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#48「新たな大陸への旅路、奇妙な三人同室」

ノアとの騒動の後、俺たちは宿へ戻った。


道中チャピとノアが歩きながら言い争いを始める。


「キョーくんに変なことするな!」

「変なこととは何ですか!私はキョウマ様の奴隷です、当然の権利です!!」


互いに一歩も引かず、火花だけが夜道に散っていく。

結局、宿に辿り着くころには、疲労が倍増していた。


翌日。


俺たちは魔道飛行船の発着場へ、向かっていた。

風の大陸に渡って、精霊王から光の女神の使途の話を聞くためだ。


その道中、髪をツインテールに纏め、深い青のワンピースに身を包んだノアが、チャピと口論を繰り広げていた。


「キョウマ様に付き従うのは私の務めです!」

「勝手に務めとか決めるな!」


互いに言葉をぶつけ合い、横で聞いているだけで今日も俺の疲労はじわじわ増していく。


そんなこんなで、ようやく目的地に辿り着いた。

石造りの巨大なターミナルは人でごった返し、荷物を積む馬車や魔道具を抱えた商人が行き交っている。

その喧騒を抜け、俺は視線を正面に向け――


ついに、それを真正面から目にした。


「……でっっか!!!」


視界いっぱいに広がった巨体に、思わず声が裏返った。

高さは城壁を優に超え、全長は現世で見た豪華客船と同じか、それ以上だ。

帆とか羽とか余計なファンタジー装飾が付いてるぶん、迫力はこっちのほうが段違いだろう。


「いや、これもう…飛行機どころか、空に浮かぶビルだぞ!」


しかも客層を見渡せば、どこもかしこも煌びやかな服を着た貴族風の連中ばかり。

女性は宝石をじゃらつかせ、男は燕尾服みたいな上着を誇らしげに翻している。


「なあ……チャピ、これって絶対高いやつだよな?大丈夫か?俺、財布の中身は銅貨でカラカラだぞ……」

「心配しないで、キョーくん」


チャピは俺の隣で余裕の笑みを浮かべ――その直後、ノアをキッと睨みつけた。


「あんたの分のチケットはないからね!」

「ふふ……ご心配には及びません」


ノアはいつもの薄ら笑いを浮かべ、ワンピースの裾を揺らしながら、一枚の紙をこれ見よがしにひらひらさせる。


「私はもう、自分で手に入れてありますから」

「なっ……!?」


チャピの顔から血の気が引き、次の瞬間には悔しさに眉を吊り上げる。

その様子を見たノアは、まるで勝ち誇ったかのように自信満々の眼差しをチャピへ向けた。

その煽るような笑顔が、どうしても生意気なメスガキにしか見えなかった。


しばらくターミナルの待機場所で乗船時間を待っていると、群衆の向こうから分厚いコートを羽織った大柄な男が現れた。


――バルドだ。


「……来てくれたのか」

「ああ…この街を発つ前にお前には告げておこうと思ってな」


わずかなやり取りの後、バルドは厳しい眼差しを向けてきた。


「ロガン……やはり黒幕で間違いなかった」


低く告げられた言葉に、胸の奥がひやりとした。


「この一年気がつかなかったのは完全に俺の落ち度だ……すまなかったな」


バルドは続けて、例の祭壇は自分の手で引き続き監視すること、そしてリーナたち母娘のことも見守っていくと約束してくれた。


そうこうしていると、ターミナルに乗船開始を告げる鐘の音が響いた。

ざわめきが大きくなり、客たちが一斉に動き出す。


「時間だ…行け」


バルドは顎で飛行船を示した。


「いいか、キョウマ。今後ルーメンポートに来たなら、必ず俺のところへ顔を出せ」


そう告げると、バルドは背を向け、人波に紛れて消えていった。


その後、乗船のために長い列へと並ぶ。

順番が回ってきてチケットを見せると、受付の係員が恭しく頭を下げた。


「ロイヤルスイートですね。船内の最上階にございます」

「ろ、ロイヤル……スイート!?」


耳慣れない豪華な響きに、思わず声が裏返る。

横でチャピが胸を張り、得意げな笑みを浮かべていた。

その一方で、ノアは意味ありげに笑いながら、当然のように後ろをついてくる。


案内板を頼りに船内を歩き、やがて一番上の階に辿り着く。

重厚な扉の前でチャピが振り返り、頬を赤く染めながら言った。


「こ、ここよ……」

「…おう…」


とりあえず入ろうとすると――なぜかチャピまで一緒に入ってきた。


「なんで入ってくるんだよ!」

「し、しかたないでしょ!!」


チャピは真っ赤な顔で声を上げる。


「だ、だって……部屋が大きすぎて……一人だと寂しいかなって思って……」

「はあ!?……ほ、他の部屋はないのか?」


俺が聞くと、チャピは視線を逸らしながら小さく答えた。


「……ここしか取ってないの」

「……」


結局、俺とチャピは部屋に入るしかなかった。

そこへ当然のように、ノアまでついてきた。


「ちょ、ちょっと!なんであんたが入って来るのよ!自分の部屋に行きなさい!!」


チャピが慌てて叫ぶ。

しかしノアは薄ら笑いを浮かべて胸を張った。


「私とキョウマ様の仲を裂くことは出来ません!」

「ここは私が予約した部屋なのよ!さっさと出て行きなさい!」

「そんなことを言って……キョウマ様を襲う気なんでしょう!ああ……なんてふしだらな!」

「お前が言うな!」


再び二人のやいやいした言い争いが始まる。

俺は頭を抱え、とうとう声を張り上げた。


「ああ!!もう三人一緒でいいだろ!喧嘩するな!」

「ええ……そんな……」


チャピは愕然とした表情を浮かべ、どこか残念そうに視線を伏せる。


一方でノアは、相変わらず生意気な笑みを浮かべたまま、スカートの裾をつまみ軽く一礼した。


「キョウマ様がそうおっしゃるなら」


こうして、奇妙な三人同室での航海が幕を開けた。

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