12時(1)
「おっ、本当に来たぞ」
「おーい、こっち!こっちだ!」
こっち、とか言われてもねえ……知らない場所ではないんだし。
モニカの「提案」にハンター協会はすぐに乗った。現状の停滞している。いや追い詰められているとも言える状況の打破と、今後のために。そしてすぐに近くのリージョン、千葉、さいたま、前橋、甲府、静岡から人が派遣されることになり、そのうち甲府と静岡に私が――飛行機で上空を通過していたので転移で行けたんだ――出向いたりして高校の前に集合。総勢百名近くの現役ハンターたち。それも協会が認めたかなり上級の者ばかり。それこそ、私たちの指導に当たっていた田中さんたちもいたりする。
軽く会釈して小出さんのところへ。
「十倉さん、どうですか?」
「うん、まだ残ってる」
「そうですか。では決行ですね」
「行きましょう。こっちです」
うっそうと生い茂る木々の間を抜けて校舎に入り、一年二組の教室を目指す。
「昔はこんなところで勉強していたんですね」
「今はどうしてるんですか?」
「学校、機能してると思います?」
「……憲法が変わってないなら義務教育とか」
「建前ですね」
マジですか。
「一応教育は行われてるんですよ?ただ、ネットでAI相手にやるので、こんな感じの学校という形態がないんです」
「なるほど」
「だから、ちょっとうらやましくて」
「え?」
「こういうの、もう古い漫画とかにしか描かれてなくて。どんなところだったんですか?」
「どんなって言われてもねえ……」
学校が当たり前でない人に、学校が当たり前だった私はなんと言えばいいのだろう?クラスに友達がいて、休み時間におしゃべりして、学校帰りに寄り道して、試験が終わった開放感でちょっと羽目を外して、ちょっと気になる男子に話しかけられてドキドキして。そういったものを伝えればいいのかな?
「よし、決めた」
「ん?何をです?」
「ここを片付けたらそういうの、いっぱいおしゃべりしましょう」
「いいですね」
「何々?何の話?」
「私も混ぜて!」
「いいわよ!」
すぐそばを歩いていた女性ハンターに取り囲まれた。女の子がおしゃべり好きなのはいつの時代、それこそこんな世界でも同じなのねと、二つ返事で了承。よし、ちょっとだけやる気出てきたわ。
『実里、どうした?』
『モニカ、頑張るわよ』
『どうしたんだ?急にやる気を出して』
『私は平和な生活を望んでるの』
『そうか』
『あと、モニカにもこういう女子トークに参加してほしいな、って』
モニカにも頑張って日本語を覚えてもらえばきっと楽しいはず。大変だけど、モニカならすぐにある程度は話せるようになるだろう。
そんな話をしている間に一年二組に到着。空間探知に引っかかるとめまいがするので切った。周囲の警戒はウィルにしてもらおう。
「これが異世界に通じている扉ですか」
「ええ」
モニカの悪い方での予想はこの扉、向こうの時間で一時間程度開いているのでは?というもの。だとすると……あと丸一日くらいは開いているかな?
そしてもう一つ、私がもう一度あちらに行ったら閉じるだろう、と。あの女神が私をあっちに残しておくのにこだわっていたような雰囲気だったからあり得るな、と。
『じゃあ、モニカ』
『ええ』
『危ないことさせてしまうみたいだけど』
『大丈夫。最悪、私は家に帰るだけだからな』
『そだね。じゃあ、お願い』
『ん、任された』
不確定要素が多すぎるので、いったんモニカが扉をくぐることになった。それで扉が閉じてしまったらそれまで。そして、モニカがこちらに戻ってこられたなら、その次だ。
モヤモヤ光る中にモニカの姿が消えていった。




