8時(1)
そんな翌日、ハンター協会に依頼票の貼られた掲示板があったからそれも見ておこうと、朝食を食べてから協会まで向かう。ちなみに今朝は丼物チェーン店の朝定食にしてみた。
『この朝定というのは不思議なものだな』
『そう?』
『昨日も食べたが、「米」と言ったか?この穀物は不思議な食感だな。噛み締めると甘みも出てくるし……何杯でも行ける』
そう言いながらも気に入ったらしく四人前を平らげているのだから、なかなかの健啖家だ。私の二人前も合わせ、あの量がどこに入ったのかと疑問に思っているだろう店員たちをあとにして協会に入ったら、いきなり「いたぞ!」「出たな、泥棒猫め!」と、使い古されたテンプレのような台詞と共に、ガラの悪そうな男たちに指をさされた。
「コイツだよ!コイツが俺たちの得物をかっ攫いやがったんだ!」
「え?」
「卑怯な奴らだぜ、まったく……」
「ああ。ハンターの風上にも置けないよな」
何のことを言っているのかわからないというか、何となく予想がつくというか。とりあえず面倒なことが起きたのは事実だろう。
「確認させていただきます。お二人は、彼らが戦っている横からオークを横取りしていったような事実はない、と。そうおっしゃるのですね」
「はい」
「そしてこちらは、あの二人が獲物を横取りしていったと主張するのですね」
「おう」
「当然だ」
小出さんの問いに彼らは「当然」と答えているけど、何が当然なのかよくわからない。
とりあえず状況的に、私たちがこのむさ苦しい男たち五人がダンジョンで戦っているそばにやって来て、積み上げていたオークを全て盗んでいったと訴えられている、らしい。
『ダンジョンですれ違ったりしたっけ?』
『さあ……覚えていない』
『だよねえ』
ダンジョンでは三層に行くことを目標としていたので、最短距離を全力疾走していたという記憶しかない。一応、誰もいないことを確認しながら走っていたけど、近くに他のハンターがいたのは何となく覚えている。邪魔にならないよう注意したのも。
だけど、それが彼らかと聞かれたら自信がない。そもそも、見ていなかったのでわからないのよ。
「だいたい普通に考えりゃわかるだろ。こんな女二人でオークを山積みにできるほど狩れるわけがないだろうってさ」
「そうそう、こんな細っこい腕でオーク狩りなんて無理無理」
「逆に襲われるだろ」
「くっころ希望!」
「「「ぎゃははは」」」
うーん、くっころ展開は女騎士限定だからモニカの担当?当の本人は「くっころ」なんて単語の意味は知らないけど、侮辱されたことだけは察したようで、その手は既に腰の剣に添えられていた。やめてモニカ、ここで剣を抜いたらあとの掃除が大変よ。
受付付近では邪魔になるからと別室での話し合いになっているけど、正直なところ、分が悪い。どうやらあちらの男たちは、見た目こそどこのチンピラだよといいたくなるほどガラが悪いけど、ハンターとしては長いようでそれなりに実績を積んでいる。ハンターに登録して十日も経っていないどころか、IDすら作りたての実里たちに比べれば、協会職員の信用もあるだろう。
(ウィル、ハンター協会の規約を確認して)
(了解。何を調べましょうか)
(こうした事態になった場合の罰則規定)
(明文化されたものはありませんが、過去の事例では賠償支払いが一般的ですね)
支払えるほどのお金……昨日の稼ぎがあるにはあるけど、払うつもり、いや必要がない件。




