第四十八話:載らない行
月次報告の掲示板は、いつも通りの朝だった。
数字が並ぶ。
遅延率。事故率。補填費用。
制度参加区間は安定。
例外対応枠も機能している。
拍手は小さい。
整った数字には、派手さがない。
若者はいつもの位置で立ち止まる。
南側第三の名前は、掲示板にない。
参加区間ではない。
報告義務もない。
ただ、横に小さな注記が増えている。
緊急時協力区間:南側第三
直近三件、停止ゼロ
若者が目を細める。
「協力、ですか」
管理局の書記が言う。
「制度外ですが、参考記録として」
参考。
評価ではない。
加点もない。
それでも、載った。
帳簿を開く。
――南側第三
余白:三割
緊急対応:三件
停止:なし
事故:なし
数字は前と変わらない。
変わったのは、見え方だ。
午後、代表が倉庫に来る。
「助かっている」
短い言葉。
「例外枠だけでは足りない時がある」
若者はうなずく。
「外があるから、枠が守れます」
代表は否定しない。
掲示板の前で、北側の管理人が言う。
「協力区間、か」
東側が続く。
「制度外でも、街道の一部だ」
若者は火を見る。
弱い。
揺れている。
だが、消えない。
夕刻、管理局から文書が届く。
街道保安維持案(改訂案)
第七条:制度参加外区間との連携を妨げない
条文は短い。
評価項目には入らない。
加点もない。
ただ、削除されなかった。
若者が言う。
「評価は上がりませんね」
「そうだ」
「でも、消えませんね」
うなずく。
帳簿を閉じる。
――公式評価:変動なし
――記録:残存
――街道:継続
夜。
旗が静かに振られる。
制度参加区間が先に通る。
南側第三は後ろから出る。
遅い。
それでも、
止まらない。
若者がぽつりと言う。
「載らない行も、ありますね」
掲示板の隅にある小さな注記。
大きくはない。
だが、消えていない。
火は揺れている。
整いすぎない。
それでいい。




