19時(3)
「手術ねえ……お金ないんだよね」
「それだけ強いなら、ハンターになれば稼げそうだが」
「ハンター?」
「モンスターを狩る奴だよ」
モンスターを狩るハンター……リアルなモン○ン?笑えないんですけど?
「ああ、でもハンターって、確かIDないと登録できないんだよな……これ、やるよ」
「え?」
「BCポートの手術はそこらの外科で二、三万で受けられる。でもお前さんたちの場合、手術してもそのあとのコレ、通信用のサイバーデッキは用意できないだろ?」
「貴重品なの?」
「違うよ。高えんだよ。どうせ金なんか持ってないだろ?」
「いくらくらい?」
「最新モデルが中古で四十万くらい。三世代前のモデルでも二十万くらいするぞ」
それ以上前のモデルはないらしい。通信規格が違うとか色々言ってたけど、よくわからなかったので聞き流した。糸井もよくわかっていないみたいだったし。多分スマホの4Gとか5Gとかそんな感じのだろう。
あと、こういった携帯できるような無線タイプではなく、有線の通信ケーブルに繋ぐタイプはグッと安くなるらしい。ケーブルの届く範囲しか動けなくなるけど、ワンルームくらいだと困らないんだってさ。アン○リカルケーブルかな?暴走したりしないよね?
「じゃあ、有り難くもらっておくわ」
「それとIDだ」
糸井がテーブルに投げ出したのは、鈍い光を放つ数枚の金属プレートだった。
「全部もってっていい。一応金も入ってるけど多くて一万ちょっとだな」
「お金?」
「そこ、隅っこ触ってみ」
「こう……おお」
ホログラムが浮かび上がり、『田沢結衣 残高六千七百円』と表示された。すごい技術!だけど私がさっきまで過ごしてた異世界では当たり前だった魔法の範疇なのでちょっと感動は薄い。
「俺たちの手持ちの中で背格好の近そうなのを全部やる。他人のだってバレないようにうまく使え」
「正式なのは作れないの?」
「生まれたときの届け出だからな……紛失したってのもなかなか通らない」
「なるほど……元の持ち主は?」
「聞かない方が、お互いのためだぜ」
「わかった」
これ以上の面倒事は勘弁してくれとばかりに、シッシッと手を振る糸井に軽く会釈だけして外に出る。
『よかったの?』
『何が?』
『何やら犯罪に手を染めているような連中ではないか?衛兵に突き出すべきだと思うが』
モニカは自ら志願して騎士になる程度には正義感が強いので、ああいった連中を野放しにしておきたくないのね、きっと。
『サルヴァートにも盗賊ギルドってあったでしょう?』
『え、うん……』
『アレはアレでスラム街の秩序維持に一役買っていた。違う?』
『あの男はそういう輩ということか?』
『多分ね』
『フム……』
『それに、そもそもの話として、私たちがここにいること自体、違法っぽいし』
『確かに、正規の門を通らず地下から侵入した時点で、今さらだったか。うん、わかった』
ちなみに王都にいくつかある盗賊ギルドの内三つは彼女が休暇を利用して場所を突き止め次第潰していたため、色々と問題になっていたらしい。ああいう連中でしか手に入れられないような情報の入手が難しくなったり、弱小組織が幅をきかせるようになったりとかで。でも、やってることは正しいので彼女を責められず、騎士団長は胃の痛い日々が続いていたとかなんとか。今となっては関係ない話ね。




