8時
戻ってきて三日目の朝食は近くのファストフードで済ませることにする。百年経ってもチェーン店として残っていて、朝○ックが食べられるとは思わなかった。メニューは大分違うし、そもそもただの高校生が頻繁に朝マ○クすることは無かったから、懐かしさとかはないけどね。
そして食べ終えたモニカは……
『うん、言いたいことはわかるよ』
『すまん』
そう、これから肉体労働するのには明らかに足りないので、さらに追加。
結局モニカは四人前、私は二人前を平らげて街の外へ向かう。
壁の外に出ると、すぐに道を逸れて茂みの奥の少し開けた場所へ。
『空間転移……うん、行ける』
『さすがです』
『では……転移』
私の得意属性「空」の二大巨頭が転移と収納。そして転移魔法は今までに私が行ったことがある場所ならどこにでも行ける。だけど、さすがに異世界は行けず、私の頭の中に思い浮かんだのは一昨日戻ってきた学校からこの横浜リージョンまでの道と、ダンジョンの中。
ふわりとした浮遊感の後、薄暗い洞窟内に出たところで周囲を確認。昨日「このくらいで引き返そう」として引き返した場所だ。
『相変わらずとんでもない魔法だな。ウィルの愛弟子だけのことはある』
『まあね』
通常の転移魔法ではダンジョンの出入りはできないらしいけど、私は「空」属性が得意だからできる、らしい。ここまで「空」属性が得意で極めた人がいなかったので比較対象がないからわからないけど。
何にしても、横浜リージョンからダンジョンまで徒歩で約一時間の道のりを歩く必要がないのは時間的アドバンテージね。チートともいう?知りませんよ。
『さてと……うん、こっちね』
『先行する』
『よろしく』
空間探知で二層へ降りる階段っぽいのを見つけたのでそちらへ向かうルートを検討し、モニカに伝える。およそ人間離れした二人の脚力をもってすればかなり広い階層もあっという間に走破できる。
『やはり……おかしいね』
『うん』
ダンジョンに入ってわずか二時間ほどで三層へ降りる階段前に到着したが、モニカと実里の表情は今ひとつだ。
ここに来るまでの間、一層にいた他のハンターと思しき者は三十名弱。二層には十名ほど。朝早く、それこそ日の出と共に出て来たのであれば人数的にはそんなものかも知れないのでそれはよしとする。
問題は、ここに来るまでに見つけたオークが二匹だけであとはゴブリンばかりということ。
こんなにオークが少ないのに、外に出たオークに昨日遭遇しているのはさすがに不自然だというのがモニカの見解で、実里も同意見。昨日時点では一層の全容もわからなかったから疑問にも思わなかったのだが、二層も見て回った今なら明らかにおかしいとわかる。
『可能性としては、もっと深い層と外を直通で繋いでいる道がある……か』
『そういったダンジョンは異世界にもあって、対応がなかなか面倒だったな』
『どの階層から直通になってるかによっては、大変なことになるよね?』
『そう。ただ、一般的に強い魔物は体が大きいから、小さい穴ならそれほど問題にはならないな。とは言え、オークが出てきている時点で結構マズい』
『ハンター協会がこの事実を把握しているのか、気になるところね』
当初はとりあえず生活できるようになれば良い程度でハンター協会に登録したんだけど、何だか話が大きくなって来ちゃったなと、ちょっとうんざりしていた。おかしい、ほんの一年前――百年ほど前になっちゃったけど――まで進路希望調査票に「第一志望:大学進学」なんて書いて、友達とタピオカでも飲んでいたようなただの高校生だったのに、どこでどうボタンを掛け違えたら、こんなハードモードな人生になるのかしら。
『さて、三層へ向かいましょうか』
『うん』
パシッと両頬を叩いて雑念を払うとモニカに続いて階段を降りていった。タピオカ、今もあるのかしら?




