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CDを受け取る話

「この前の海、楽しかったねー!!」

 夏休み最終日。私と田宮くんは、秋葉原に来ていた。

 アニメイトだと申し訳程度にしか置いていない東方グッズに富んでいるお店があるらしい。

 待ち合わせ場所に行くと、田宮くんはもう来ていた。私も早めに来たつもりだったのだけど。

「そうだな。ちょっと人が多かったが、悪くなかった」

 田宮くんも真面目くさった表情ながらも、海の思い出を称えた。

 この前の海とは、図書委員会五班の一年生メンバー(コウミ、田宮、ひさき、松美、川辺、増谷)で海に出かけたことだ。

 青春したなあ……!

「秋葉原、久しぶりに来たけれど、人が多いねー」

「まあ、土曜日だしな」

 田宮くんはこの人の多さに何でもないようにスタスタ進んでいく。

 二人きりで出かけているのに、特に意識している様子もなかった。

 その後、私は東方のシャープペンシルを買った。

 田宮くんは「金欠なんだ……」と言って何も買わなかった。

「あ、そうそう」

 帰りの電車で、田宮くんはリュックからスーパーの袋に包まれた物体を取り出す。

「この前貸すって言っていたCD。やるよ」

「あ、ありがと」

 私は恐る恐る受け取った。そして尋ねる。

「いつ返せばいい?」

「いつでもいいよ」

 田宮くんの答えに、私はますます困り果てた。

「でも、一年後はダメでしょう?」

「じゃあ、冬休みまでに」

 田宮くんの苦笑いに私は俯く。

「今日は楽しかった。……気を付けて」

 そう言って田宮くんは後ろの自動ドアを指差した。

「もう、飯田橋に着いたよ」

「あ、うん。あのっ、また明日ね!」

 慌てて電車を降りながら叫ぶと、田宮くんは照れたように笑った。

 そして、電車が出発してしまう。ちょっと寂しかった。

***

 さて。

 お風呂も入った。宿題もした。就寝までの数時間は自由に過ごしてもよい。

「し、CD聴くかぁ……」

 自室のベッドの上に立ち、にやつきながら呟いてみる。

 私は借りたのだ。CDを。田宮くんに。

 ひゃっほーい!

 にやにやにやにやににやにや! にやけすぎてににやにや!

 このCDは田宮くんの指紋がべったりついていて、田宮くんが普段、着替えたり寝たり勉強したり夜食食べたりしている部屋に置かれていた代物である。

 無意識のうちにCDに顔を近づける。

「はっ! 何やっているんだ! 私!!」

 舐めちゃまずい。ちゅーはありか。匂い嗅ぐくらいならいいよね?

 いやいやいや! 駄目に決まっているでしょう!!

 いやでも!

 でもじゃない!

 心の中の葛藤。

 CDを持って悩んでいると、手が滑ってCDを落としてしまった。

 まずい!

 私はCDが床に直撃する前に、ベッドの上から床に飛び込んでCDをキャッチした。

 ゴッ!

 頭が床に直撃する音。その後の記憶はないけど、気がついたら朝だった。

***

「昨日のCD聴いた?」

 朝、登校すると、田宮くんがわくわくと訊いてくる。

 私はしばし迷った後に答えた。

「聴こうとしたけど、気絶したから聴いてない」

 田宮くんはちょっと固まった後、力なく笑ったのだった。

「何があった……」

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