14時
「買い取りをお願いします」
「ドラム缶も借りずに行った人が何を持って来たのですか?」
「あー、昨日は言い忘れたけど、空間収納なら使えるの」
「はあ」
小出さんにヤレヤレという顔をされた。
「どの位あるのでしょうか?」
「昨日持ち込んだあの部屋から溢れる位」
「冗談はほどほどにしてください」
私は真面目に話しているんですけどね。
昨日よりも広い部屋に通されて、「どうぞ」となったので、遠慮なく出した。
もちろん、ちゃんと種類毎に分けたよ。ゴブリン、オーク、それぞれの魔石。
全部出すと居場所がなくなるので三分の一くらい。
「とりあへふ、こんらかんひれす」
「わ、わはりあひた……」
数が数だけにひどい臭いになり、鼻をつまんでの会話。モニカ、どうして中に入ってこないんですか?
とりあえず鼻をつまんでの間抜けな会話はそこまでにして部屋を出る。
「細かい査定は時間がかかりますので、一旦この額を」
「明日来れば大丈夫?」
「え、ええ」
「……明日はダンジョンに行ったりしないわ」
「ほっ……できれば程々でお願いします」
持ち込んだ量はハンター協会の記録を塗り替えたそうだけど、私たちにしてみれば結構手を抜いてたのよねえ。本気で狩ったら二倍以上は固い。
『そんなペースで狩っていたら、そう遠くないうちにダンジョン内のオークが全滅しそうだな』
『オークがいないなら他のモンスターを狩ればいいじゃない』
物騒な会話をしながら宿へ向かい、汗を流すと昼食には既に遅く、夕食にはちょっと早いけど、食事を求めて街へ繰り出す。懐が暖まって食事が大幅に改善されそうだのもあるけど、今日は結構動いたし、なんだかんだでお昼抜きだったこともあって二人とも腹ペコです。そして、いい感じの定食屋を見つけた。
「いらっしゃ……大丈夫かい?うちは結構するけど」
「大丈夫です」
さて、何を頼もうか……うん、即決。それぞれ三人前をあっという間に平らげた。
『うまかった』
『でしょう?』
あっちでもオークの肉は食用として流通していたけど、こちらでもそれは同じで、豚肉のように使われている。ならばそう、トンカツだね。と考えてモニカにトンカツ――なんと単品でも五千円近くする――を勧めてみたら、大いにハマった。
『この黒い……ソースといったか。なんとも言えぬ複雑に絡み合った味が、肉の脂を極限まで高めているぞ!』
『ああ、食べちゃったのね……』
『ん?何か問題があったか?』
『これ』
『これは……ゴマ?』
『そう、これをこうやってすりつぶしてソースをまぶして食べてみて。飛ぶわよ』
『飛ぶってどこへ?まったく大げさ……ふぉぉぉ!』
『ふふ……』
『み、実里!どうして先に教えてくれないんだ?残り一切れしかなかったんだが?』
「すいませーん、トンカツ一つ追加で」
「はいよ。ちょっと待って……って、よく食べるねえ」
『実里、なんて言ってるんだ?』
『気持ちいいくらいによく食べるねって』
『そ、そうか?』
「いいかいモニカさん、トンカツをな、トンカツをいつでも食えるくらいになりな。それが、えら過ぎもしない貧乏過ぎもしない、ちょうどいいくらいなんだ」
『実里?!何を言ってるんだ?!』
『ふふ……』
モニカには伝わらず、周囲にいる人もこんな細かいネタは知らず。そんなふうにして満喫して過ごしたのだった。




