12時(4)
「ええと……博多?」
「そうだ。博多リージョンの火葬場に隣接する墓地でダンジョン発生だ」
『実里、博多とは?』
『地名ね。ここから結構遠いわ』
『なるほど』
「見ての通り、現場は大混乱。既に直接の通信は途絶していることから、博多リージョン自体消滅した可能性もあるが、衛星画像ではまだ健在らしい。おそらく通信機器か、電気系統の問題だろうが」
「ここと同じようなことが起きたのね」
『実里、衛星画像とはなんだ?』
『はるか空の彼方で偵察してる乗り物よ』
『そ、そんなものがあるのか?!』
実際には誰も乗ってないけど、無人だとか、軌道衛星だとか説明しだすと長いし、面倒なので、すごい視力の偵察兵を乗せているということにしておいた。あとでウィルに説明しておいてもらおう。
「映像だと、かなり大きなモンスターがチラホラ見えますね」
「おそらく横浜と同じように、異常なダンジョンができちまったんだろうな」
「博多って強い人とかいないんですか?」
「いるにはいるが、横浜と似たようなもの……というか、少なくとも日本のリージョンは横浜と同じかそれ以下しかないぞ」
「ええ……」
「言っておくが、お前たちが異常に強いって理解してるか?」
「それはまあ」
「そんなわけで救援に行って欲しい」
「救援ですか。あの、一つ問題が」
「何だ?」
「ぶっちゃけますけど、私の空間転移って、行ったことのある場所しか行けません」
「そのくらいは想定している。そっちの嬢ちゃんは知らんだろうが、お前ならわかるだろ?飛行機くらいあるさ」
「え?あるんですか?」
「一応な」
ダンジョンから迷い出るモンスターから逃れるために作られたリージョンという防壁。そうしたリージョン間の移動は色々と制限が多い。
例えば、今、実里たちが乗っている自動車はモンスターから回収した魔石をエネルギー源として動かせるようになっているが、出力が足りないために飛行機を飛ばすには至っていない。
そのため、ダンジョンが現れるより前から石油を輸入に頼っていた日本をはじめ、航空燃料を気軽に用意できない国は、基本的に飛行機の運用を停止している。船舶に関しても、重油が用意できないために、帆船が利用されるなどしており、長距離移動に関しては概ね産業革命以前の大航海時代のようになっているのが実情である。なお、海上輸送も海底にダンジョンがあってモンスターがあふれてきてるところがあるらしくて、船旅なんて自殺志願者のやること、というのが今の常識らしい。
「だが、今回のような緊急事態の場合、飛行機を使うのもやむなし、と判断した」
「なるほど」
そして「これはここだけの話にして欲しいのだが」と付け加える。
「一応、魔石と水といくつかの材料を反応させて、石油っぽいものを精製するのに成功している」
「マジですか」
「まだ品質が安定しないので、実用段階に移れないがね」
「それって、材料の問題ってことですか?」
「ああ。俺も詳しくないが、材料の組み合わせ、量、混ぜる手順などの工程によって品質が変わるらしい。しかも、僅かな量で変わるらしくて、その辺が大変なんだそうだ」
たとえ生成される石油っぽい何かの質が低くても、品質が安定しているのなら、そこから精製するときの調整次第でなんとでもなるのだが、大元の質がブレッブレなので、量産して精製する流れに乗せられないのだそうだ。




