第一話 新学期
2025年 4月8日。
極寒とも言われる北海道にとうとう春が来た。とは言っても、まだ寒いんだけど……。
自己紹介が遅れたね。俺は八月朔日葉月。今日から北之海高校の二年生になった。一年生はろくに恋人も友人も高校生活といえば的な事もできなかったし……今度こそ頑張るぞ!
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眉毛まで隠れる前髪が冷たい風に吹かれ、優しく揺れながら、176cm程の平均的な体型をしたごく普通の高校生が住宅街を1人で歩いていた。
「今日から新学期かぁ…めんどくせー。帰ってアンダーモッチしたいわ」
怠そうな顔をしながら重い足をゆっくりと動かす。アンダーモッチとは、俺のハマってるゲームである。
ただただ通学路を歩くだけのごく普通の日常だ。眠い目を擦りながら高校に向かっていると、少し急いでいるかの様な足音がダッダッダッと俺の元に近付いてくる。
その足音はやがて俺の隣で止まり、勢い良く葉月の左肩を叩き付け、バシッッッ!という音が響き渡る。
「いっったぁぁぁ!!」
「はい雑魚~!!ゲームばっかしてるから身体弱ってんじゃないの〜?」
当然の如く俺は叩かれた場所を右手で抑えながらうずくまる。そんな中、叩いて来た人物は甲高い笑い声をあげながら俺はを煽った。
その声は女性と判断するのに十分な声色だった。
「うるせー!こちとら深夜まで大連敗かましてレートだだ下がりなんじゃ!てか、ここから来るの珍しいじゃん、おはよう志穂」
俺はうずくまりながら彼女を見上げた。彼女の名前は皐月志穂。俺と同級生である。腰辺りまである黒く綺麗な髪が風で揺れる。その姿は凄く美しく、色んな男を虜にしそうなものだった。
「たまたまこっから行きたい気分だったのー」
「そう?まぁなんでもいいけど」
俺はの発言に対し少し目を逸らし自分の右頬右手で掻きながらを何かを隠しているかのような仕草で言った。そんな違和感だらけの仕草に気も止めず俺は立ち上がり、身長差により志穂を見下ろす形となった。彼女は大体165cm前後、この事実に不満を覚えたのかムスッとした顔を一瞬だけ見せた。しかし基本は凄く可愛らしい笑顔を常に見せていた。
俺と志穂は数秒の沈黙の後、二人で横並びで歩き始める。
「今日から二年生だぜ?あっという間だったよな」
「とか言うけどアンタゲーム三昧でしょ?ニートが何言ってんの?」
俺の発言に対し、志穂はどこか呆れてるような顔で口を開いた。それに反応するかのようにすぐに俺は少し眉間にしわを寄せ言い返した。
「はー?ちゃんとバイトしとるし!ちゃんと友達とも遊んでます~」
「その友達って基本私と中学からの男友達でしょ。高校の友達とか作ったら〜?」
志穂はニヤニヤと煽るような表情を見せながら言葉で攻撃を続ける。俺は図星のあまり足を止めてしまった。数歩進んだ所で志穂も足を止め、振り返った。
「なんだよ…俺だって頑張ってるんだよー!んな事言わなくたっていいじゃないかー!」
その姿はまるで駄々を捏ねる小学生。このまま泣き喚くそんなオーラまで感じ取れてしまう。しかし志穂は俺には分からない程度に顔を赤らめ、ボソボソとこう言った。
「別に私だけだから嬉しいんだけどね…」
「んぁ?今何か言った?」
「子供みたいでだっさーって言ったんだよ!さっさと行かないと遅刻するよ!」
俺は自称ゲームで鍛え抜かれた聴力で志穂の発言を聞き取ろうとしたが、無理だった。質問から帰ってくるのはまた煽りの一言。俺は口答えしてる暇などなかった、あまりにものんびりしすぎたせいか、時間がギリギリとなっていたのだ。
俺は慌てた様子で足を動かす。それを追うかのように志穂も後ろから着いてきた。 2つの足音が交互に鳴り響く。
1kmは走っただろうかようやく、校門が見えてきた。
「何とか間に合いそうだな」
「アンタが遅いのが悪い」
2人は少し息を切らしながら走るのを辞め、少しゆっくりと歩き始めた。周りを見渡せば人が沢山。入学式も相まって大人の人が沢山歩いている。
校門の前には入学式と書かれたの看板が置かれ、高校を背にそこで写真を撮る人達が大勢居た。
この高校は延床面積は約14,000cm²と川を挟んで奥にまたどデカいグラウンドがあるからか全然狭く感じない。
桜の木も1列になるように植えられているが咲いていない。北海道は桜が咲くのが少し遅いからだろう。晴天で明るい太陽が俺と志穂を照らす。
「なーんで入学式って天気良くなんの?」
「なんでそこに疑問抱くの?馬鹿なの?」
俺は目を太陽から遮るように手を太陽にかざし、日陰を作りながら空を見上げ歩きながら疑問そうに言った。その疑問があまりにも謎すぎた為か志穂は鼻で笑い俺を見ながら歩いていた。
俺ははぁ?と言わんばかりの顔で志穂を見つめた。その時だった、俺の胸辺りにドンッと何かが当たるような音がし衝撃が来て俺は思わず後ろに下がった。
「痛った~」
両手で顔を抑えながら痛そうにしている女の子が俺の目に入った途端すぐに近寄り、心配そうに声をかける。この時、志穂は隣で見つめているだけだった。
「ごめん!大丈夫だったか?」
「はい!大丈夫で……」
俺のその顔は優しく本当に心配していそうな顔だった。身長差が結構あった為、少し屈みながら女の子と顔が合わさるくらいの位置にまで高さを合わせる。大体153cmくらいだろうか。
顔を抑えていた女の子は手を退かしちょっと痛そうにしながらこちらを見て返事をしてきたが俺の顔を見た途端、顔を背けてしまった。
肩くらいまである志穂よりかは圧倒的に短く大体セミロングと言えるくらいの綺麗な茶髪が揺れ、耳たぶにピアスが見えた。校則的にはセーフなので気にしなかったが、顔を背けた事に疑問を抱く。
「どうした?やっぱ痛いか、?」
「大丈夫です!こちらこそごめんなさい!では!」
俺が質問する間もなく、遮るかのように顔を見せないまま、駆け足で校内に入ってしまった。俺は疑問そうな顔をしながら志穂を見つめる。しかし志穂はあの笑顔が無く、ただ無言で俺を見つめていた。
「志穂?どうした?」
「あ!ごめん!なんでもない!」
俺は様子のおかしい志穂に心配そうに近寄ると志穂は我を取り戻したかのように声を出し、笑顔で返答してきた。
俺は不自然な志穂に問い詰めようとしたが、悪いタイミングでチャイムが鳴ってしまった。俺と志穂は大慌てで校内に入り、二年生の集合場所に急いだ。 1年生だった頃のクラスに行かなくてはならない為、ここで2人は別々となったのだった。




