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日本三貴神会議

 真っ白の世界にポツンと建てられた木造の社があった。そこには、一つの大きな部屋しか無く、そこには二人、いや、二柱の男神がいた。


「・・・・・。」


「・・・・・・。」


 特に仲がいいわけではない二人は何も喋らずただ黙って向かい合う様に腰を下ろしていた。すると、向かって左側に座っていた男神が突然腰を上げ扉に走っていく。そして扉の数メートル手前まで来た時にその扉は開かれた。


「姉上~!」


 まるで幼稚園児が迎えに来た母親に飛びつく様な感じで社に入ってきた一柱の女神様へと抱きつこうとする。


「ふんっ!」


「ぐふっ!」


 女神様は、その男神に右足回し蹴りを顔面に食らわせた。吹っ飛んだ男神はそのまま社の壁へとぶつかり、頭からめりこむ。


「いちいち私に抱きつこうとするな。気持ち悪いわ愚弟。海に沈めるぞ。」


 女神様は怒りを隠さず、冷たい眼差しを向ける。


「そりゃ~ないぜ、姉上。久々に会えたんだから、これくらい許してくれよ。まあ、姉上なら蹴られても気持ちいいがな!」


 本気で鳥肌が立った女神様は不快な表情を見せ、一歩後ずさった。


「次、勝手に会いに来たら、今度こそ完全武装で貴様は殺す」


 冗談の欠片もない殺気と嫌気が辺り一帯に充満する。この男神が本当に勝手に会いに来たら、この女神様は本気で殺すだろう。


「天照、こんな事をする為に私を呼んだんですか?あなたに押し付けられた仕事がまだ残っているので早急に帰りたいのですが。帰っていいですか?」


 今まで黙っていたもう一人の男神が座りながら、めんどくさそうに彼らの会話に割り込んできた。


「ああ、すまないな月夜見(ツクヨミ)。今から始める。須佐之男(スサノオ)、貴様はそこにいろ。決してこちら側にはくるな」


 早々に話を切り上げたかった女神様、天照大御神様は扉から遠い真ん中の一番奥に座る。


「それではこれより、緊急的な三貴神(さんきしん)会議を行う。」


 100年に一度あるかどうかの、会議が始まった。








「それで、今回はどの様なことがあったんですか?突然あなたの仕事を押し付けられた(・・・・・・・)時は何事かと思いましたよ。」


 押し付けらたという部分を強調して言う月夜見様の言葉には明らかに挑発的な悪意があったが、天照大御神様はあえてそれを無視した。今ここでそんな事に腹を立てている暇はないからだ。


「先日、私は我が国民を攫った世界に赴き、その世界を滅ぼしてきた。」


 二柱の神はその言葉に驚きの表情を見せた。いつもは神界に引きこもりながら、因果律の調整を行っていた天照大御神様がその様な大胆な事をしてきたのだ。その事をよく知っている二柱からしたら、耳を疑う様なことだ。


「その経緯については省かしてもらう。今回の問題はそこではない。私はその世界にて、一人の少女と数人の魂を回収した。全員、我が国の民だ。少女の方はその世界で癒しの女神にされていた。」


 二柱の神は先程までとは違い、真剣な眼差しでその話を聞いていた。天照大御神様が最後に言った、女神にされたという言葉がただならぬことだったからだ。


「それではその少女は長らくの間、人間であったにも関わらず、死ぬこともなくその世界に閉じ込められていたという事ですか?」


 月夜見様はいつになく、真剣な表情をしていた。それほど、今回の事は重大な事なのだ。

 本来、異世界に渡った人間はその世界で死んだとしても魂だけは必ずこちらの世界に帰ってくるのだ。現に、今も時々異世界から魂が戻ってくることがある。しかし最近、それにズレが生じていることが分かっていた。明らかに、消えた人数と帰ってきた人数が合わないのだ。それは、死後の世界の均衡を崩す事になり、現世の因果律にも影響を与える要因となりうる。故に、魂返還は例えどの世界に渡ろうと強制的に行われる様にしている。それを狂わすなど、明らかに神が介入している他なかった。しかし、今まで証拠がつかめなかった為、確実に踏み込む事が出来なかったのだ。


「ああそうだ。その世界の神々は信仰を集める為にその少女を利用したのだ。」


「それは・・・なんともまあ」


 あまりの事に、月夜見様は開いた口が閉じる事が出来なかった。信仰を得る為に人を神にするなど、あまりにも愚かな事すぎるからだ。それは、既に神としてのプライドを捨てていると言わざるおえない。


「うん?ちょっと待ってくれ姉上。さっき、一人の少女と「数人の魂」って言ったよな、その魂はどうなっていたんだ?」


 須佐之男様の言葉に、天照大御神様はすこし、悲しそうな顔をしながら答えた。


「・・・そいつらも信仰を集める為に利用されていた。神殿にて約1000年間閉じ込められていた、魂のままでな」


「「っ!?」」


 もう許容範囲を超える様な事だった。人の魂を1000年も閉じ込めるなど邪神がする事だ。さらに、魂の姿のままというのが一番衝撃的だった。人間の魂は、時間が経つことにすり減っていく。それを防ぐ為に彼らを死後の世界に送り、バランスをとるのだ。魂が磨り減るというのは肉体を持っている時は気づかない。しかし、魂の姿となれば話は別だ。肉体がない為に痛みはないが、その分精神がやられる。時間が経つことに記憶が薄れ、自分という存在を失う。しかも、「叫び」などの防衛行為をできない。それを1000年ともなると、その辛さは計り知れない。

 二柱の神は拳を強く握った。自分たちの愛する民がその様な暴挙に会い、苦しまされていたというのが怒りを抱かせ、そして我慢の限界などゆうに超えていた。日本にいるどんな神であろうと、こんな話を聞けば怒りを覚える事だろう。


「それで、姉上。俺らにどうして欲しいんだ?異世界に言った民の魂の回収し、その世界を滅せばいいのか?」


 怒りで顔を赤く燃え上がらせながら言う須佐之男様の姿は、今にも飛び出さん勢いだった。


「今回の事に関しては私も協力は惜しみません。」


 それは、月夜見様も同じだったらしく、心の内に静かに煉獄の炎を燃やしていた。


「ああ勿論。と言いたいところだが、お前らには今まで通り私の仕事をしてもらう。」


 天照大御神様の言葉に二柱の神様はなぜ!と声を上げるが、それに冷静に答えた。


「幾ら、自分の国の民が不当の扱いを受けているからと言って、証拠もなしにその様な事をすれば責められるのは我らの方だ。あくまでも、こちらはルールを破らずに、正当な手段で行く。万が一にも、この事が現世に影響を与える事は避けたい。それに、他の世界の神を裁けるのは被害側の主神だけだ。だから、お前らには私が留守の間、外敵から身を守って欲しい。これはお前らにしか頼めない事だ。」


 静かに、諭す様に言う言葉に二柱の神は冷静さを取り戻した。最悪でも現世に被害を出さない。この事を失念していてはそのうち身を滅ぼす事になる。神は信仰、そして世界が無ければ存在する事が出来ないのだ。

二柱の神様は天照大神様の前に跪き、答えた。


「「御意に」」


 しかし、この時二柱の神は知らなかった。この事に天照大御神様の個人的な恨みも入っている事にーーーー

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