとした時、二つのスプーンが俺のカレーに襲い掛かる。
「ちょいちょい!二人して何してんの?」
許可の無い一口泥棒は彩花と志穂だった。俺の声が聞こえてないかのように二人はカレーを口の中に入れよく噛んでから飲み込んだ。
「んー。悪くないね」
「ちょっと辛味が欲しいかもです」
「あのなぁ…せめて一口頂戴とか言えよ」
二人して感想を言っている。俺に慈悲は無いのだろうか?
すると突然、二つのスプーンがオムライス一口サイズ分を乗せて俺の前に現れた。
突然のイベント発生だ。美少女二人からのあーんイベントだ。
「ちょっとなんで彩花ちゃんも同じこと考えてんのよ!」
「知らないです!私の方が早かった!」
二人は言い争っている。俺はどちらを選べばいいのだろうか。正直二人共魅力的過ぎる。
志穂に変な意識をしてしまう為、物凄く食べにくかったが食べたい。
「まぁ良いから!」
二人はじっと俺を見つめてくる。本当に困った。最終的に二人からあーんしてもらう事は確定しているのだが、どちらから先に頂こうか。
二人共少し顔を赤らめている。どちらが一番か。そんなことを競っているのだろう。
そうだ、良いことを思い付いた。
「いただきますっ!」
俺は二つのスプーンを同時に口の中に入れた。
そうだ俺が体を少し張ればいいのだ。同じ味のオムライスを二口分同時に飲み込む。
「あはは!ばかだこいつ〜!」
「何やってるんすか先輩〜!」
二人は顔を見合せながら笑っていた。
本当に良かった。その笑顔に嘘は無い。どうやら少し打ち解けているようだ。
俺も自然と笑みが零れていた。
暫くすると俺は志穂に彩花の事、彩花に志穂の事を話した。
「志穂はな。高校で道に迷って変な人に絡まれている所から助けてあげたのが始まりだった。
それからはもう俺の高校生活の唯一の友達さ」
「志穂先輩ってやっぱバカそうですもんね」
「はぁ!?」
あれは忘れもしない。あんなに可愛い子が困ってたら自然と声をかけてしまうだろう。
彩花はそれを聞き笑いながらそう言った。
「彩花は中学時代だいぶ浮いてる二年生だったんだ。同級生より先輩達の話が面白いだなんて抜かしてたか」
「彩花!アンタもよっぽど面白いね!」
志穂は笑いながら言った。
俺は二人の話をしているだけだったが、二人は笑い合いながら冗談を言い合うかのように話していた。
少し席を外してみようか。今なら行けそうな気がする。
「ちょ!トイレ行ってくる」
俺はそう言い、席を立ちトイレへと向かう。
まぁ少し遠回りをして二人の死角になり話し声が聞こえる所へ上手く近付く。
俺の姿が見えなくなった確認した二人は少しの沈黙の後、志穂から話し始めた。
「葉月の事どう思ってる?」
「え?葉月先輩は面白い人です」
突然の質問だったが、迷わず彩花は答える。
志穂は伸びをしながら
「それに馬鹿っぽいのも良いよね。でも何だかんだ思いやりがあって誰にでも優しい」
「そうですね。素敵な人です」
俺の褒め大会でもしているのだろうか。
あんなに煽ってくる志穂があんな事を言っている。少し照れてしまった。
彩花も納得するようにそう答えた。
「ごめんね。朝はあんなに怒っちゃって」
「いえいえ気にしてないですよ。それにウチにも悪い所はあるだろうし…」
二人は仲直りをするかのように互いに謝罪をしていた。
二人は顔を見つめあってにこりと笑いながら握手をしていた。
もう心配することは無い。そろそろ戻るとしよう。長いと不自然に思われるかもしれないからな。
俺は遠回りをしながら仲良くしている二人にトイレから戻ってきたように見えるように戻っていくのだった。
これなら安心して二人と接する事が出来るようになるはずだ。




