8時(2)
「俺の言う通りに伝えろ。赤のペンを一本右手に、青のペンを二本左手に持て、と」
「わかりました」
『モニカ』
『はい』
『私の通訳が疑われているので協力して。あそこから赤のペンを一本右手に、青のペンを二本左手に持ってください』
『ペン……アレがペンなのか?』
そこか。異世界のペンとは見た目が全然違うよね。百年経ってもこちらのペンの見た目は変わってないんだけど、あっちのペンは羽ペンみたいのだったね。
『うん。こっちの世界のペンだよ』
『まあ、その程度で実里が信用されるのならお安いご用だ。赤が一本、右手?』
『うん。で青が二本左手ね』
『これを……こう、か』
そう言いながらモニカは手を伸ばして指定された通りにペンを手に取った。
「どうやらちゃんと伝わっているようだな」
「信じてもらえたようで何よりです」
満足したらしく支部長が席を立つ。
「小出、手続きしておけ。俺はちょっと色々手配しておく」
「わかりました」
それから小出さんの説明を受けながらハンター協会の入会申込書を記入していく。名前と生年月日、出身地くらいだけどね。うん、異世界に行ったときにはこんな感じのは一切やらなかったのに、帰ってきたらやることになるとは。別にいいけど。
さて、ハンター協会の説明は……省略しよう。テンプレ通りだし。ただ、私たちは何とも素性が怪しいので、特例措置を採るとだけ言われた。
「ではこちらへ」
促されて会議室を出ると受付の前に。支部長と、私たちがここに入るのにダシに使った五人がいた。
「ホレ、お前さんたちのIDだ」
「へ?」
支部長がポイッと投げてきたのを慌てて受け取る。
ID?簡単に発行できないようなことを聞いてた気がするけど。
「さて、後は任せたぞ」
「わかりました」
五人のリーダーっぽい人の返事に言いたいことは全部言ったとばかりに、支部長はドカドカと足音を鳴らしながら奥へ引っ込んでいった。
「さて、十倉さんにモニカさん」
「はい」
『?』
「君たちの実力を確かめるよう言われている」
おお!コレはまさかの展開?!
このあとの流れ的には、ここに併設されている訓練場みたいなところで五人のうちの誰かと模擬戦。私たちが圧勝して「く、コイツら強い」「支部始まって以来の、最強の新人が誕生しちまったぜ!」とかのテンプレ的な流れ!
「では、どちらでもいいからコレ、背負って」
「はい?」
そこには背負うための紐がくくりつけられていた汚れて変な臭いのするドラム缶がありました。まさかこれを背負う……体力テストじゃないよね?
「えーと?」
「実力を確かめるには実戦が一番。ってことでハンターの仕事の流れを教えながら、お前さんたちの実力を見せてもらうわ」
「はあ」
「採取したものを入れるから、どちらかがコレ背負って」
背負う?
『実里、どうしましたか?』
『えーとね、とりあえず今から実戦だって』
『実戦……いいでしょう、望むところです』
グッと拳を握り不敵な笑みを浮かべるモニカ。
「お、そっちのモニカちゃんはやる気っぽいね」
「そうですね。では、これは私が背負います」
「大丈夫?重いわよ?」
「平気です」
あなたの目の前にいるひ弱そうな少女はこう見えてトロール二匹を同時にジャイアントスイングして放り投げるような女ですよ?




