18時(2)
『私がいた頃、つまり召喚される直前まではダンジョンどころか魔物もいなかったわよ』
『となると……どう考えたら良いのだろうか?』
『どう、って?』
『あっちの世界と同じことが起きるようになった、とは考えられないか?』
『うーん』
偶然の一致で片付けて良いものかどうか。仮に、仮にだけど、他にもファンタジーのない世界があったとしてそちらはどうなのか、考え出したらキリがない。このダンジョンと魔物と魔石の関係性って一般的……いや、一般的って何よ、というほどありふれていることなのかしら?ありふれてるのはラノベの設定だけで充分だわ。
『実はもう少し確認したいこともあるのだが、いいか?』
『うん』
『おそらく実里は知らない情報だと思う』
『私たちが召喚された後のこっちの世界のこと?』
『ただ、昨日聞いた話と合わせると少し引っかかることもあって』
『うん』
『明日の夜になれば人工精霊が完成するんだったよな?』
『え?ええ、まあ』
『そうしたら……えーとなんだっけ……びーしー……』
『BCポート』
『それ、それを使って色々なことが調べられるとか』
『うん』
『そちらも活用しながら、で良いかと』
『なるほど』
何やらモニカが考えようとし、ふと顔を上げた。
『ところで実里、何か武器はないか?やはり棒はちょっと』
『武器かあ』
今日は仕方ないとしても明日以降も木の枝はちょっとね。
『そうね……あ、こんなのあったんだ。これとかどう?』
空間収納から長剣を取り出してモニカに渡す。
『これは……って!こんなの持ってたのか?!』
『持ってたというか、作ったんだけどね。錬金術の練習で』
『錬金術の練習で魔石コーティングとか、普通はできないんだが』
『そう?』
まだモニカと親しくなる前――だいたい召喚されてひと月ほど経った頃――に、拾い集めてたクズ魔石で剣をコーティングするように錬成してみたら思いのほか切れ味の良い剣ができたんだけど、結局使わず死蔵していた逸品だ。
なお、使わなかった理由は、当時の私は普通の女性と同程度の筋力しか無く、この長剣を振り回せなかったから。錬成しようと運ぶときに既にズルズルと引きずっていたのだから先に気づけ、と師匠から言われましたよ。
『これ、ドラゴンすらスパスパ切り裂けそうなんだが?』
『頼もしい限りね』
『他にもこのような武器が?』
『当然でしょ……まあ、なんて言うかそれ、最初の頃に練習で作った剣で、作ったことすら忘れてたのよ』
『なら、いいか。これが折れたらすぐに次をお願いする』
『はいはい』
一応、考えたことをまとめておきたいと言うので帰りがけに買ってきた紙とペンを渡すと、その書き味に驚きながら色々と書いていた。こっそりのぞき込んでみたが、全く読めなかった。完全に崩した走り書きだと私たちに与えられた言語理解スキルでは対応できないみたい。
『あまり根を詰めすぎないでね』
『大丈夫だ。考えをちょっとまとめているだけだ』
『そう……おやすみなさい』
『はい、おやすみなさい』
こうして帰還後二日目は終わったのだった。




