9時(1)
「では勝敗はどちらかが降参するか、審判が続行不能と判断するまで」
「はい」
「いいぜ」
「あと一つ念のため。殺しちゃダメだよ?」
「わかりました」
「へへっ……だけどさあ……気絶させてここでひん剥いちゃったら?」
「降参しない限りは続行できるんじゃね?」
「「「ぎゃはははは!」」」
ニヤリと川口と名乗った男が下品な笑みを浮かべ、木刀をトントンと肩に担いで弾ませる。
勝負という話になったとき、モニカが『自分が』と言ったのだけど、却下した。こういう手合いは圧倒的な実力差を見せなければ、いつまで経ってもつきまとう。もちろんモニカは強いけど、木製武器での殴り合いでは圧倒的な実力差を見せにくいだろうという判断。圧倒的な実力差を見せようとしたら殺しちゃうから、手加減が必要になるけど、加減がわからなくて、かえって時間がかかっちゃうかもって意味でね。
そうね、色々再起不能にしておけば、今後のハンター生活が楽になるかしら?
「で、君は武器は?」
「要りません」
「そう?」
田島が不思議そうに呟くのを横目に、左右でデザインの違う手袋をはめる。準備なんてこれで充分だ。
「では……始め!」
合図と同時に川口が「うおりゃあああ!」とこちらへ向けて一気に距離を詰め、大きく振り上げた木刀を私の頭に向けて振り下ろす。木刀と言えどまともに食らえば脳震盪では済まないかもしれないレベルの振り下ろしだ。こんな全力の攻撃を、体格としては一回りは小さい少女に向けて放つなど、一体どういう神経をしているのだろうか。
さて、今回の勝負は私にしてみれば受ける必要のないものだけど、圧倒的な力の差を見せつけて、今後こんな風に絡んでくる者がいないようにするのが目的。ということで、きちんと相手をしてやろうと決意して臨んでいるのよ。
そこで、右手をグッと握って構えたまま手袋に魔力を込め、左手は振り下ろされてくる木刀へ向けてスッと差し出す。
(左手はそえるだけ……ってね)
そして振り下ろされた木刀が左手に触れるかどうかという瞬間、ボンッと柄から数センチを残して爆発した。
そもそも私は錬金術師だ。そして錬金術師はこうした近接戦闘には向かない。
ダンジョンなどに赴くのはほとんどの場合、錬金術のための素材を自分で手に入れたいか、素材を採取したらすぐに加工が必要なんてことが多い。だから立ち位置としても後衛に近い中衛で、基本的には戦闘に参加しない。
だけど私の場合、一緒に召喚された仲間が次々亡くなったため、半年を過ぎた頃からはほぼ前衛に近いような立ち回りをせざるを得なかった。そして、そんな中で錬金術を戦闘に活かすようになっていった結果、このように触れたものを分解して爆発させられるようになったのです。
もちろん、木刀以外も爆発させられるからね!




