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日本の主神

 異世界の女神が黄泉の国に堕ち、日本の主神は疲れを吐き出す様に一呼吸ついた。現在、日本人を誘拐している世界の神は一柱ではない。まだまだ、いくつも存在するのだ。今回は、人間に混ざりながら少し偵察をする様な感覚だったのだが、リアリー達の様子があまりにも予想外過ぎて、つい手を出してしまった。

 しかし、今回の事で一番の収穫は和泉梨々香だった。今まで、日本の主神は異世界に行った者は皆幸せに暮らしていると思っていた。世界を救ってもらった人間の嫌がる事をその世界の神がやるなど考えもしなかった。だが、実際は違った。日本の民を酷使し、あまつさえその世界を救った英雄の魂さえ弔わずに、神殿に幽閉するなど誰が考え付くだろうか。


「はぁ~。この様子だと、きちんと約束を果たした他の世界にも行った方がいいかもしれないな。」


 いくら、異世界に転生したからといって、自国の民が不当な扱いを受けているなど許されるものではない


「あの」


 次はどの世界に行くべきか悩んでいたところ、和泉梨々香が不安そうな顔をしながらこちらに話しかけてきた。


「彼らの魂はどの因果律空間時間軸に組み込んでいいのでしょうか?」


「ああ、そうだった。任せたっきりでその事伝えるのを忘れていた。」


 彼らを日本に戻すと言っても、彼らはこの世界の時間軸かは外れてしまっている。現在の時間の人間ではない為、このまま日本に返すと因果律に歪みが生じるのだ。


「そうだ!ちょっと待ってくれ。確か、最近また連れて行かれた奴らがいたと聞いている。そいつらの所の処理をまだ済ましていないはずだ。そこに割り込ませてくれ。その方が因果律に影響は出にくいし、直ぐに帰れる。分かっているとは思うが、いくらがんばっても元の時間軸には戻れない。だから、環境が変わっている所にしか無理だ。今はこれが一番の選択だ。大丈夫か?」


 日本の主神がそう問うと、彼女は笑顔で答えた。


「はい。大丈夫です。ありがとうございます。」


「・・・・・。」


 そんな彼女の笑顔を見て、日本の主神は少し複雑な気分になった。


「本当にいいのか?かつての親友や家族にはもう会えないのだぞ」


 堪らずそう聞くと、和泉梨々香は少し困った様な顔を浮かべながら、笑顔を絶やさずに答えた。


「会いたいか、会いたくないかと言われればもちろん会いたいです。でも、神をやっていた経験上、それは無理な事だと分かっています。もしかしたら、その事を悲しいと思う日がくるかもしれません。でも、それ以上に私は彼らに生きて欲しいんです。奪われてしまった時間を取り戻して、また一緒に笑いたいんです。そして、精一杯幸せになってほしいんです。私達は家族や友人にもう会えない覚悟はできていました。でも、その分、私達は切っても切れない太い糸で結ばれているんです。だから、私達は大丈夫です。皆んないれば、全然悲しくありませんから。色々ありがとうございました。

天照大御神様。」


 そう言い、礼節のつくされた綺麗なお辞儀をした。

 一途な思いを恥ずかしそうに吐露する彼女に、天照大御神様は安心した表情を浮かべると彼女の頭を撫でた。


「そうか、だったら私もそんなお前達を守らねばな。」


 彼らの体が太陽の色の光に包まれた。とても、心地よくポカポカする感じだった。


「これは私がお前達へのご苦労様の餞別だ。お前達にさらに良き縁が結ばれる様にここから見守っとくぞ。」


 そして、いたずらっ子の笑みを浮かべ、口を耳元によせる。


「だが、夜這いは今の私の国では法律で禁止されてるから抑えろよ」


「え!?」


 和泉梨々香は此処一番の驚きの声を上げた。


「な、な、な、なななななぜそれを!!」


 ニヒッと笑うと、天照大御神様はその場から消えた。


 最後に残された彼女はリンゴの様な真っ赤な頬を熟れさせがら呟いた。


「私、まだ処女だもん!」


 それは誰にも聞かれる事無く、とてつもなく白い世界に吸収され、溶けていった。

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